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2016年3月22日火曜日

IMFは2013年8月に、日本経済の分析や政策提言をまとめた年次審査報告書を公表したが、それによると「アベノミクスが成功するためには、より具体的な成長戦略と信頼できる中期の財政再建策が不可欠」とし、日本政府に対して増税を勧告している。
IMFは日本の消費税を15%まで引き上げるべきと、かねてより韓国しており、その勧告を踏襲した。
IMFには日本の財務省から出向者が出ている事を考えると、IMF勧告はある意味では、財務省の意向なのである。
消費税によって増える歳入が本当に社会福祉目的に使用されるという保証はない。
アダム・スミスは、国債を将来的には国民が負担するので、「税金手形」であると述べている。
現在の日本の国債利払費は10兆円であり、消費税に換算すると5%に相当する。
つまり、日本国民は既に消費税を13%(8%+5%)も払っているのと同じ状況になっている。
欧州諸国の付加価値税(VAT)と同じく20%まで引き上げると、年収300万円以下の世帯では年間40万円、年収500万円の世帯では年間60万円の負担増になると試算され、国民の生活は崩壊することになる。
消費税は逆進性が強く、年収が低い世帯ほど負担が増える。
増税前に第一生命経済研究所が試算したところによると、2015年の負担増は日本人の平均年収である年収450万円~500万円世帯で、年間21.6万円(年収比4.8~4.3%)、年収1250万円~1500万円世帯では37.6万円(年収比3.0~2.5%)となっていた。
消費税が5%から8%へ、3%の増税となったが、倍率で見れば1.6倍であり、増税率は160%だったのである。
消費税を10万円払っていたのが、16万円払わねばならなくなったのである。
また国税庁が公表した2014年度の税金の滞納状況によると、消費税の新たな滞納額は3294億円と、前年度比で17%増となっている。
所得税や法人税の滞納額は逆に減っているので、いかに消費税の影響が大きかったかが理解できる。
消費税の滞納者の多くが中小・零細企業の小売店やメーカーなどの下請け事業者であり、増税分を転嫁できないので、自腹納税額が増える結果となったのである。
次の8%から10%への消費税増税は、増税率「125%増」であり、5%の時からすると増税率「200%増」になる。
日本の新聞の発行部数は毎年下降を続けており、どこまで落ちるか予測が付かない状況となっている。
新聞の部数は一般社団法人日本ABC協会が毎月発表しており、2015年8月の主要新聞の発行部数は次の通りになっている。
朝日新聞 678万3437 (前年同月比▲40万8840)
読売新聞 910万1798 (前年同月比▲13万2046)
毎日新聞 324万8393 (前年同月比▲5万5430)
日経新聞 272万6561 (前年同月比▲3万7422)
産経新聞 159万9127 (前年同月比▲1865)
この中には販売店に配送されるが実際には破棄される新聞である「押し紙」が3割に上ると言われるが、カウントされていない。
その点でABC協会の部数は、実売部数とは言えないが、中央紙(朝日、読売、毎日、日経、産経)と地方紙を合わせて4000万部もあり、それでも部数から見た日本の新聞の影響力は大きい。
いずれにしても、消費税の増税は、新聞社の経営を圧迫する。
ちなみに「押し紙」に対しても消費税はかかるために、その負担は大きなダメージとなる。
ジャーナリストの河内孝が『新聞社』(新潮選書、2007年)で試みた試算によると、消費税の2%アップにより、読売新聞は109億円、朝日新聞は90億円の負担増となったという。
だから新聞社は消費税の増税に対して政府批判をせずに、自分達だけ軽減税率の措置を受けようとするのである。
2015年4月15日に発表されたアメリカ財務省の国際資本統計で、日本が米国債保有で中国に代わって再びトップになった事が判明した。
2015年2月末時点で、日本の米国債保有額は1兆2244億ドル、中国が1兆2237億ドルとなった。
アメリカ財務省が2014年9月に発表した2014年7月末時点の日本の米国債保有数が1兆1354億ドルだったので、半年間で日本は900億ドルも米国債を買い増したことになる。
2014年は消費税が8%へ増税された年であり、消費税の1%アップは2兆円の税収増となるので、日本国民は6兆円を政府に納税した。
しかし、この引き揚げた消費税分の6兆円よりも多くの米国債を日本政府は購入しているのである。
日本は米国債を売却できない事になっており、さらには購入した米国債が満期を迎えるたびに、償還されたドルで再び米国債を購入することになっているので、アメリカは日本におカネを返さなくてもよい。
実際に日本がどれだけ米国債を抱えているのか明らかにされていない。
日銀のWebサイトでも、米国債の保有残高が公開されているが、それは米国債のうち為替介入に購入された短期物に限った数字となっており、長期物の保有額は公表されていない。
「貨幣数量説」には有名なアービング・フィッシャーの交換方程式があり、世の中に流通している貨幣の総量とその流通速度が物価の水準を決めるとされる。
M(流通量)×V(貨幣流通速度)=P(物価)×Q(総支出量)
Mは中央銀行が市中に供給するマネーストックであり、Vは貨幣の流通速度、Pは物価、Qはモノの取引量である。
つまり、中央銀行がMを増やせば、VとQが一定ならばPが上昇すると考える。
しかし、不況期にはV(貨幣流通速度)は落ち、おカネの巡りが悪くなっているので、いくら中央銀行がマネーストックを拡大しててもVまでには影響を及ぼすことはできない。
単純にMを増やしただけではPは上がらないし、Mの中でも中央銀行が操作できるのはマネタリーベースだけであり、マネーストックも増えると考えるのは短絡的すぎる。
経済記事に「日銀はこれまで大量の円を刷って市場に供給してきた」とか「量的緩和により市中はおカネでジャブジャブになった」と書かれてきた。
そして、市中に大量に供給された円により、株価が上がり、企業の設備投資も増え、景気が回復してきたと解説されてきた。
しかし、メディアが報道してきた「量的金融緩和」によって市中のおカネの総量は増えていない事は、日銀のバランスシートを見れば分かる。
バランスシートは「資産」と「負債」を示すが、異次元緩和で資産とされる「国債」を日銀は増やしてきた。
日銀の国債保有残高は異次元緩和が始まる以前の2013年3月末には125兆円だったが、2015年3月には200兆円を上回り、2015年8月には306兆円に達している。
「負債」の方は、現金は100兆円で殆ど増えておらず、「日銀当座預金」が大幅に増え、2013年3月末の58兆円から2015年8月には231兆円となっている。
懲罰的なマイナス金利が実施されるまでは、日銀当座預金の超過準備部分に対して0.1%の金利を付けていたので、金融機関は日銀にブタ積みされてままで、いくらマネタリーベースを増大させてもマネーストックは殆ど増えなかったのである。
資金需要が無いのに、異次元緩和をしてもおカネの行き先は無かったのである。
日本のデフレ不況が人口構成の変化から生じており、構造的な要因であると指摘した『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』(藻谷浩介)というベストセラーがある。
藻谷氏は、デフレと不況を同義にしてしまい、デフレの原因を人口減と高齢化による需要不足としてしまった。
人口減と高齢化は不況の原因となるが、デフレの原因ではない。
モノに対する需要不足がデフレを招くという考え方は、現在の経済学では否定されている。
しかし、日本経済の衰退、不況の原因は、人口動態を見れば説明ができる。
国際決済銀行(BIS)が2015年3月18日に公表した調査報告書によると、デフレと経済成長率の関連性は薄い事く、経済成長率は資産価格デフレとの関連性の方が強いとしている。
38の経済を1870年までさかのぼって調査した結果、デフレは全期間の18%で発生していたが、経済成長率が大きく低下したのは1930年代初頭に米国で起こった大恐慌の時だけだったという。
そして、デフレが債務問題の悪化につながったという証拠はないと指摘している。
多くの中央銀行が利下げを正当化するために、デフレが景気に深刻な打撃を与えるとの主張を展開しているが、このような見解に疑問を投げかけている。
報告書ではデフレが続いた日本経済について、人口の伸び悩みと急速な高齢化が経済成長の重しとなったと分析しており、デフレと経済成長の関係を分析するには、人口要因を綱領する必要があるとしている。
アメリカでは1789年から1913年まで100年以上に渡ってデフレが続いたが、このデフレの下でアメリカ経済は成長を続け、ついにイギリスを凌駕し、世界の覇権を奪ってしまった。
2004年にミネアポリス連邦準備銀行のアンドリュー・アトキンソンとパトリック・J・キホーが発表した論文「デフレと布教は実証的に関連するのか?」によると、歴史的にはデフレの時の方が好況だったという。
この論文では、世界恐慌時の5年間を除いた1820年~2000年に渡る世界の主な17カ国の各5年間の平均実質経済成長率とインフレ率を調べた結果、全595例のうちデフレの事例は73例あったが、デフレと不況を同時に経験したのは僅か8例に過ぎなかった。
また、不況の事例は29例あったが、そのうちデフレであったのは8例しかなく、インフレであったのは21例もあった。
つまり、デフレと不況の関連性は全くなく、デフレ期の9割近くは好況と重なっており、経済成長していたという。