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2017年1月31日火曜日

日本銀行は1882年に開業した。
その以前の段階で日本国内には「国立銀行条例」に基づいて国から認可を受けて開業した民間銀行が150以上存在していた。
これらの「国立」民間銀行に明治政府は富国強兵・殖産興業のための資金供給機能を委ねたのである。
西南戦争が勃発すると戦費調達ニーズが発生し、「国立」民金銀行たちは必至で輪転機をフル稼働させ、紙幣が増刷されてしまった。
国立銀行条例が初めて制定された1872年時点では、明治政府は開業認可を求める銀行に紙幣の金貨や銀貨への兌換性を義務付けてしたが、1876年に国立銀行条例を改定し、民間銀行による不換紙幣の発行を認めてしまった。
これにより歯止めなきインフレ経済化になだれ込む恐れが出てきてしまい、それを回避すべく1881年に大蔵卿に就任した松方正義は、直ちに財政緊縮と通貨価値の回復に奔走するのである。
そして1882年、松方の差配の下で日本銀行が開業する。
3年後の1885年には初めての日銀券となる「大黒札」が銀との兌換紙幣として発行された。
この日本銀行開業とともに、従来の国立民間銀行紙幣や政府紙幣は全て回収整理処分され、1899年をもっていずれも運用停止となった。
これをもって日本銀行が日本唯一の発券銀行となったのである。
社会保障という用語や概念が本格的に定着するようになったのは、世界的にみても20世紀に入ってからのことである。
ただし国家が国民の生活や健康に関して一定の役割を果たすという考え方そのものについては、16~17世紀のイギリスの救貧思想にルーツを見出すことができる。
16世紀半ばに、初めて救貧法が制定された。
英語では「Poor Law」であり、直訳すると「貧乏法」となる。
貧困世帯の人々のための収容施設が設置されたり炊き出し活動が組織された。
この段階での公的な救貧活動は、あくまでも施し的観点から行われていた。
社会保障という言葉が本格的に使われ始めたのは、1935年にアメリカで「連邦社会保障法」が制定された時からだと言われている。
日本では日本国憲法(第25条第2項)で初めて社会保障という言葉が使われるようになる。
日本の社会保障制度は日本国憲法制定を起点として、戦後史とともに、根を下ろしていくことになったのである。
2009年度から統計の整理の仕方が変更され、それまで「社会保障費」とされていたのが「年金医療介護保険給付費」に、「失業対策費」とされていたのが「雇用労災対策費」という項目名となっている。
特に気になるのは「社会保障費」とされていたのが「年金医療介護保険給付費」という非常に具体的な表現に変わっている点である。
「社会保障と税の一体改革」の政策方針が打ち出されているが、その中で消費税率の引き上げに伴う増収分を「社会保障4経費」に充当することになっている。
社会保障4経費とは、年金・医療・介護、子育てのことを指す。
一体改革に向けて体制整備が具体的に動き出したのが2014年度だったことを振り返ると、それに先立って2009年度から「高齢者3経費」を浮かび上がらせるために、用意周到に統計改変が行われた可能性がある。
赤字国債は本来であれば毎年度ごとに「特例公債法」という法律を国会に上程し、その可決成立を経なければ発行できない。
しかし2013年度からは、いちいち特例公債法を成立させなくても当該年度の当初予算が成立するとともに赤字国債を発行できるようになってしまった。
当初は2013年度から2015年度の時限立法だったが、2016年度予算の提出に合わせて、この体制を2020年度まで続ける改定案も国会に上程され、成立してしまった。
よって、現在はいちいち国会で説明しなくても赤字補填のために国債発行が可能となってしまっており、もはや「特例」ではない。
17~19世紀の欧州では、「窓枠税(窓税)」というものがあった。
窓が多い家には裕福な人が住んでいるという前提の下に、課税水準が決められていた。
この税制から逃れるために、人々は窓を埋め潰すことで対抗したという。
日本企業は巨額の内部留保を貯めこんでいる。
日本の企業部門全体の純貯蓄(貯蓄-投資)の規模は、GDP比で8%に達しており、先進諸国の中でも突出して高い。
欧米主要国の平均値はGDP比で2%という事を考慮すると、日本企業の貯蓄ポジションは群を抜いている。
アダム・スミスも著書『国富論』の第5編の中で、消費に関する課税について言及している。
消費税課税を人々の所得を直接的に、そして所得水準に比例して公平・公正に課税する能力のない国々の苦肉の方便だと言っている。そして、このような課税のやり方は、消費の消費支出が彼らの所得水準に比例していることを前提にしている、とも言っている。
つまり、消費税課税はあくまでも所得に対する直接課税の代替税だと位置づけており、そのような代替税に立世ならければ税金が取れない徴税吏たちを揶揄しているのである。
このくだりで、アダム・スミスは「臣民の所得をしっかり把握できない国家」という言い方をしている。
『国富論』が書かれた時代は君主国家の時代であり、ある国家の国境内に住んでいる人々は全て国王の臣下だった時代である。
そのような時代だったので、間接課税は直接課税の代替物とみなされたわけである。
日本の2016年度予算では、一般会計歳入総額は96兆7218億円になると想定されている。
うち租税及び印紙収入は57兆6040億円と59.6%しかない。
内訳は所得税が18.6%、消費税が17.8%、法人税が12.6%、その他が10.6%となっている。
つまり、所得税と消費税の割合はほぼ等しく、両者で歳入総額の36%、租税収入の6割を占めている。
法人税収の割合は、歳入総収入の12%、租税収入の2割しかない。
国民の所得にかかる税金と消費にかかる税金で、税収全体の6割を賄っているのである。
日本の2016年度予算では、一般会計歳入総額は96兆7218億円になると想定されている。
うち租税及び印紙収入は57兆6040億円と59.6%しかない。
内訳は所得税が18.6%、消費税が17.8%、法人税が12.6%、その他が10.6%となっている。
つまり、所得税と消費税の割合はほぼ等しく、両者で歳入総額の36%、租税収入の6割を占めている。
法人税収の割合は、歳入総収入の12%、租税収入の2割しかない。
国民の所得にかかる税金と消費にかかる税金で、税収全体の6割を賄っているのである。
『国富論』の中でアダム・スミスは
「神の見えざる手」というような言い方をしていない。
国家というものが国民の経済活動に対して、やたら介入する、つまり「見える手」をもって国家が国民の経済活動を引っ掻き回してはいけないと主張している。
決して市場原理に任せておけば全てが上手くいくと言っているのではない。
国家が人々に「愛国消費」とか「愛国投資」を強要するというようなことをしてはならない。
そんなことをしなくても、人々がその欲するところに従って行動することが、国々にとっても良い結果を生む、と言っている。

2017年1月29日日曜日

スコットランド生まれのイギリス人であるアダム・スミスは1776年に『国富論』を執筆したことで、経済学の生みの親となった。
アダム・スミスは哲学者であり、文筆家であり、政治評論家で、政治活動家だった時期もある。
経済社会のより良きあり方を模索し、市井の人々を幸せにできる世の中の姿を追い求めた果実として『国富論』が誕生した。
なぜ、世のため人の為のことを思ったアダム・スミスの著書が『国富論』などというタイトルなってしまったのは、日本語への翻訳とタイトルの省略が原因である。
『国富論』の原題は『An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations』であり、これをそのまま日本語に訳したのが『諸国民の富の性質と原因に関する研究』という邦題で、当初はこの題名が使われていたが、ある時から『国富論』に省略されるようになってしまった。
これについては原題側の責任もあり、フルタイトルが長すぎるので、次第に『The Wealth of Nations』と省略されるようになり、日本語版も短縮され、当初は『諸国民の富』となっていて、基本的に原題の省略形に忠実で、英語のnationは国民を意味しており、決して国家ではなかった。
ところが、富国強兵路線を目指していた明治期のある時にこの『諸国民の富』が、『富国論』と書き換えられた。
その後、さすがに『富国論』では原著の趣旨に反しているということで『国富論』への改名が行われた。
『富国論』よりは『国富論』の方がセンスはいいが、どちらにしても国民よりも国家が前面に出てくるニュアンスになってしまった。

2017年1月28日土曜日

所得税は人々の所得にダイレクトに課税される直接税、消費税は人々の消費行為に課税される間接税である。
イメージ的には、所得税は我々の財布の中にカネが入ってくる時に政府が巻き上げていき、消費税は我々の財布の中からカネが出て行く時に政府が巻き上げて行く感じである。

2017年1月23日月曜日

「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートが低いから日本の財政は健全」と言われるが、CDSレートとは「国の倒産確率」にすぎない。
国が資金繰り倒産するのを回避するために、中央銀行が国債を引き受ければ倒産は避けられる。
元利金の支払い不能状況が回避されれば、CDS市場では倒産は回避されたことになる。
つまりCDS市場で定義する財政破綻は日本では起こらないかもしれないが、貨幣の価値が下がり過度なインフレになる可能性はある。
2015年6月末時点で、ゆうちょ銀行を含む銀行全体の国債保有額は259兆円である。
日銀の国債保有額は2015年7月末で386兆円、2016年8月末で397兆円となり、日銀が民間銀行よりも多額の国債を保有している。
日銀の国債保有シェアは4割だが、FRBの2割弱よりもかなり大きい数字になっている。
ちなみに2015年8月に、国債通貨基金(IMF)は、日銀の国債買入れが2017年~2018年に限界を迎えるとのレポートを公表している。
2016年度の日本政府の国債発行予定額は152.6兆円であり、これは新発債と借換債の合計額である。
2016年度は34兆円の赤字なので、この分が新発債となる。
借換債分は、以前保有していた金融機関が再度、同額分を購入してくれれば達成できるが、新発債分は新たに誰かに買い増ししてもらう必要がある。
よく「国債を保有している金融機関は、国債を売れば自分の首を絞めてしまうので国債相場は崩れない」と言われるが、誰かが新発債を買い増ししてくれるなければ、国債相場は大崩れする事になる。
日本国債は日本人しか保有していない、という事実が意味しているのは、外国人投資家にとって日本国債は全く魅力のない商品だということである。
日本国債には信用リスクが全く上乗せされていないということである。
市場原理が働かない日銀が年間発行額の8割も買っていれば、外国人にとって魅力のないレートまで金利が下がるのは当たり前である。
日銀が国債を売却しようとした場合、相当に金利が上昇しないと外国人投資家は参入してこないという事を理解しておく必要がある。
EUの財政ルールでは、単年度の財政赤字がGDPの3%を超え、是正処置が不十分の場合には、最大でGDPの0.2%の罰金を科せるとなっている。
この基準を日本に当てはめると、日本のGDPは500兆円だから、単年度赤字が15兆円を超えれば、1兆円の罰金となる。
ちなみに、2016年度の日本の財政赤字は予算段階で34兆円である。
また1992年に調印された弐ーろに参加いるための「マーストリヒト条約」では、「政府債務の対GDP比60%以内」という加盟条件がついている。
この基準を日本に当てはめると、日本のGDPは500兆円だから、政府債務は300兆円以内ということになる。
ちなみに、2016年6月末の日本の累積赤字は1053兆円である。
2016年7月に罰金の制裁を受けたポルトガルの財政赤字は対GDP比4.4%、スペインは5.1%だった。
日本は6.8%であり、ギリシャの7.2%に近い。
2015年に財政破綻懸念で世界中が大騒ぎしたギリシャの公的債務は対GDP比で177%だった。
ちなみに日本の債務は対GDP比で211%である。
「日本は財政支出を中央銀行の紙幣増刷で賄う『ヘリコプターマネー』にすでに手を染めており、世界最悪の公的債務を高インフレで解決する可能性が高い。
ヘリコプターマネーに手を染めれば、必ず最後はインフレになって破綻している。
日銀による巨額の国債買入れに出口が無ければ、日本がそうなる可能性は非常に高い。」
by 野口悠紀雄(2016年5月27日、ブルームバーグニュース)
「異次元の質的量的緩和」とは上手な表現ではあるが、政府の資金繰りを中央銀行が賄う「財政ファイナンス」そのものである。
2016年度は150兆円の国債が発行され、そのうち120兆円を日銀が最終的に引き受けている。
政府は直接的に日銀に国債を売って資金調達をしているのではなく、入札で民金金融機関に国債を売っているが、日銀が入札直後の国債を民間金融機関から買い集めているのである。
そして民金金融機関は、日銀への転売手数料が目的で入札に参加しているのである。
マイナス金利政策は、現在の日本では不評である。
理由は、マイナス金利導入前に「異次元の質的量的緩和」という余計な事をしてしまったからである。
通常は、長期金利の方が短期金利より高いので、銀行の利益は短期で調達したものを長期で運用することによって得ている。
長短金利差が大きければ大きいほど、利益が増える。
預金金利が0%でも長期金利が高ければ、銀行は利ザヤを確保できるが、黒田総裁が「異次元の質的量的緩和」により、長期国債を購入した結果、長短金利差が無くなってしまった。
長短金利差は縮小どころか、逆転したタイミングでマイナス金利政策を導入してしまったのである。
これではマイナス金利を更に深堀りさせると、金融システムリスクを発生させ、銀行株の下落が株式市場の暴落の引き金を引く恐れもある。
マイナス金利政策の効果が出ないのは、長期国債を爆垓して長短金利差を縮小させてしまってから、マイナス金利政策を導入してしまった政策ミスのせいである。

2017年1月22日日曜日

「異次元の質的量的緩和」政策は、日銀当座預金を極大化すればお金が銀行間市場から市中に流れるという発想に基づくので、日銀当座預金残高の極大化政策である。
一方で、「マイナス金利」政策とは、日銀当座預金残高が大きいとペナルティーを科すというので、日銀当座預金残高の極小化政策である。
つまり、この2つの政策は真逆であり矛盾する。
マイナス金利政策を採用するならば、まず異次元の質的量的緩和で極大化した日銀当座預金残高を元の規模に戻し、それから極小化をさせるのが筋である。
しかし、極大化した日銀当座預金残高を元の規模に戻す方法はない。
さらに、黒田総裁は2016年9月21日の金融政策決定会合で、「マイナス金利付き質的量的緩和」という新たなキーワードを作りだした。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2014年)によると、2人以上世帯の場合の持ち家率は全国平均で74%となっている。
これは米国の69.1%(2004年)、韓国の55.6%(2005年)、スウェーデンの38.7%(2004年)などと比べてもかなり高い水準といえる。
戦後の日本は圧倒的に住宅不足の状態からのスタートだった。
1945年11月に設置された戦後復興院の試算によると、国内の住宅不足は420万戸だった。
具体的には空襲による焼失が210万戸、戦時中の供給不足が118万戸、海外からの引揚げ者による需要が67万戸、強制疎開による取り壊し住戸が55万戸の計450万戸に対し、これから戦死による需要減の30万戸を引いた420万戸が不足しているというものだった。
70年後の現代の日本は完全な住宅余剰時代を迎えている。
2013年の総務省の「住宅・土地統計調査」によると国内の総住宅数は6063万戸、そのうち空き家数は820万戸と、8軒に1軒が空き家という事態が生じている。
しかし住宅は未だに毎年100万戸が供給されている。
東京都豊島区は2014年5月に、日本創成会議から「消滅可能性のある自治体」して23区で唯一名指しをされた。
豊島区は全世帯に占める単身世帯の割合が56%であり、また住宅総数に占めるワンルームの割合も40%となっている。
池袋や大塚には築年数が経過して競争力を無くしたワンルームマンションが多数あり、その中に空き室を多く抱えたマンションも多く、深刻な問題を引き起こしている。
大手ゼネコンが施行した物件であれば、必ずしも安心という訳ではない。
大手ゼネコン施行といっても、実際には大手ブランド名は「冠」でしかなく、実際の施工は下請け業者が行うことになり、これらの業者を現場監督が率いねばならない。
大手ゼネコンには優秀な現場監督が多くいると思うのは早計で、大手ゼネコンほど優秀な監督はオフィスビルなどの大型案件に投入される。
そもそもマンション工事はあまり儲からない工事であり、大手ゼネコンは引き受けたがらないのが、実態なのである。
マンション竣工後のトラブルの発生時に、「大手の施行だから安心だと思ったのに」というクレームが意外と多いのは、こうした理由が背景にある。
不動産のプロの間では「マンションを買うなら築7、8年ものを買え」という格言があるという。
マンションの多くが鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造で、コンクリートは水分を含み、10年近くに渡って水分を外へ放出していく。
マンションは機密性が高いため、この水分の放出が結露の原因となり、カビの大量発生にもつながる。
建物はおおむね7~8年経過すると、不具合はほぼ出尽くし。必要な修繕や更新なども、管理の良い分譲マンションであれば施されるので、修繕記録を閲覧することでチェックが可能となる。
7、8年物であれば、ある程度の問題が明らかになった上で、まだ建物や設備が劣化する前であり、新たな追加の修繕負担を求められることなく、建物として安定した物件を選べるというメリットがある。
日銀が長期金利を下げる事でメリットがあるのは、日本政府のみのようである。
景気対策と称して政府の財政を助け、政府の資金繰り倒産を回避するのが目的としか思えない。
〇メガバンクの貸出金の残存期間別残高(2015年9月末)
          A行     B行     C行
1年以下の貸出   38.3%    15.6%    39.1%
1年超の貸出    
 うち変動金利   50.1%    75.0%     49.0%
 うち固定金利   11.6%     9.4%    11.9%
メガバンク3行は、短期金利に連動する1年以下の貸出と変動金利の残高の方が圧倒的に多い。
つまり、長期金の低下は民間部門の経済活動への影響は殆どないのである。
民間には好影響を与えていない日銀の長期国債の爆買いによって、量的緩和の出口は無くなっている。
中央銀行のB/Sの大きさについて、金融史が専門のハーバード大額のファーガソン教授は「1950~80年は中央銀行の肥大化がインフレと深く関わっていた。1900年以降、主な中央銀行の資産規模はGDPのほぼ10~20%だったが、現在のFRB、欧州中央銀行、英国中央銀行は約25%で歴史的に見て高い水準にある」と警告している。
ちなみに、日銀の資産規模の対GDP比は、1998年当時の15%から、2016年には90%にまでになっている。
2016年9月21日の金融政策決定会合で、日銀は「異次元の量的緩和を長期化し、長期金利を0%に誘導する」と宣言したので、この数字はさらに巨大化することになる。
「短期金利は中央銀行がコントロールし、長期金利はマーケットがコントロールする」という金融の教科書に挑戦すると宣言したのである。
黒田日銀総裁は、「通貨発行量の不足がデフレ時容態を招いている」と判断して、異次元の質的量的緩和を行い、その結果、国力に比べて余りにも過剰な通貨量を供給してしまった。
さらに、質的緩和の部分で、「10年債、30年債」という長期国債の購入を増やしてしまった。
つまり、日銀は通貨量をコントロールする手段を放棄してしまったことになる。
短期国債なら満期待ちにより、満期時に国債を国に返還し、現金を受け取り、日銀にある国の当座預金残高を減らす方法がある。
これに対して、長期国債は満期までの期間が長く、満期待ちができないため、保有高を戸来には市中に売却する必要があるが、国債が暴落し長期金利が暴騰した後にならないと、買い手は現れない。
日本では2000年位まで、貨幣供給量は経済成長に合わせて極めて適切なペースで増加していた。
貨幣供給量とは「発行銀行券残高」、「日銀当座預金残高」、そして相対的には微々たる「政府発行硬貨」である。
2000年3月末時点では、発効銀行券残高は54兆円、日銀当座預金残高は6.8兆円と、発効銀行券残高の方が大きかった。
2016年8月末時点では、発効銀行残高が96兆円なのに対して、日銀当座預金残高が303兆円と、日銀当座預金残高が発行銀行残高の3倍にもなっている。
2000年から発行銀行券残高は1.8倍にしか増えていないのに、日銀当座預金産高は45倍となり、その結果、貨幣量は6.6倍にもなっている。
この20年間で日本の国力である名目GDPは、全く伸びておらず経済規模は変わらないのに、貨幣量6.6倍という、この伸びは恐怖を感じる。

2017年1月21日土曜日

産業革命以来、
格差を減らすこたができる力というのは
世界大戦だけだった。
by トマ・ピケティ
マスコミについて私が学んだのは、
彼らはいつも記事に飢えており、
センセーショナルな話ほど受ける、ということだ。
by ドナルド・トランプ
通貨を発行することによって政府・中央銀行は、資産と負債の利ザヤ(資産から得られる利息と負債に支払う利息の差)が発生し、これを通貨発行益という。
現在、日本銀行は国債(資産)を民間銀行から買い、その代金を日銀当座預金に振り込む方法で、異次元の質的緩和を進めている。
このオペレーションの結果、日銀が受け取る利息は「国債の金利」で、一方で支払う利息は「日銀当座預金への付利利息」となる。
つまり、国債から受け取る金利-当座預金に支払う利息が通過発行益となる。
発行銀行券は無利息だが、現在、日銀当座預金の大半(9兆円分の法廷準備預金残高分)に対して、日銀は民間銀行に0.1%の利息を払っている。
従って、その受取利息と支払利息との差額が、通貨を増発することによって日銀に入る通貨発行益となる。
現在の日銀は、異次元の量的緩和政策により、国債を買えば買うほど、つまり日銀当座預金残高を増やせば増やすほど、通貨発行益を増やすことができる。
しかし、将来、デフレから脱却し、金融引き締め時にはFRBが取ったように日銀当座預金の付利金利をあげて行くしか方法はない。
この方法を取ると、日銀の支払利息が急増し、受取利息より多くなる可能性が高く、通貨発行益はマイナスになってしまう。
これが「量的緩和の出口論」で問題になっている点である。
日銀の負債の大半は、日銀当座預金であり、将来、金利が高等すれば日銀当座預金に対する多額の支払利息が発生する可能性がある。

2017年1月20日金曜日

『一流の育て方』は半年で20万部売れたらしい。
著者のムーギー・キム氏は、グローバルに活躍しているリーダーに質問して、親に何を感謝しているかを聞いて、2年かけてまとめたら、全世界共通な結果だった。
子供の頃に、自分で決める自主性を尊重してくれた事を親に感謝していた、という。

一流の育て方―――ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる

日本銀行が「異次元の量的緩和」で増やしているお金とは、「発行銀行券」よりも「日銀当座預金」である。
2016年8月末で発行銀行券は96.4兆円、日銀当座預金303.5兆円、貨幣流通残高4.7兆円となっている。
発行銀行券のことを英語で「Note」と言うが、これは約束手形の意味の「Note」であり、発行銀行券や日銀当座預金は日本銀行のバランスシートの右側、つまり負債側にある。
約束手形は振り出した人に提示すればお金に換えてくれるので、振出人にとっては負債なのである。
各国のGDPはこの20年間で自国通貨ベースで、米国が2.3倍、英国が2.4倍、韓国は3.6倍、シンガポールは3.2倍、オーストラリアは3.6倍、中国は11.2倍になっているが、日本の名目GDPは全く増えていない。
各国の名目GDPの推移(2015年)
        対1985年比     対1995年比
日本       1.51        1.00
米国       4.13        2.34
英国       4.88        2.38
韓国       17.84        3.63 
シンガポール   9.80        3.22
豪州       7.38        3.58
中国       74.99        11.15
2016年度に日本政府は150兆円の国債を発行しているが、日本銀行はその発行額の8割に当たる120兆円を引き受けている。
その国債の内訳は、国債の償還額の一部を借り換える資金を得るために発行される「借換国債」と、新規に発行される「新発債」となっている。
つまり、日本銀行が量的緩和を中止すると日本政府は資金繰り倒産をしてしまう。
戦前のドイツの中央銀行だったライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)は、倒産している。
彼らは第一次世界大戦の際に、量的緩和を行い、ハイパーインフレを引き起こしてしまった。
1923年1月に250マルクだったパン1個が、12月には3990億マルクになってしまったという。
ライヒスバンクは、反省をせずにナチス政権の圧力に負けて、再度量的緩和を行い、ハイパーインフレを引き起こしてしまった。
その結果、ドイツの中央銀行のライヒスバンクは倒産し、新しい中央銀行としてブンデスバンクが創設された。
ブンデスバンクがECB(ヨーロッパ中央銀行)の量的緩和に対して激しく抵抗したのは、このような歴史があるからである。

2017年1月19日木曜日

経済学者のケネス・ロゴフとカーメン・ラインハートは、『国家は破綻する』で政府債務がGDPの30%くらいだと成長率は4.1%、30~60%だと2.8%、60~90%だと2.8%ぐらいになり、政府債務が90%を超えると成長率はマイナス0.1%になるとしている。
これが「財政の崖」というショッキングなネーミングで一躍有名になった。
当時、世界中の政治家が大騒ぎをし、アメリカの共和党は債務上限法の改正に反対して、連邦政府を機能停止寸前に追い込んでしまった。
ところが、この論文でロゴフとラインハートはエクセルの操作を間違えて、計算ミスをしていたという。
この衝撃的な事実は、マサチューセッツ大学の博士課程に在籍していたトーマス・ハーンドンという大学生が偶然発見し、指導教官のマイケル・アッシュ、ロバート・ポーリンと協力して指摘された。
正しいデータを使って計算し直すと、政府の債務がGDP日で90%以上に伸びた場合でも、経済成長率は2.2%であることが分かった。
つまり債務残高と経済成長の間には、それほど津陽送還は無かったのである。
中国のGDP統計が信用できない理由は、以下の通りである。
1.経済の規模が大きいわりに変動が少ない。
2.国家統計局と各省・各市の経済統計データが一致していない。
3.経済成長率が8%と発表された年に、電力消費が10%落ち込んでいる。
4.リーマンショックが発生した時も失業率はほぼ一定だった。
5.輸入が10%以上減っているのに経済成長率が7%近くもある。
日本より経済規模も大きく国土も広く、人口も10倍以上の国であるにもかかわらず、中国のGDP統計は締日から、3週間で発表される。
しかも一度発表された数字は修正されることはなく、確定値になっている。
日本の場合、季節要因などを後で入れ直して再計算しているので、GDP集計は一次速報、二次速報、確報の三段階になっている。
そのため年度毎のGDP統計はの締日は3月末日だが、確報が出るのはその年の12月になってしまう。
2016年春に、ウォールストリートジャーナル紙に、IMFが推計した中国の不良債権は1.3兆ドルと報道された。
これらが返済不能に陥ると、中国のGDPの7%に相当する膨大な損失を銀行が受けることになり、中国の金融システムは重大な危機に陥ることになる。
一方で、中国の銀行の公式発表では、不良債権は0.2兆ドルしかないとされ、公式発表の不良債権化率は1.67%しかないという。
IMFの推計をベースにすると不良債権化率は11%となる。
ちなみに日本の銀行かせバブル崩壊後に記録した不良債権化率は最大で8%(大手銀行8.7%、地方銀行8.1%)だった。
既にちゅうごくの不良債権化問題は、極めて厳しい段階に迫っていると思われる。
千葉市は無駄遣いと批判されていた千葉市ユースホステルとキャンプ場を民間団体の「R.Project」に貸出した。
R.Projectは、自由な発想で施設をリノベーションし、サービスを刷新した。アルコール禁止だったのを解禁し、バーベキュー場を整備し、「手ぶらバーベキュー」のサービスを始めたり、オートキャンプができるように林道を拡張した。
その結果、キャンプ場の利用者は7倍増となり、利益が出た事により税収が増えた。
それまで千葉市は、年間3000万円もの委託管理料を支払っていたが、逆に400万円の賃料を貰えるようになった。
ブルース・ラセット(イエール大学)とジョン・オニール(アラバマ大学)は、1823年から世界で起こった95の国家間戦争(のべ337ヵ国)のデータをまとめた戦争の相関を分析し、2001年に『Triangulating Peace』を出版した。
この本では、しっかりとした同盟関係を結ぶことで40%、相対的な軍事力が一定割合増すことで36%、民主主義の程度が一定割合増すことで33%、経済的依存関係が一定割合増加することで43%、国際的組織介入が一定割合増加することで24%、それぞれ戦争のリスクを現象させると述べている。
ハイパーインフレの定義は、フィリップ・ケーガンの古典的な定義によれば年率13000%、国際会計基準の定義では年率26%となっている。
また、国際会計基準にはケーガンの定義よりもかなり低めの「超インフレ」の定義として、3年間の累積インフレ率が100%に近いか、100%を越えている、というのがある。
これは国際会計基準のIAS第29号という「超インフレ経済下における財務報告」をするために定められたマニュアルを適用する目安となっている。

2017年1月13日金曜日

1972年から「少年ジャンプ」で連載され、イチロー選手や田中将大選手が愛読しているという野球マンガ『キャプテン』の作者・ちばあきお氏の兄は、『あしたのジョー』の作者・ちばてつや氏だという。
兄弟の作風の共通点は、微妙な心の動きを動作として丁寧に描くところに特徴がある。
「人事を尽くさず、天命を待たず」
(作家の阿佐田哲也の座右の銘)
城山三郎が文学界新人賞を取った時に、文藝春秋から電報を届けにきた配達人が、「シロヤマさんのお宅ですね」と聞いた。
すると奥さんが「そんな人はうちには居ません」と答えたという。
城山三郎の奥さんは、その時まで旦那のペンネームを知らなかったのである。

2017年1月10日火曜日

結婚は判断力の欠如、
離婚は忍耐力の欠如、
再婚は記憶力の欠如。

2017年1月4日水曜日

トランプは選挙戦を通じて、自分達から職と暮らしと安全を奪った主犯達だとして、「メキシコ、イスラム教徒、日本」を名指しし、低所得層の白人が抱く「不安」を聴衆の前に並べてみせた。
今回の大統領選で可視化された、パワーエリートやエスタブリッシュメントから顧みられることのない人々の「不安」を背景に、トランプは、自分の国内政策が上手くいかなくなると、国内にアメリカの敵を探し始める可能性がある。
1950年代前半に、アメリカで吹き荒れた狂騒的な反共主義現象だった「マッカーシズム」のような歴史は繰り返す、という反復現象が起こるかもしれない。
アメリカは本来、尖閣諸島を日本領だとも中国領だとも認めていない。
オバマ政権時代にアメリカが尖閣諸島ほ日米共同防衛の対称にすると明言したのは、民衆党政権時の前原誠司外相が対米交渉で引き出したのである。
トランプが大統領に就任すると、日米同盟の見直しが、経済負担の面から語られる可能性がある。
安倍政権にとって、トランプ新政権の誕生は、沖縄の基地問題についてはマイナスに作用しそうである。
トランプ現象を読み解くキーワードとしてFBI(連邦捜査局)がある。
FBIは米国内で捜査を行い、国家の安全保障に関わる公安事件、連邦政府の汚職事件、広域事件などを扱う司法省が管轄する法執行機関である。
クリントンの私用メール問題がFBIとの関連で重要な意味を持つ。
<私用メール事件の概要>
2016年5月にクリントンが国務長官在任中に私的に設けたメールアカウントを経由して、公務のメールを送受信していた事について、国務省セキュリティー当局の慈善商人を受けていない事が明らかになった。
そもそも公務で私用メールを使うことが国務省の規制に違反していた。
既にFBIは機密漏えいの有無や極秘情報の取扱いに関して捜査に着手していた。
国務省はクリントンが私設アカウントを経由して送受信したメール約3万通のうち、7通を再興機密にあたる極秘扱いに指定した。
ちなみにオバマ政権で国防情報局長だったフリン氏が「私なら大統領選を辞退して恐らく監獄に入るだろう」と非難するくらい深刻な問題だった。
7月5日、FBIのコミー長官は、クリントンの国務長官在任時のメールの扱いについて「捜査の結果、訴追には値いない」と捜査終了宣言を行い、翌日にはリンチ司法長官が訴追しないことにしたと発表している。
ところが、10月28日に、FBIは新たなメールが見つかったとして捜査を再開し、そして大統領選投票日の前日の11月6日に、再度コミー長官が捜査終結宣言をした。
<事件の真相>
クリントンが大統領に就任すれば、私用メール問題に触れる事ができなくなるので、それまでに捜査を進めようとした所、オバマ政権から想定外の捜査妨害が入り恐怖を感じ、FBIはクリントン大統領からの報復を受ける前に、大統領になる芽を潰すために「全面戦争」に突入した。
そして、FBIはクリントンに最もダメージを与えるタイミングとなるよう、日本で言う指揮権発動がされたように国民が受け止める、大統領選挙投票日前日に捜査終結を宣言したのである。
結果的に、トランプを大統領に当選させた最大の立役者は、FBIだったということになる。
トランプ当選直後の2016年11月17日に、安倍総理はニューヨークのトランプを訪ねた対応は、極めて稚拙だったと言わざるを得ない。
なぜならば、2017年1月20日までは、オバマが大統領だからである。
安倍総理はロシアとの間で、北方領土交渉を前に進めたいと考えているが、オバマ大統領は2016年2月に訪ロしようとする安倍総理に対して、自粛を求めており、支持していない。
トランプが大統領選挙で当選を決めた途端に、ロシアはシリアにおける無差別爆撃を再開しており、オバマは人道上、ロシアの武力行使を問題視している。
この状況下で安倍総理がトランプに会うことが、日米同盟に与える影響を冷静に考える必要があった。
渡米前の11月16日に、安倍総理は公明党の山口那津男代表に「TTPが米国や国際社会、日本にとって大事だとトランプ氏に伝えたい」と話したという。
トランプが「大失敗の合意」と呼ぶTTP離脱は、選挙公約の大きな柱である。
11月17日の会談内容は非公表とされ、「安倍政権幹部によると、今回の会談はトランプ氏の本音ほ聞き、信頼関係をつくるのが目的だった。首相は日米関係や世界情勢をめぐり自分の考えを説明し、トランプ氏は聞き役に回る事がおおかったという」と報道された。
つまりトランプの本音を引き出すことはできず、成果らしい成果は得られなかったのである。
そして5日後に、トランプはビデオメッセージで「大統領就任初日に、TTP脱退を通告する」と述べるのである。
また、アメリカ国内では、安倍総理との会談の場に、長女のイバンカを同席させたことに対し、「政治の私物化」と批判を受けている。
つまり、日本に対しても公私混同を認める、その程度のいい加減な国だと受け止められてしまった。
戦後70年に渡って貫いてきたアメリカの介入主義を、トランプは大統領選中の演説で「米国は世界の警察官をやる余裕はない」と切って捨てた。
17世紀以来、ヨーロッパ大陸の宗教紛争や国家間の対立を逃れてアメリカに渡ってきたアメリカ人の精神の根底にあるのは、自分達の信仰とその自由を守ることである。
我々はヨーロッパ大陸のことに口出ししないから、我々の事はほっておいてくれ、というのがアメリカの原点である。
トランプが目指しているのは、アメリカを強くすること、アメリカ的な原理を復活させることのようである。
これは日本で言うと「復古維新思想」に通じ、建武の中興や明治維新に込められた精神と同じく、過去に真理を見出し、そこから未来を築いていく、一種の反復思想でもある。
現在、国際社会を席巻している新自由主義は、自由を極度に重視する。
グローバリズムの進展に伴い、限られた巨大多国籍企業が利潤を分け合っている。
世界人口の半分の富が62人の超富裕層に集中していることが話題になっているが、これも新自由主義の進展を表現しているに過ぎない。
自由を何よりも優先する人々にとって、優勝劣敗は当たり前であり、平等は無きに等しく、放置しておけば極端な格差社会が生まれることになる。
『21世紀の資本』でピケティが主張するように、税制や教育制度において、格差を是正するために普遍性を担保しようとするならば、国家の強い関与が必要となる。
マルクス主義の観点から「トランプ現象」を見ると興味深い。
「ルンペン・プロレタリアート」という言葉があるが、『広辞苑』には「資本主義社会の最下層に位置する浮浪的な極貧層」と書かれている。
マルクスは『共産党宣言』の中で、「旧社会の最下層にあるこの無気力な腐敗物」と呼び、『ルイ・ボンパルトのブリュメール18日』では「浮浪人、兵隊くずれ、前科者、監獄部屋からの逃亡人、さぎ師、大道芸人、どん底の貧乏人、すり、手品師、ばくち打ち、女郎の色男、女部屋の亭主、荷かつぎ人足、三もん文士、つまりフランス人がボヘミアンと呼んでいるような、つかまえどころのない、バラバラにされた、いわばあちこちに投げだされた人間の全体」と記している。
マルクスはルンペン・プロレタリアートを蔑んでいる事が分かる。
マルクスは組織化された労働者(プロレタリアート)しか関心を持っていなかった。
現在の日本においても、民進党で言えば「連合」がそれに当たり、マルクス主義に呪縛され、「つかまえどころのない、バラバラにされた、いわばあちこちに投げだされた人間の全体」に目を向けてこなかった。
組織化されていないがゆえに、エスタブリッシュメントや組織人の目には見えない人々を、いかにして味方につけることができるか、この能力が選挙の勝敗を決することになる。
つまり、トランプはマルクスの呪縛から自由だったのである。
「低学歴の人達ず大好きだ」と公言することで、ルンペン・プロレタリアートを結集したのである。
学歴が低いために収入も低い、現状が変われば自分達の未来が開けるかもしれない、と考えた人々が、自分達の望をトランプに托したのである。
評論家の副島隆彦氏は、2016年6月に刊行した『トランプ大東利用とアメリカの真実』で、「5月22日にトランプが大統領になると決断した」とトランプ当選を的中させている。
副島氏は2つの事実に注目している。
1つは2016年5月18日に、トランプがヘンリー・キッシンジャーを訪れた事であり、決定的に重要な事だったと指摘している。
キッシンジャーは1969年にニクソン政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任し、フォード政権では国務長官を務め、ベトナム和平を実現させ1973年にノーベル平和賞を受賞している。
今日までアメリカの外交、安全保障政策に多大な影響を及ぼしている大物であり、国家の政策決定を左右できる立場のパワーエリートである。
もし、トランプが本当にとんでもない人物であれば、キッシンジャーが会うはずはない。
キッシンジャーは、多くの知識人や主要メディアが「キワモノ」扱いをしているトランプに会うことによって、トランプが大統領に就任してもよいというメッセージを積極的に出したと見るべきと判断した。
2つ目はトランプとアメリカの仮装白人との呼応関係に注目した。
2016年2月23日に、ネバダ州での勝利演説で「I like people with lower educations.(私は低学歴の人達が好きだ)」というトランプの発言に、集会に参加していた数千人の聴衆が拍手と歓声で答えたていた。
この低学歴、ゆえに低所得層の白人大衆であるアメリカ下層国民の気持ちを掴み、今まで一度も投票に行った事が無い人々を、トランプは惹きつけたと判断した。
これまで一度も組織化されることが無かった層が、トランプに触発された動き始めたと確信したのである。
安倍総理は、米大統領選で外務省が読みを外した事に対して非常に怒っているという。
米大統領選の前日と前々日の日本時間11月7日、8日と連続して、外務省トップの杉山晋輔事務次官が首相官邸を訪れ、「ヒラリー・クリントンが逃げ切ります、大丈夫です」と総理に請け合ったという。
ところが、日本時間の9日に、開票が始まり、トランプ優勢が伝えられ始めた事を知った首相官邸は、「もう外務省の説明は聞きたくない、CNNとNHKを見て情勢を判断する」と言っていたという。
大統領選期間中に訪米した安倍総理は、クリントンには会ったが、トランプはスルーしている。
当然、トランプ当選を想定していなかった外務省の助言を受けた上での行動であった。
トランプは共和党候補指名受諾演説でこのような演説をしている。
「私達が毎晩目にするニュースや朝刊では編集され、報道されない事実をそのままお伝えしましょう。
アフリカ系アメリカ人の子供の10人に4人近くが貧困状態にあり、アフリカ系アメリが人の若者の58%が無職。
オバマ大統領が就任宣言を行った8年前に比べ、現在貧困状態にあるラテン系アメリカ人の数は200万人も増加しています。
また、新たに1400万人が労働市場から完全に外れました。
世帯収入は、16年前の2000年から4000ドル余りも下がっています。
我が国の製造業における貿易赤字は去年だけでおよそ8000億ドルに達しました。これを正さねばなりません。
予算も同様の状態です。
オバマ大統領は、国家の債務を約19兆ドル以上に倍増させ、その額は今も増え続けています。
しかし、その代わりに私達は何を得たというのでしょう。
道路や橋は崩壊寸前、空港は第三世界並み、4300万人のアメリカ人が食料配給券で暮らしています。」
民主主義にこだわる人の多くが、ポピュリズムを非難する。
大衆層が自分達の超えを聞かせようとして、ある候補を押し上げる行動を、ポピュリズムと言って済ませる事はできない。これは民主主義だからである。
人々の不安や意思の表明をポピュリズムと言って切り捨てるべきではない。
民主主義とは、大衆が権力を持つ仕組みであり、ポピュリズムを否定するエスタブリッシュメントではない。
アメリカ大統領には、クリントンではなくトランプが選ばれた。
つまり、民主主義の国とは、国民を経済面で保護する国でなければならないのである。
自由貿易を世界に押し付けて来た国で、自由貿易に異議を申し立てる候補が政権に就くという事実は、思想的に極めて大きな事なのである。
米国では3分の1が高等教育を修め、そして4分の1が高等教育を途中で辞めている。
さらに5分の1が中等教育だけしか受けていない。
この教育格差が階層を形成してきたのである。
米国社会が民主的に思考していた時代は、誰もが読み書きができたうえで、高等教育を受ける人が、ごく僅かだった時代である。
そこには、教育という面では平等な大衆がいた。
現在の米国社会には、教育という面で大きな不平等がある。
一方では誰もが読み書きはできる、しかし他方で誰もが恐ろしく多様化してしまった教育レベルで差別化され、そのことがもたらす緊張が問題となっている。
エリートの富裕層はクリントンを支持した。
他方で、高等教育を受けていても一流大学を卒業してない層は、多額な学費の借金を背負っており、経済的な環境は耐え難く苦しい状況となっている。
米国における経済変化、自由貿易の進展は、受けた教育水準にかかわらず大多数の人々を苦しめているのである。
米大統領選挙で、黒人が支持したヒラリーではなく、白人が支持したトランプが大統領に選ばれた。
しかし、トランプが保護主義的な政策を取れば、それによって恩恵を受ける収入の低い労働者の最初のグループは黒人たちとなる。
自由貿易は不平等を進める経済的な仕組みであり、それが製造業での雇用を破壊したが、黒人たちは特にその業界で働いていた。
つまり自由貿易は黒人のコミュニティーも破壊し、漂流する若者たちり巨大な孤立空間を作り出した。
今回の大統領選挙自体は、白人デモクラシーという従来の枠の中に終始したが、保護主義という考え方の勝利は、米国黒人の社会にとって利益となる効果をもたらす可能性がある。
米国の人種差別撤廃の当初は、民主党も共和党も賛同していたが、その後、民主党は黒人を守り、その有権者の支持を得る政党へと徐々になっていった。
他方で、共和党は黒人の支持わ拒み、白人の支持を呼びかけ、その有権者の支持を集めて来た結果、真の白人政党となった。
福祉国家に敵対的な白人の政党という性格を持つことができたのは、福祉は黒人のためのものと示してきたからである。
これは経済的新自由主義(ネオ・リベラリズム)が普及するために重要なことであり、だから減税もできた。
しかし、トランプは共和党の支持者を、この反黒人という位置づけから抜け出させ、人種のようなシンボルではなく、最優先事項を経済闘争に変化させた。
しかし、民主党は完全に米国政治を人種的なものにし、「私たちこそ少数派、黒人やヒスパニックを代表している」と選挙戦を繰り広げ、黒人であることはとても重要な意味を持つと、人種に重心を置いた方針を継続させた。
黒人がクリントンに投じた票は、オバマの時よりも少し減ったが、その8割以上が民主党を支持した。
今回の米大統領選挙を総括すると、本当に民主的な結果ではあったが、やはり現在も白人の民主主義だということになる。
米国の民主主義はその始まりから、人種的だった。
最初は米国人とは英国人のことだった。
英国人は、平等についてフランス人ほど強いこだわりを持っていない。
しかし、19世紀の米国で平等の概念が発展し、大きな影響を持つに至った。
米国で平等の概念が花開いたのは、その外部に不平等扱いする対象を固定していたからで、それは先住民や黒人である。
この外部の人達がいることで、白人同士は平等になったのである。
米国では白人の間での白人のための民主主義が発展するのである。
米国では、1960年代半ばの人種差別撤廃の後も、人種問題から抜け出せず、依然として白人の民主主義国なのである。
アメリカ人の生活水準は、この15年で下がっているという。
米国の白人の45歳から54歳の一部で死亡率が上っているのである。
米国の有権者の中で、白人は4分の3を占め、この層は不平等や停滞をもたらしたのは自由貿易であり、それが世界中の働いている人をグローバル競争の中に放り込んだ、と理解している。
この自由貿易と移民の自由を問題にする候補者のトランプが大統領に選ばれたという当然のことが起きたのである。
つまりアメリカの有権者は全体として、理にかなったふるまいをし、それを結果に反映させた米国は民主主義国だという事である。
2017年はEU崩壊の年と言われている。
今年いよいよイギリスのEU離脱交渉が開始されるが、交渉はイギリスにとって厳しいものとなる事が予想されている。
また、2017年は欧州各国で選挙イヤーとなっていて、3月にオランダで総選挙、4月から5月にかけてフランス大統領選挙、9月にはドイツで総選挙が予定されている。
2017年はEUが発足してから60周年にあたる。
EUの基盤となった欧州連合条約(ローマ条約)が締結されたのが1957年で、2007年に大々的に「EU50周年」紀念行事が行われた。
EUは1957年の丁酉(ひのととり)に誕生し、2017年の丁酉に崩壊の危機を迎えている。
丁酉(火の鳥)は「フェニックス」、つまり不死鳥はその身を火に溶かし燃え尽きるが、その灰の中から再びよみがえるという。
日本銀行は、国債買入れ以外に、ETFを年間3兆円、J-REITを年間900億円買入れている。
ブルームバーグ社の分析によれば、異次元緩和政策の下で、日本銀行がETFを買い進めた結果、日経平均株価を構成する9割の企業で、日本銀行が実質的な大株主になっているという。
既に日本銀行は、日本株ETF全体の55%を保有している。
厚生労働省が2016年2月に発表した2015年の毎月勤労統計(確報値)によると、物価変動の影響を除いた2015年通年の実質賃金は、前年から0.9%減っている。
速報値と同じで、マイナスは4年連続となっている。
名目賃金にあたる2015年の現金給与総額は0.1%増と2年連続でプラスとなっているが、物価の伸びを下回っている。
実額を見ると、正規労働者の現金給与総額が40万8422円に対して、パート労働者の給与水準は9万7803円しかない。
しかも労働者全体に占めるパート労働者の比率は年々上昇しており、2015年は前年比0/66ポイント上昇の30.48%となり、過去最高水準に達している。
「同一労働同一賃金」とは、どうやら非正規労働者の賃金水準に労働者全体を合わせていくという事のようである。
2016年1月に、安倍総理は年頭記者会見で「この3年間で雇用は110万人以上増え、17年ぶりに高い賃上げも実現し、経費は確実に回復軌道を歩んでいる」と語った・
しかし、実際には安倍政権発足時の2012年10月~12月期と2015年の10月~12月期を比べてみると、非正規雇用者が172万人増え、その一方で正規雇用者は23万人減少している。
有効求人倍率も、総数ベースの全国平均では2015年11月時点で1.25倍になっているが、正社員に限ってみると0.79倍しかない。
そもそも有効求人倍率は企業の求人数を求職者数で割った数値であり、数値が上っているからといって、求人数が増えていると即断してはならない。
例えば、地方で上昇する有効求人倍率は、高齢者福祉や建設関係を中心に求人が増えてはいるが、それらの職を求める人は減っているのが実体である。
求職者数が減っている原因は、条件のよい仕事のある大都市圏への若者の流出である。
高他県では、2014年まで14年連続で県外への転出が転入を上回っている。
県内の仕事は非正規の割合が高く、正社員のみの求人倍率は2015年11月は0.56倍と、全国では沖縄県についで低くなっている。
2014年4月に、安倍政権は「防衛装備移転三原則」を閣議決定し、審査を経て国際平和と日本の安全に寄与すると判断された場合には、日本が武器を輸出することが可能となった。
2014年6月には、パリで始まった兵器や災害対策設備の国債展示会「ユーロサトリ」に、日本は初めてブースを設け、防衛産業を担う13社が出展した。
2015年5月には、日本で戦後初めての防衛見本市が、パシフィコ横浜で開かれた。
英国民間企業が主催したこの展示会は、「MAST」と呼ばれ、海軍関係で世界最大規模の見本市だが、防衛省と経済産業省の後援を受け、三菱重工、川崎重工などの日本企業も出展している。
マイナス金利政策を受け現金の量が増えた結果、日本ではタンス預金のための金庫が売れ、百貨店友の会への加入者が激増している。
マイナス金利政策をいた早く導入したスイスでも、最高額の紙幣である千フラン札(12万円)の発行が急増する弊害が目立ってきているという。
2016年1月28、29日の日本銀行の金融政策決定会合で、マイナス金利政策が決定した。
これまでにマイナス金利政策を導入してきた国は以下の通り。
 
デンマーク  2012年7月~
欧州中央銀行 2014年6月~
スイス    2015年前半~
スウェーデン 2015年前半~
日本     2016年2月16日~
ハンガリー  2016年3月~
こうしてみると、マイナス金利政策は、今や突飛な政策とはいえなくなっている。
長引く超低金利にもかかわらず、銀行の預金産高が増え続けている。
年間10兆円増のペースで過去最高を更新しており、2015年11月末時点で677兆円に達している。
日本銀行の調べによると、預金残高はこの20年で230兆円増え、増加額の9割は個人の預金によるものである。
日本は人口減少時代に入っているが、1人あたりの預金は増えている。
直近の2009~2014年の世帯あたりの増減をみると、全体の半数を占める60歳以上の高齢世帯は平均1351万円で1%増と7万円増えた。
一方で、60歳未満の現役世代は625万円で2%減と10万円減っており、特に40代の減少幅が大きくなっている。

2017年1月2日月曜日

悲観論者とは、情報に通じた楽観主義者のことだ

(インテリジェンス界の格言)
我々は得るものによって生計を立てるが、与えるものによって人生を作る。

by ウィンストン・チャーチル