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2015年10月3日土曜日

労働者が得る賃金は、労働者階級の再生産に必要な額が支払われるだけであって、労働者の賃金は資本家からの分配ではない。
労働力の商品化が成立すれば、資本家と労働者の間で、それを売買する資本主義システムが動き出し、利潤が増えていき、労働者が再生産されることで、資本主義が回っていくことになる。
つまり、労働力の商品化が成立しない限り、資本主義システムは成り立たない。
旧ソビエト連邦や北朝鮮では移動の自由がなく、国が決めた場所以外で働く自由がないので、労働力の商品化は行われなかった。
国家による強制労働があるだけである。
マルクスの『資本論』で定義された「労働力の商品化」は、歴史的偶然によってイギリスで起きた。
きっかけは、15~16世紀に起きた「囲い込み」だった。
当時、ヨーロッパでは大変な寒冷期だった為、ヨーロッパ全域で毛織物の需要が急激に高まった。
イギリスは毛織物産業の成長期で、羊毛でセーターやコートを作ると、飛ぶように売れた。
そこで大量の羊毛が必要となり、イギリスでは領主や地主が農民を追い出して、羊を飼い始めた。
この時、農地の周りを生垣や塀で囲って牧場に変えたので、「囲い込み」と言った。
追い出された農民たちは、都市に流れて行くしかなかった。
彼らは身分的制約がなく、土地や生産手段も持っておらず、自分の労働力を売るしかなく、毛織物工場に雇われていった。
これがイギリスで起きた「労働力の商品化」である。