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2015年9月11日金曜日

東京都は東京都心・臨海地域、品川駅・田町駅周辺地域、渋谷駅周辺地域、新宿駅周辺地域、羽田空港跡地を「アジアヘッドクォーター特区」に指定している。
そこで法人税の所得控除や法人事業税の全額減免を始めとする優遇措置を設け、条件を満たした場合の法人実効税率を26.9%にするとしている。
それによって、東京都は2016年度までに外国企業を500社以上の誘致を目指しているというが、2014年度に特区進出を決定した企業は8社にすぎない。
ヨーロッパの平均が25%であり、アジアでは香港が16.5%、シンガポールと台湾が17%であり、アイルランド並の12.5%くらいに下げねば、外国企業にとって魅力はない。
安倍政権は、法人税を減税する代わりに、企業に対して増えた利益を賃上げと設備投資に回すよう要求している。
しかし、人件費は元々コストであり、設備投資も減価償却という形でコストになる。
法人税はコストを引いた後の「純利益」に対して課税されるものなので、法人税を下げても、それで増えた利益は内部留保または配当にしか回せない。
むしろ経営者の心理を考えれば、法人税を上げられた方が、「税金で持って行かれるくらいなら、給料を上げたり設備投資をしよう」と節税対策を考える。
法人税減税に賛成している経団連のサラリーマン経営者は、企業会計の実務を知らないのだろう。
かつて企業の配当金は、額面50円の1株あたり2円とか5円というように、額面に対して配当していた。
昔は「配当性向」という言葉もあり、最終利益の3分の1を配当に回すと、配当性向33%と言われた。
これらは、いずれも機関投資家の影響力が弱かったから、企業側の論理で決められていた。
現在は「配当性向」という言葉を使ったら、株価は下がってしまう。
機関投資家は額面や利益ではなく、「時価」に対して配当するよう要求するようになったからである。
時価の3%が配当の世界標準になってきている。
日本企業の内部留保が320兆円まで膨らんでいる理由の1つが、「時価の3%の配当」を持続するための余力を持たねばならないからである。
東証1部上場企業の時価総額は550兆円に達しているが、その3%は16兆5000億円となり、数年分の配当余力を持つ為に、内部留保を積み上げているのである。
銀行には決済業務という役割があるが、その中核になっている「全銀システム(全国銀行データ通信システム)」の利用料を、NTTデータに毎年100億円も支払っている。
全銀システムは1973年に発足したオンラインのデータ通信システムで、日本の殆どの預金取扱金融機関が参加しており、1営業日平均で550万件、約11.3兆円の取引が行われている。
年間で13.5億件、約2700兆円の決済。
このコストは当然、預金者が負担する手数料によって賄われている。
安倍政権下では、起業の倒産件数がバブル期並みの低水準になっている。
東京商工リサーチの調査によると、負債総額1000万円以上の2014年の全国企業倒産件数は前年度比10.3%減の9731件で、1990年以来24年ぶりに1万件を下回り、負債総額も前年度比32.6%減の1兆8740億円と、1990年以来24年ぶりに2兆円を割り込んでいる。
上場企業の倒産も同じく24年ぶりにゼロ件となっている。
2009年12月から2013年3月末まで続いた「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」の期限切れ後も、中小企業のリスケ要請に銀行が応じているからである。
「残業ゼロ制度」は、年収1075万円以上で、高度な専門的知識を持つ専門職を対象に働いた時間ではなく成果で賃金を支払うというものである。
年収1075万円以上の根拠となったのは、労働基準法第14条で定められた有期労働の契約期間の上限を3年から5年に延長できる要件で、その対象となる専門職の年収が1075万円以上となっているため、これを残業代ゼロ制度に転用したという。
しかし、期間の定めのある有期雇用の要件を、期間の定めのない無期雇用の正社員が前提の残業代ゼロに転用するのは、そもそも無理がある。
残業代ゼロ制度は、企業社会の実態に即した明確な根拠はない。
人口減少問題で、日本が抱える最大の課題は戸籍制度にある。
戸籍制度があるかぎり、妊娠した場合には「できちゃった婚」をするか「中絶」をするか、生活が困窮するシングルマザーを選択するよう迫られる。
フランスや北欧では、40年前に個性を撤廃し、事実婚が社会的に認められている。
婚外子の割合(2008年)
日本      2.1%
フランス   52.6%
イギリス   43.7%
スウェーデン 54.7%
ドイツ    32.7%
アメリカ   40.6%
世界的に見れば、戸籍制度があるのは、中国、韓国、日本だけである。
日本の戸籍がいかに意味が無いかを示す好例として、自分の本籍地を皇居にしている人が300人ほど存在し、富士山山頂を本籍としている人も300人程度いるという現実である。
本籍地をどこに移しても許されるのであれば、戸籍制度の意味はない。
歴史的には、日本では「家」を基礎単位として、本家と分家が明確に分かれて、その関係性や序列が重視されていたが、現在は核家族化が進み多様な家族形態が存在し、結婚して家庭を持てばそこが登録すべき本籍となる。
それはすなわち住民票そのものであり、戸籍を登録する意味は無くなっている。
「国土交通白書2012年坂」によると、若い人の持家比率が低下している。
1983年から2008年の25年間で、30~39歳の持ち家率は53.3%から39%に、30歳未満の持ち家率も17.9%から7.5%に低下し、逆に40歳未満で民間賃貸住宅にスロ割合が、39.7%から59.7%に上昇している。
一方、総務省の家計調査によると、2012年に2人以上の世帯の持ち家率は81.4%となり、前年比で2.5%増と、4年ぶりに過去最高を更新している。
<家計主の年齢階級別持家世帯率> 
(総務省統計局「住宅・土地統計調査」)
        1973年     2013年
~24歳     11.4%      4.0%
25~29歳    26.0%     11.6%
30~39歳    48.2%     37.5%
40~49歳    68.7%     59.4%
50~59歳    76.6%     71.5%
60歳~     78.9%     79.8%
小池和男・法政大学名誉教授の調査によると、日本のサラリーマンの殆どが、自分の勤めている会社が嫌いだという。
具体的には、「自分の価値観と自分が勤めている会社の価値観が同じ」と思っている人は19.3%しかいない。
アメリカの場合は41.5%が一致すると答えている。
さらに、「今自分が働いている状況が、入社時に分かっていたら、今の会社に入ったか」という質問対して、日本では「入った」というのは23%しかない。
対してアメリカでは69%が「入った」と答えている。
つまり、日本の起業のサラリーパーソンの多くが自分の会社が嫌いで、終身雇用だし他に転職ができないから、仕方なく在籍しているという事が明らかになったという。

アベノミクスの幻想: 日本経済に「魔法の杖」はない