Amazon

2014年10月2日木曜日

早坂茂三の『オヤジの遺言』に、田中角栄の魅力を語るエピソードが紹介されている。
「寸志の渡し方」で、一番難しいのは旅先で先方が用意した車の運転手だという。
早坂が座席から渡せば済むと答えると、角栄は「駄目だ。俺やSPが見ている。心付けは誰もわからんところで渡すんだ。カネが生きる」と叱り、こう答えた。
「目的地に着けば、SPが下り、運転手が俺のドアを開ける。最後に君が下りる。運転手はドアの把手(とって)を握ったままだ。車の降り際に彼の手にしのばせろ。そこは死角だ。出迎えの連中は俺が目当てだ。誰も君を見ていない。わかったね。」
役人に渡す時でも、相手が断ろうとすると、
「君にやるんじゃないんだ。君が部下を慰労する時にな」
と言って、相手が自己弁明できるようにしたのである。

『オヤジの遺言』