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2015年11月21日土曜日

元日銀理事の早川英男氏は、2015年7月3日の講演で、「日本の量的緩和は8割方失敗に終わる。長期金利の急騰より前に、円が急落する可能性が高く、政府は日本人資産の海外逃避を防ぐために資本規制に踏み切らざるを得ない」と主張している。
資本規制とは、銀行窓口の閉鎖やATMの預金引き落とし制限、海外への送金禁止などが起こることである。
そして2016年の後半には、そのような事態が訪れるという。

市中のお金の量は、市中に流通している紙幣と金融機関が日本銀行に預けている当座預金残高の合計である「マネタリーベース」で表される。
1990年代のマネタリーベースは40兆円で、2001年に日銀が「倍増して80兆円にする」と発表した時、市場は驚愕したという。
それが2013年3月の黒田バズーカー発射直前で、135兆円にまで膨らんでいた。
アベノミクスにより2013年4月に発射した第1回目の黒田バズーカーで「2014年末までにマネタリーベースを135兆円から270超円にまで倍増する」と発表し、2014年10月の第2回目のバズーカーで、「マネタリーベースが年間80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」と発表した。
今や2015年6月末で、325兆円にまで膨らんでいる。
2010年のG20トロント・サミットで、他の国々が累積赤字の対GDP比をこれ以上悪化させないとか減少させるという目標の中、日本は「2020年度までにプライマリーバランスを黒字化する」という超大甘な国際公約で勘弁してもらった。
日本のプライマリーバランスは、21世紀に入ってからずっとマイナスの状態で、2014年度は対名目GDP比で▲4.4%と、よほどの奇跡が起こらないと達成できそうにない。
2015年7月に内閣府が経済財政諮問会議に提出した「中長期の経済財政に関する試算」によると、アベノミクスが成功して、今後5年間、名目GDPが3%以上、実質GDPが2%以上の成長が続くとする「経済再生ケース」でも、2020年度のプライマリーバランスはマイナスであり、2015年度の16.4兆円の赤字から縮小されるものの6.2兆円の赤字となる。
http://www5.cao.go.jp/…/k…/minutes/2015/0722/shiryo_03-2.pdf

この超プラス思考の試算では、実質GDP成長率2%以上が5年間続く前提となっているが、IMFの試算では日本の潜在GDP成長率は0.5%~1%とされている。
潜在成長率とは、資本、労働力、生産性ほ最大限稼働して達成可能な成長率であり、中長期的な成長率の天井となる。
日本の労働人口は毎年2%ずつ減っているので、潜在成長率を2%に引き上げるには、生産性をアメリカの2倍に引き上げねばならない。
いよいよ今後、日本では一家に一法人、さらには国民一人に一法人の時代到来の予感がする。
日本では、生きているヒトに対する所得税、相続税、社会保険料が上昇する一方で、法人税率だけが低下する。