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2017年11月23日木曜日

2017年3月27日に、配偶者控除の適用上限を配偶者の年収103万円から150万円に引き上げる税制改正法案が成立した。
これによって、妻の年収が150万円までは夫の配偶者控除を受けられるようになった。
今回の配偶者控除の上限引き上げは、配偶者特別控除の拡充によって行われ、変更点はそこだけである。
つまり、夫の所得税に関しては変化はあるが、妻の所得税に関しては変化はない。
これまでは配偶者控除を受けようとするならば、妻に所得税がかからない年収103万円以下に抑えねばならなかったが、配偶者控除の上限が150万円に引き上げられても妻の年収が103万円を超えると、今まで通り妻には所得税がかかってくる。
しかも、妻の年収が130万円を超えると、厚生年金や健康保険の保険料も支払わねばならなくなる。
つまり、配偶者控除の適用上限が拡大したからといって、余分に働くと妻の税金や社会保険料が増えてしまう可能性が高い。
例えば、今回の制度改正に合わせて、妻が余分に働き、年収が103万円から150万円に増えたとすると、年収は47万円増えるが、同時に税金が3万7000円、社会保険料が22万5000円増えるので、手取りは20万8000円しか増えない。
余分に稼いだ金額の実に56%が税金と社会保険料で引かれてしまう。
政府が「150万円まで配偶者控除の適用が拡大される」と広報すれば、真に受けて働く時間を増やす女性は増え、税収と社会保険料が増えることになる。
仮に労働時間を増やす女性がいなくても、配偶者控除拡大の財源は、世帯主の年収が1120万円を超える専業主婦世帯への増税で確保されている。
だから、政府にとって配偶者控除拡大は、女性が労働時間を延ばせば延ばすほど収入が増えるという、政府が仕掛けた罠なのである。
超高齢社会が進む中、今後益々、医師不足は深刻になるのは明らかである。
国際医療福祉大学は、成田市が23億円相当の土地を無償貸与している他、建設費用の半分に相当する80億円を成田市と千葉県が負担している。
その大きな目的は、地域医療への貢献、すなわち医師不足への対応のためである。
獣医師不足の問題よりも、医師不足の問題の方が、国民にとってより大きな課題である。
ヤマト運輸は、2017年4月18日にサービス残業をしていた社員4万7000人に対して、総額190億円の未払い賃金を支給すると発表した。
この支払で、ヤマト運輸の営業利益が前期比で半減してしまった。
こうした事態を受けて、ヤマト運輸は、長時間労働の一員となっていた「20時~21時」配達時間帯を「19時~21時」の2時間枠に各隊するとともに、昼休みを取れるように「12~14時」の枠を6月中に廃止すると発表した。
また再配達受付の締切時間を20時から19時に1時間繰り上げた。
残業代を全額支払うようにすれば、おのずと働き方は変わるのである。
働き方改革を進めるために必要な事は、労働時間を規制するのではなく、残業代を全額支払い、もともと違法であるサービス残業を禁止すれば良いのである。
2016年7月の参院選で当選した議員121人の「資産等報告書」が公開され、1人あたりの平均資産額は2990万円と、3年前の選挙より780万円少なくなっている。
国会議員の資産額が少ないのには、カラクリがある。
今回の資産公開は、国会議員資産公開法に基づいて行われているが、法律上、資産公開に含めなくてもよい資産がいくつもある。
一つは「株式」である。
資産家の多くが、創業した会社がIPOしたり、親族から相続した株式が値上がりする事で資産を増やして行く。
国債などの債券は、資産公開の対象になっているのに、株式だけを公開しない理屈は通らない。
もう一つは「普通預金」である。
定期預金は公開対象だが、普通預金は公開しなくてもよい。
定期預金でも利息は殆ど付かないのだから、定期預金を解約すれば、資産を隠すことができる。
2011年にニコラス・ジャクソンの『タックスヘイブンの闇』という本が英国でベストセラーとなった。
この本によると、タックスヘイブンが保有する資産は、全ての銀行資産の半分、対外投資の3分の1にも達するとされている。
2016年4月14日に熊本地方を襲った地震は、甚大な被害をもたらした。
熊本には100年以上大きな地震が無かったし、政府の地震調査委員会もこの地域の30年以内の大地震発生率を「不明」と評価していた。
不幸中の幸いは、この地域に原子力発電所が立地していなかったことである。
ところが、2016年4月18日に、臨時会合を開いた原子力規制委員会は、鹿児島県の川内厳罰を運転停止する考えのない事を発表する。
しかし、今回の熊本地震は中央構造線として日本最大の活断層の一部で起きている。
断層のズレは3メートルに及び、その延長上に川内原発と伊方原発が立地している。
政府は2015年に2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)の中で、原発比率を20~22%にすることを決定している。
この水準は、いま生き残っている全ての原発を再稼働させるという事である。
第二次安倍政権が発足する直前の2011年度の法人税(地方税を含む)の実効税率は40.69%だった。
それが毎年引き下げられ、2017年度からの予定を1年前倒しし、2016年度から29.97%へ引き下げられた。
この5年間で10.72%も引き下げられたのである。
法人税率の度重なる引き下げで、法人は4兆2880億円もの減税となっている。
政府予算案で、基礎的財政収支の赤字が10.8兆円もある事を考えると、法人税減税を補う新たな税収が必要となる。
安倍政権発足後、労働市場で非常に興味深い現象が起きている。
労働市場に関わりのある15歳以上の人口を「労働力調査」でみると、安倍政権が発足した2012年から2016年までの4年間で1万人増とほぼ横ばいなのに、労働力人口は108万人も増えている。
労働市場には、労働力率(労働力人口÷人口)の上昇余地を残している層が3つあると言われてきた。
若年層、女性、高齢層である。
それぞれの層の4年間の労働力人口の増減をみると、若年層(15~24歳)は27万人増、女性(25~59歳)は60万人増、高齢層は90万人増となっている。
つまり近年の労働力人口増加の主役は高齢層だったのである。
高齢層の労働力率の4年間の増加ポイントをみると、60~64歳がプラス5.3%、65~69.歳がプラス5.8%、と60歳後半の労働力率が大きく上昇しているこが分かる。
政府は年金支給開始年齢の繰延に合わせて65歳までの継続就業を推進しているが、実態は既に70歳まで働く方向へ変化が起きているのである。
高齢者の労働力率上昇は、バブル期にも起きている。
つまり、人手不足が高齢者の働き口を開拓したのが理由である。
日本が高齢就業シナリオを採るためには、今後も人手不足の状態が続くように好景気を保ち続ける必要がある。
太陽光発電は、電力使用量が最も増える夏場の日中に大きな出力を発揮するため、福島原発事故以後、日本の原発が全停止するなかで、夏場の電力ピークを乗り切る事ができている。
しかし原発無しでも電力を賄えるという事態は、原発村の住人たちを慌てさせてしまった。
そこで、2012年度に全量買い取り制度が導入された際には単価40円から、毎年買取価格が切り下げられ、2017年度には21円と5年で半額となってしまい、支払っている電気代の単価よりも安くなった。
さらに2015年から無制限無補償の出力制限が導入され、電力会社の電気が余ったら太陽光発電を買取らなくなった。
政府がエネルギーは本計画で示した再生可能エネルギーの電源割合22~24%という水準に達していない現状で、太陽光発電への新規参入は失速してしまった。
2017年度の税制改正で、発泡酒、第三のビールの酒税を10年かけて一本化することが決まった。
現在、ビール類は350ml缶あたり、ビールは77円、発泡酒は47円、第三のビールは28円の酒税がかかっている。
これを2018年から三段階に分けて変更し、2026年には55円で統一するというのである。
現在の日本のビール類の税率は国際的に見て異常な高さとなっており、海外のビールの税金は、日本の第三のビールの税金よりもずっと安い。
また、発泡酒や第三のビールは、メーカーの努力により、プリン体ゼロ、糖質ゼロという機能を持つようになっており、世界的に健康志向が強まる中、日本のビールメーカーの国際競争力を高めるためには、ビールよりも機能性の優れた発泡酒や第三のビールの開発を強化すべきという面もある。
産業革新機構は資本金2800億円のうち95%を政府が出資している。
その他に1兆8000億円の政府保証枠が与えられているので、実質は政府そのものである。
投資決定は7人の産業革新委員が行う事になっているが、委員長だった吉川弘介氏は東大工学部長から東大総長まで務めた学者で、機構がシャープとの出資交渉から撤退を決めた当時82歳だった。
その他の委員は財界や医師などの有識者で構成され、その平均年齢は67歳だった。
業界の内情を理解している経済産業省の官僚が投資決定をした方がマシである可能性もある。
2兆円以上の税金を投入する意思決定をする現在の機構の体制を見直す必要がある。
2016年8月12日、台湾の鴻海精密工業は3888億円の出資金を支払いシャープを買収した。
シャープの経営再建のスポンサーは、鴻海と官民ファンドの産業革新機構が争っていた。
産業革新機構は3000億円出資に加え、2000億円の融資枠を設定し、主力取引銀行にも最大3500億円の金融支援を求めるというものだった。
一方、鴻海は7000億円規模の出資を行い、太陽電池事業を除いてシャープを分社せず、40歳以下の従業員の雇用を維持、役員交代を求めず、銀行にも追加融資を求めないというものだった。
圧倒的に好条件の鴻海の提案をシャープは選んだが、契約直後にシャープが提出した、今後3500億円もの債務が発生する可能性があるという「偶発債務リスト」でが原因で、支援条件を大幅に引き下げられてしまった。
しかし、偶発債務リストの中には「地震による津波で工場が被災する」といった発生確率の少ないものも含まれていた。
最終的に、鴻海の出資額は産業革新機構と大差のないレベルに大幅減額となり、高橋社長は退任、銀行も新たな融資枠を求められることとなった。
偶発債務リストの提出経緯については、今後徹底追及されねばならない。
2016年4月から電力小売りが自由化された。1995年から大型ビル群を対象に始まった日本の電力自由化が最終段階を迎えたことになった。
全面自由化がスタートした時点で250社超が新規参入し、1年後には400社以上に増えている。
新電力会社が乱立することで心配されるのが、電力供給の安定性であり、自由化で先行しているアメリカでは、カリフォルニアで大規模停電が起きてしまった。
日本では同様の事故が起きない仕組みになっている。
新しい電力会社と契約しても、実際に電気が流れてくるのは現在使っている送電網であり、万が一、新電力会社の設備が故障して送電がストップしても、他の電力会社がその分を供給する仕組みになっている。
また、新電力会社が経営破綻しても、一時的には割高な電気料金を払う必要はあるが、別の電力会社と契約するまでの短期間であり、電気が止まるという事はない。
しかし、携帯電話の自由化ほどの大幅な割引をする新会社が存在しない。
携帯電話が最初に登場した1979年には基本料金が月額3万円、通話料は6.5秒で10円だったが、最近ではかけ放題の通話料込みで月額1000円を切るプランまで登場している。
理由は、携帯電話と違い電気を作るのに大きなコストがかかるからである。
携帯電話は、アンテナ網のインフラ整備が一度できれば、加入者を増やしても変動費は大きくない点が、電力供給と決定的に異なる。
今後、原発か゜再稼働していくと、既存電力会社の発電コストが大きく下がっていく。
福島第一原発の事故以来、既存電力会社は厳罰の停止によって、3割ほど電気料金を引き上げている。
原発が再稼働した場合、新規参入組の電力会社は料金面で対抗が厳しくなる可能性もある。
競争の結果、生き残れる新電力会社の数が少ないことは十分予想できる。
2017年2月10日に行われた日米首脳会談で、通商関係に関して、麻生財務大臣とペンス副大統領の下に置かれる「日米経済対話」の枠組みで行われることになった。
通常、通商関係の交渉は経済産業大臣の所管であり、この枠組みの異常さを感じる。
今回の首脳会談には当初同行予定だった世耕経産大臣は同行させず、アメリカ側は麻生財務大臣の同行を強く求めたのである。
麻生大臣の下で通商交渉を行うことで、アメリカ側には2つのメリットがある。
一つは通商交渉に手慣れた経済産業省の官僚を遠ざけることができ、もう一つは通商交渉の場面で為替を人質に取ることができる事である。
為替介入の実行者ゆ日本銀行だが、指示をしているのは財務省であり、第二のプラザ合意という脅しをかけてくる可能性がある。
米韓FTAの締結によって、畜産や医療の分野で大きな被害が出ていることを考慮すると、今後の二国間交渉の中で、TPPよりも更に踏み込んだ譲歩を迫られる恐れもある。