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2015年4月26日日曜日

2014年11月の税制調査会提出資料によると、永住権を獲得した邦人数は、2013年10月1日時点で、シンガポール1852人、香港2151人、スイス4719人となっている。
2012年の申告所得税標本調査(国税庁)によると、所得金額が5000万円超1億円までの納税者の申告所得税負担割合(国税のみ)は、28.4%であるのに対して、所得金額1兆円超の納税者については、この負担割合が23.8%と、むしろ低くなっている。
国際機関等が1977年から2008年にかけて公表した11の報告書や論文において、タックス・ヘイブンと認定された国・地域は以下の7つとなっている。
バハマ(カリブ海の独立国、キューバの北方、人口34万人)
バミューダ諸島(大西洋にあるイギリスの海外領土、人口7万人)
ケイマン諸島(カリブ海あるイギリスの海外領土、人口5万人)
ガンジー(イギリス海峡にあるイギリス王室属領、人口7万人)
ジャージー(イギリス海峡にあるイギリス王室属領、人口10万人)
マルタ(地中海の独立国、シチリア島の南方、人口40万人)
バナマ(中米の独立国、人口390万人)
この他、10の報告書・論文で認定されたのは、バルバドス、イギリス領ヴァージン諸島、キブロス、マン島、リヒテンシュタイン、オランダ領アンティル諸島、バヌアツの7つの小規模な国・地域である。
しかし、オフショア金融センターと呼ばれるスイス、ルクセンブルク、アイルランド、香港、シンガポールの方が、タックス・ヘイブンとしてのより大きな役割を果たしている。
OECDの「有害な租税競争」に関する報告書では、ある国や地域がタックス・ヘイブンであると認定される乗んとして、4点を挙げている。
・無税あるいは名目的な課税しか行われていないこと
・軽課税国の恩恵を受けている納税者についての実効性のある情報交換の欠如
・課税制度や税務執行面での透明性の欠如
・実質的な経済活動が行われていないこと
多国籍企業のグローバル会計操作は、各国の税収に大きな損害を与えるだけではなく、マクロ経済指標の意味を失わせ、金融のコントロールにも大きな悪影響を与えることになる。
例えばアイルランドの国は会計は、多国籍企業の会計操作によって、恐ろしく粉飾されている。
法人税率が12.5%にすぎないアイルランドで利益が生じるように、多国籍企業は、アイルランドの系列会社がわざと安値で輸入し、高値で輸出するように操作している。
そのため、国際収支統計でアイルランドの貿易黒字は、GDP比の25%にも達している。
この傍記黒字は、国の競争優位とは何の関係もない。
しかもアイルランド国民はそのようにして蓄積される余剰利益から何の所得も得ない。
余剰利益は全て海外の系列会社に還流されるので、アイルランドの国民純生産(NNP)はGDPより20%も低い。
多国籍企業のグローバル会計操作は極めて単純な方法で、その殆どが二大テクニックになっている。
1つ目は、グループ内で貸付を行うテクニックで、法人税が高い国で活動する系列会社に借金を作る方法である。
利益に殆ど課税されないルクセンブルクやバーミューダ諸島で利益がでるように刷る為に、本来木勢される場所での利益を減らすのである。
しかし、この単純な利益操作は見破るのが簡単であり、あまり通用しなくなっている。
2つ目は、移転価格操作で、最も頻繁に利用されている。
多国籍企業は、自分達の系列会社間でお互いの製品を売買する際に、その価格を細工している。
例えば、バミューダ諸島の系列会社は、フランスの系列会社にサービスを法外な値段で提供し、このテクニックを巧妙に組み合わせている。
ちなみに、アメリカ企業は、利益の半分をオランダ、ルクセンブルク、アイルランド、バミューダ諸島、スイス、シンガポールの6カ国で計上している。
アメリカの場合、移転価格操作により、少なくとも法人税収入は3割減っているという。
この移転価格操作は、製品以外に、特許、ロゴ、商標、アルゴリズムなどの価格操作が対象となっており、資産の価値が懸賞しにくくなっている。
だからこそ、課税逃れの大物は、グーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフトなどのニューエコノミー企業なのである。
無形資産が重要性を強めるにつれて、法人税は消えゆく運命にある。
オフショアの資産額と銀行の秘密業務から得られる利益がGDPに占める割合
スイス       1兆8000億ユーロ  3%
香港          7500億ユーロ  3%
シンガポール      7500億ユーロ  4%
ルクセンブルク     5000億ユーロ  9%
バハマとケイマン諸島  5000億ユーロ  40%
スイスのGDPに占める金融業が占める割合は11%。
しかし、吾人資産管理業務は4%にしかすぎず、それ以外は保険業務や、融資および自己資金による銀行業務である。
従って、銀行の秘密業務はGDPの3%の年間150億ユーロ程度であり、銀行が管理する税務申告されていない資産全体の1%を占める程度しかない。
スイスは金融の不透明性で国の経済が成り立っている訳ではなく、銀行の秘密業務が無くなっても十分経済は成り立つ。
銀行の秘密業務による世界的な損害額(2013年)
タックス・ヘイブンで保管されている世界の金融資産 5兆8000億ユーロ
そのうち税務申告された金融資産 1兆1000億ユーロ
そのうち税務申告されていない金融資産 4兆7000億ユーロ
銀行の秘密業務によって失われた年間税収 1300億ユーロ
→そのうち所得税(利子と配当)の脱税 800億ユーロ
→そのうち相続税の脱税 450億ユーロ
→そのうち財産税の脱税 50億ユーロ
ちなみに、ここで推計されている税収減には、多国籍企業のグローバル節税による税収減は考慮されていない。
2013年初頭、世界における100ドル紙幣の残高は8620億ドル、500ユーロ紙幣は2900億ユーロであり、双方とも金融危機が始まってから急増した。
しかし、これらの高額紙幣が何処にあるのかを正確に知るのは困難になっている。
アメリカの推算によると100ドル紙幣の7割はアメリカ国外にあるという。
しかし、100ドル紙幣が大量に流通しているは、ヴァージン諸島よりもアルゼンチンやロシアであることは分かっている。
同様に500ユーロ紙幣の大半はスペインにある。
従って、タックス・ヘイブンにある流動性が、全体で3000億ユーロを超えることはない。
ルクセンブルク籍の投資ファンドの時価評価額は、2013年初で2兆2000億ユーロだった。
これに対し、世界中の国の資産に計上されているルクセンブルク籍の投資ファンドの総額は、1兆2000億ユーロしかなかった。
つまり1兆億ユーロの資産が、持ち主不明なのである。
世界的な資産と負債の不均衡の大部分は、こうした事情が理由である。
ちなみに、2013年の世界の資産と負債の不均衡は、4兆8000億ユーロに達している。
タックス・ヘイブンにある金融資産(2013年)
世界の金融資産 73兆ユーロ
オンショアで保管されている金融資産 67兆2000億ユーロ
オフショアで保管されている金融資産 5兆8000億ユーロ
→うちスイスで保管 1兆8000億ユーロ
→その他(シンガポール、ケイマン諸島など) 4兆ユーロ
スイス国立銀行の統計資料(2013年秋)
<スイスで保管されている非居住者の資産>
1兆8000ユーロ
→オフショア資産全体の3分の1に相当
<銀行口座の所有者>
・ヨーロッパ 1兆ユーロ
ドイツ  2000億ユーロ
フランス 1800億ユーロ
イタリア 1200億ユーロ
イギリス 1100億ユーロ
スペイン  800億ユーロ
ギリシャ  600億ユーロ
ホルトガル 300億ユーロ
その他  1600億ユーロ
ペルシャ湾岸諸国  1800億ユーロ
アジア諸国     1800億ユーロ
ラテンアメリカ諸国 1700億ユーロ
アフリカ諸国    1200億ユーロ
北米         900億ユーロ
ロシア        500億ユーロ
<運用先>
ルクセンブルク籍の投資ファンド 6000億ユーロ
アイルランド籍の投資ファンド  1500億ユーロ
世界の株式           4000億ユーロ
世界の債権           4500億ユーロ
その他(定期預金、他ファンド)   2000億ユーロ
タックス・ヘイブンは互いに競合してきたというよりも、実際には資産運用業務の各段階において、互いに業務を特化させている。
証券の保管だけがスイスの銀行の業務であり、それ以外の業務はルクセンブルク、ヴァージン諸島、パナマなどに移転しており、国際的な資産管理の大掛りな仕組みを取り、互いに共存共栄している。
投資ファンドはスイスには殆どなく、大半はルクセンブルク、アイルランド、ケイマン諸島という3つのタックス・ヘイブンに籍を置いている。
投資ファンドの残高では、人口50万人の小国であるルクセンブルクが、アメリカに次いで世界第2位になっている。
ヘッジファンドの大半は、ケイマン諸島に逃避した。
ケイマン諸島では、投機的ポジションに対する規制が極めて緩いからである。
1998年からスイス国立銀行が毎月発表している統計資料がある。
スイス以外の国で、このような統計データを作成している国はない。
2013年秋に発表されたスイス国立銀行の統計によると、スイスにある外国人資産は1兆8000億ユーロにのぼる。
そのうち1兆ユーロはヨーロッパ人の資産であり、これはEU諸国の家計の金融資産の6%に相当し、史上最高の割合となっている。
近年、スイスのタックス・ヘイブンが廃れたというのは、全くの時期尚早であり、今日ほど繁栄している時期はないといえる。
2009年4月にロンドンで行われたG20首脳会合で「銀行の秘密業務の時代は終わった」と宣言されてから、スイスの外国人資産総額は14%も増加している。
1974年にアメリカ財務省による最初のスイスに対する本格的な調査が行われた。
調査結果から、世界人口の0.1%を占めるに過ぎないスイスは、アメリカの全スぶ式の3分の1を保管しており、それらの株式の所有者は外国人だった。
なかでもイギリス人15%、カナダ人15%、フランス人7%、ドイツ人3%が目立った。
それまでアメリカ財務省は、このような実態を量的に把握できなかった為、それら全てをスイスの資産として計上していた。
この調査により、スイスは世界の資産の保有者ではなく管理人であり、実際の資産ではないことが明らかになった。
今日、スイスの金融機関が運用する資産の6割は、EU加盟国の居住者のものである。
例えば、資産管理部門で最大の規模を誇っていたクレディ・スイスについてみると、この銀行が管理する外国人資産の内訳は、フランス人が43%、スペイン人8%、イタリア人8%、ドイツ人4%となっている。
第二次世界大戦後、スイスの銀行は、スイスという土地は独裁政権から逃れようとする投資家のおかげで発展したという伝説を流布してきた。
1935年に施行された銀行の秘密業務に関する法律の目的は「人道主義」であり、私財を掠奪されるユダヤ人をナチスから守るために制定されたと説明してきた。
しかし、この神話は歴史研究によってウソだったことが判明した。
ボルガー委員会は、1933年から1945年にかけての期間、外国人の銀行口座数は220万だったことを突き止めた。
そのうち、僅か1.5%に相当する3万口座だけがユダヤ人大虐殺の犠牲者となんらかの関係があったとされている。
ベルジェ委員会の調査では、スイス版ビックバンが起こったのは、1930年代ではなく、1920年代だという。
管理資産額の実質の伸びは、1920年から1929年では14%増だった一方、1930年から1939年では1%程度だった。
伸び率が最も高かったのは、1921年から1922年までと、1925年から1927年までの2つの期間だった。
これらはフランスで巨額資産に対する課税が強化された年の直後に相当する。
ベルジェ委員会は、第二次世界大戦後、フランス人の金融資産の5%はスイスにあったと推測されている。
つまり、大量の資金がスイスに流れ込んでからスイスの銀行の秘密業務に関する法律が制定されたのである。
スイスの地位が著しく向上したのは、第一次世界大戦直後の時期だった。1920年から1938年にかけて、スイスの銀行が管理したオフショア資産(所有者が外国人)の総額は、10倍以上(インフレ調整後)になった。
1920年から1938年にかけて、ヨーロッパの大国の個人資産の総額には、殆ど変化はなかった。
従って、ヨーロッパの家計が自分達の金融資産をスイスに隠した割合は、第一次世界大戦前には、殆ど無視できるレベルだったが、それが大戦後には2.5%にまで急上昇したのである。
今日、20世紀全般を通じて、スイスで保有された資産額が分かるのは、1990年代後半にスイス銀行協会から委託を受けた2つの国際委員会の報告書だけである。
1つ目は、アメリカFRBの元議長ポール・ボルガーを委員長とする委員会で、その任務はナチスの犠牲者の相続人に属するはずの相続人のない銀行口座の所有者の捜索だった。
世界的な会計事務所の数百人の専門家が、第二次世界大戦中に資産管理業務を行っている254の銀行の記録を、3年かけて調べ、大量の未公開情報を明らかにした。
2つ目は、第二紙世界大戦中にスイスが担った役割を明らかにするために組織された委員会である。
歴史家ジャン=フランソワ・ベルジュが委員長を務めたこの委員会も、スイスの銀行の記録をふんだんに利用して、20世紀を通じてスイスの大手7行の金融機関に預けられた証券の総額を解き明かした。
それらの7行は、その後の合併買収を経て、現在はUBSとクレディ・スイスになっている。
記録資料の一部は破損していたり、委員会が閲覧できない資料があったが、両委員会によって得られた情報は、オフショア金融史の研究に利用できる第一級のものであった。
スイスの銀行はそれらを公表せずに、株式の時価評価額や債券の額面金額など、自分達に委託された証券の総額が記された資産管理業務の詳細な会計記録を、内部で保管していた事を明らかにしたのである。
『失われた国家の富』の著者ガブリエル・ズックマンは、ピケティの弟子である。
ズックマンの調査により、タックス・ヘイブンの実態が推測できるようになった。
タックス・ヘイブンの金融機関に、非居住者が株式や債券を保管している場合、それらの金融資産は彼らの本国の対外資産としては計上されないため、世界全体としてみた場合、統計数字の上では、対外資産総額が対外負債総額よりも少なくなってしまう。
この点に着目したズックマンは、タックス・ヘイブンに存在する資産は、その所有者が明らかにされていないことを逆手にとって、対外資産・負債の食い違いがタックス・ヘイブンにある資産残高を示しているはずであるという発想に至ったのである。
そして、タックス・ヘイブンにある金融資産については、銀行に顧客情報の秘密を守るという方針があるために、その大部分が資産所有者の本国において税務申告されておらず、これによって世界全体で少なくとも年間1300億ユーロの税収が失われていると主張している。