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2015年1月2日金曜日

日産自動車の2013年3月期の実効税負担率は20.45%だった。
日産自動車の有価証券報告書には、「法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との間に重要な差異があるときの、当該差異の原因となった主要な項目別の内訳」という記載がある。
要するに、どのような手段でどれほど法人税納付額をへらしているのかが、株主に占められているのである。
例えば、2013年3月期の決算資料によると、「在外連結子会社の税率差 ▲5.0%」とあるが、海外子会社の現地国の税率と日本の税率さが、平均5%あったということである。
そこから逆算すると、子会社を日本に置くよりも、海外に置くことで法人税が258億円安くなった事が分かる。
また、同決算資料には「税額控除 ▲3.9%」とあり、「特別試験研究費」の税額控除などの政策減税の恩恵があったと推測される。
「特別試験研究費」の税額控除は、それまで法人税額の20%を上限として認められてきたが、2013年度の税制改正によって上限が30%に引き上げられ、更に優遇されている。
大手総合商社を中心に海外子会社を多く保有する大企業の実効税負担率が低い。
その理由として、2009年に設けられた「海外子会社配当益金不算入制度」の恩恵が大きい。
この制度は、一定の要件を満たす海外子会社であれば、受取配当額の一律95%を益金に算入しない、というものである。
この制度は、これまで海外子会社に溜め込まれた収益を、日本に還流させることを目的に設けられた。
企業の海外移転に歯止めがかからない状況で、財務省も妥協せざるを得なかった。
この制度の導入により、海外子会社の収益を日本本社に配当として還流させても、5%しか課税対象となる益金には加算されない。
しかも、この5%でさえ、必要経費等として損金(海外子会社の管理等の経費)に算入されるので、実質的にはほぼ無課税となっている。
この制度は2011年4月から開始されたが、この制度による無税配当総額は2010~2011年度の2年間で、7兆8801億円に達しており、そのうち資本金10億円以上の企業が98.4%を占めている。
メガバンク各行は、近年は業績が好調だったにもかかわらず、10年以上に渡って法人税を減免されてきた。
1990年代後半の不良債権処理が余りにも巨額で、多額の繰越欠損金を抱えていたからである。
メガバンク各行が法人税納税を再開したのは、三菱東京UFJ銀行が2011年3月期から、みずほ銀行や三井住友銀行は2013年3月期になってからだった。
税引前利益が1期当り数千億円以上あるのに、実効税負担率があまりにも低い水準となっていた。

〇5期(2008年3月期~2012年3月期)通算の実効税負担率
                  税引前利益    支払法人税額
みずほFG        0.02%   1兆2218億円    2億2500万円
みずほ銀行        0.52%      4693億円     24億3100万円
三井住友FG      1.33%       6046億円     80億2300万円
三菱東京FG      1.39%   1兆4186億円    197億3500万円
三井住友銀行         7.57%   2兆2708億円     1718億6500万円
みずほコーポレート    10.49%      7073億円     742億1100万円
三菱東京UFJ        12.68%   2兆3659億円     2999億8100万円
知性とは、既にある価値観に向かって、「本当にそうなの?」と問いかける力である。
By 落合恵子