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2014年11月22日土曜日

育児の常識の変わり方はスピードが速い。
母子手帳は2年毎に書き換えられ、その度に母乳の飲ませ方、離乳食のタイミングなど、子育ての事情が変更されている。
20年前に推奨されていた「うつぶせ寝」は、今では乳幼児の死亡事故の上位に上げられており、厚労省は「うつぶせ寝禁止」を指導している。
無資格でも簡単な研修を受ければ、「保育ママ」として子供を預かることができる。
「保育ママ」は「家庭福祉員」として、児童福祉法にも定められている制度で、自治体が研修を行った上で登録される。
小学校で学ぶことは子供の権利であり、「義務教育」として、憲法で保障されている。
そのうえで、学校教育法などの教育に関する法律があり、法的に日本の子供には学ぶ権利がある。
つまり、小学校の待機児童は許されないのである。
日本の保育所に関する法律には、子供が「保育を受ける権利」、あるいは親が「わが子に保育を与える義務」というような、権利としての保育所入所を裏付ける法的な根拠は何もない。
保育所入所不承諾に対する異議申し立ては、「行政不服審査法」によって、不承諾を受けた保護者に認められた正当な権利である。
「保育園ふやし隊@杉並」のホームページに、誰でも利用できる異議申立書のフォームがある。
市町村長宛てに、申し立て者の氏名を記入して印鑑を押して提出すれば、手続きが可能となる。

「保活」という言葉を最初に遣ったのは、『AERA』(2012年)だった。
保育所は児童福祉法39条に基づいて設置・運営されている児童福祉施設である。
そして、同じく児童福祉法第24条にて、自治体の保育の実施義務が定められている。
また、児童福祉法第24条1項に「ただし書き」があり、待機児童が多くて、保育所に入所できない子供がいる場合には、保育ママなどの「適切な保護」をする責任があるとされている。
つまり、自治体には、住民の子供を保育所で保育する責任がある。
ただ、児童福祉法第24条1項「ただし書き」は、待機児童が増えてから新たに付け加えられた事もあり、逆に、自治体に対して保育所を増やさずに、「家庭的保育事業」という暫定的な対応を認めており、待機児童の存在が法的に正当化されているとも言える。
2008年に社会福祉法人全国福祉協議会が実施した「機能面に着目した保育所の環境・空間に係る研究事業総合報告書」という、保育所の面積に関する有名な調査研究がある。
その中で「保育所における食寝分離の視点から、2歳未満児は1人あたり4.1平米(現行は3.3平米)、2歳以上児は2.3平米(現行は1.98平米)と、現行より高い面積基準が必要」という結論となっている。
日本の保育所最低基準は、第二次大戦後、日本が最も貧しい時代に設けられた基準である。
この基準を導入した当時の厚生省・保育課長が「最低の最低」と言い切った基準であることは、今も伝説となっている。
認可保育所が増えない理由として、財源の問題がある。
認可保育所は、税金で運営されている。
私立保育所の場合は、運営費の1/2が国、都道府県と市町村が1/4ずつ負担している。
公立保育所の場合は、2004年から運営費が一般財源化され、自治体が独自に予算を捻出している。
認可保育所を作れば作るほど、自治体の負担が増える構造となっている。
小泉総理以降の待機児童対策の手段が大きく「規制緩和」と「民営化」の2つに変化した。
民営化が進んだのは2004年度から公立保育所の運営費が、国庫負担金制度から、国の三位一体改革によって一般財源化したことが最大の理由である。
一般財源化されてた事で、自治体が予算配分を決めることになり、公立保育所の運営予算を減らし、他の事業予算に振り分ける事が可能となった。
さらに2005年度から、延長保育など保育所で行う「特別事業」にかかる費用が、それまでの補助金から交付金化され、2006年度からは公立保育所の建設や施設改修に使われる「施設整備費」が交付金の対象外となった。
つまり2006年度以降、公立保育所の運営費の全てが地方公共団体の一般財源から支出されることとなった。
「三位一体改革」で、区にから市町村へ財政権限移譲という形となったが、保育所事業にとっては、兵糧攻めをされてしまったのである。
その結果、財源の確保が困難となり、2004年から毎年、全国で200を超える公立保育所が民営化されていき、2007年には私立保育所の数が公立保育所を上回るようになった。
2013年4月1日時点で、全国の待機児童数は2万2741人だった。
保育所に入所する子供の数は年々増えており、1950年には25万6690人だった。
2005年には199万3796人、2012年には217万6802人まで増えている。
この7年間で18万人も増えているのである。
保育所の入所定員数は、毎年2~3万人の規模で増やされているにも関わらず、入所希望者がそれを上回る勢いで増えており、待機児童は解消されない。
保育士の国家資格を持っているが、働いていない「潜在保育士」が、全国に60万人とも70万人とも言われている。
保育士養成校を卒業した人のうち、保育所に就職した人は51.2%(2011年)と低い。
2011年に厚労省が実施した「潜在保育士実体調査」によると、潜在保育士の数は57万人とされている。
2013年4月19日の安倍総理による「成長戦略スピーチ」の中で、「保育士の資格を持つ人は、全国で113万人。しかし、実際に勤務している方は38万人しかいない。7割が結婚や出産を機に、第一戦から退き、その後戻ってきていない」と語っている。
保育士の待遇は悪く、大手企業保育所でさえも、新卒の保育士の手取りは16万円。30歳を過ぎても手取りは18万円程度しかない。
2010年の国勢調査では保育士全体の2.5%が男性だが、彼らの多くが収入を理由に、結婚を機に寿退職を選んでいる。
保育所は児童福祉法に基づいて設置され、保育の中身は保育所保育指針に基づいている。
幼稚園は、学校教育法に基づいて設置され、その教育の中身は幼稚園教育要領に基づいている。
保育所保育指針と幼稚園教育要領は、2008年にほぼ同じ内容となり、保育所と幼稚園で求められる保育の中身は、ほぼ同じとなった。
日本で最初の幼稚園は、1976年(明治6年)に設立された東京女子師範学校附属幼稚園(現在のお茶の水女子大学附属幼稚園)である。
現在、日本国内には2万4000ヶ所の認可保育所がある。
そこに通う子供の数は230万人以上にもなる。
認可外保育所に通う子供は20万人程度。
認可外保育所には都道府県に届け出をすることが求められているが、預かっている子供の数が5人以下の保育所には、届け出の必要がない。
事業所内保育所にも届け出の義務はなく、6万人の子供が預けられている。
幼稚園に通う子供は160万人。
他に、2006年に始まった認定こども園が全国で1000ヶ所ある。