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2017年1月22日日曜日

「異次元の質的量的緩和」政策は、日銀当座預金を極大化すればお金が銀行間市場から市中に流れるという発想に基づくので、日銀当座預金残高の極大化政策である。
一方で、「マイナス金利」政策とは、日銀当座預金残高が大きいとペナルティーを科すというので、日銀当座預金残高の極小化政策である。
つまり、この2つの政策は真逆であり矛盾する。
マイナス金利政策を採用するならば、まず異次元の質的量的緩和で極大化した日銀当座預金残高を元の規模に戻し、それから極小化をさせるのが筋である。
しかし、極大化した日銀当座預金残高を元の規模に戻す方法はない。
さらに、黒田総裁は2016年9月21日の金融政策決定会合で、「マイナス金利付き質的量的緩和」という新たなキーワードを作りだした。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2014年)によると、2人以上世帯の場合の持ち家率は全国平均で74%となっている。
これは米国の69.1%(2004年)、韓国の55.6%(2005年)、スウェーデンの38.7%(2004年)などと比べてもかなり高い水準といえる。
戦後の日本は圧倒的に住宅不足の状態からのスタートだった。
1945年11月に設置された戦後復興院の試算によると、国内の住宅不足は420万戸だった。
具体的には空襲による焼失が210万戸、戦時中の供給不足が118万戸、海外からの引揚げ者による需要が67万戸、強制疎開による取り壊し住戸が55万戸の計450万戸に対し、これから戦死による需要減の30万戸を引いた420万戸が不足しているというものだった。
70年後の現代の日本は完全な住宅余剰時代を迎えている。
2013年の総務省の「住宅・土地統計調査」によると国内の総住宅数は6063万戸、そのうち空き家数は820万戸と、8軒に1軒が空き家という事態が生じている。
しかし住宅は未だに毎年100万戸が供給されている。
東京都豊島区は2014年5月に、日本創成会議から「消滅可能性のある自治体」して23区で唯一名指しをされた。
豊島区は全世帯に占める単身世帯の割合が56%であり、また住宅総数に占めるワンルームの割合も40%となっている。
池袋や大塚には築年数が経過して競争力を無くしたワンルームマンションが多数あり、その中に空き室を多く抱えたマンションも多く、深刻な問題を引き起こしている。
大手ゼネコンが施行した物件であれば、必ずしも安心という訳ではない。
大手ゼネコン施行といっても、実際には大手ブランド名は「冠」でしかなく、実際の施工は下請け業者が行うことになり、これらの業者を現場監督が率いねばならない。
大手ゼネコンには優秀な現場監督が多くいると思うのは早計で、大手ゼネコンほど優秀な監督はオフィスビルなどの大型案件に投入される。
そもそもマンション工事はあまり儲からない工事であり、大手ゼネコンは引き受けたがらないのが、実態なのである。
マンション竣工後のトラブルの発生時に、「大手の施行だから安心だと思ったのに」というクレームが意外と多いのは、こうした理由が背景にある。
不動産のプロの間では「マンションを買うなら築7、8年ものを買え」という格言があるという。
マンションの多くが鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造で、コンクリートは水分を含み、10年近くに渡って水分を外へ放出していく。
マンションは機密性が高いため、この水分の放出が結露の原因となり、カビの大量発生にもつながる。
建物はおおむね7~8年経過すると、不具合はほぼ出尽くし。必要な修繕や更新なども、管理の良い分譲マンションであれば施されるので、修繕記録を閲覧することでチェックが可能となる。
7、8年物であれば、ある程度の問題が明らかになった上で、まだ建物や設備が劣化する前であり、新たな追加の修繕負担を求められることなく、建物として安定した物件を選べるというメリットがある。
日銀が長期金利を下げる事でメリットがあるのは、日本政府のみのようである。
景気対策と称して政府の財政を助け、政府の資金繰り倒産を回避するのが目的としか思えない。
〇メガバンクの貸出金の残存期間別残高(2015年9月末)
          A行     B行     C行
1年以下の貸出   38.3%    15.6%    39.1%
1年超の貸出    
 うち変動金利   50.1%    75.0%     49.0%
 うち固定金利   11.6%     9.4%    11.9%
メガバンク3行は、短期金利に連動する1年以下の貸出と変動金利の残高の方が圧倒的に多い。
つまり、長期金の低下は民間部門の経済活動への影響は殆どないのである。
民間には好影響を与えていない日銀の長期国債の爆買いによって、量的緩和の出口は無くなっている。
中央銀行のB/Sの大きさについて、金融史が専門のハーバード大額のファーガソン教授は「1950~80年は中央銀行の肥大化がインフレと深く関わっていた。1900年以降、主な中央銀行の資産規模はGDPのほぼ10~20%だったが、現在のFRB、欧州中央銀行、英国中央銀行は約25%で歴史的に見て高い水準にある」と警告している。
ちなみに、日銀の資産規模の対GDP比は、1998年当時の15%から、2016年には90%にまでになっている。
2016年9月21日の金融政策決定会合で、日銀は「異次元の量的緩和を長期化し、長期金利を0%に誘導する」と宣言したので、この数字はさらに巨大化することになる。
「短期金利は中央銀行がコントロールし、長期金利はマーケットがコントロールする」という金融の教科書に挑戦すると宣言したのである。
黒田日銀総裁は、「通貨発行量の不足がデフレ時容態を招いている」と判断して、異次元の質的量的緩和を行い、その結果、国力に比べて余りにも過剰な通貨量を供給してしまった。
さらに、質的緩和の部分で、「10年債、30年債」という長期国債の購入を増やしてしまった。
つまり、日銀は通貨量をコントロールする手段を放棄してしまったことになる。
短期国債なら満期待ちにより、満期時に国債を国に返還し、現金を受け取り、日銀にある国の当座預金残高を減らす方法がある。
これに対して、長期国債は満期までの期間が長く、満期待ちができないため、保有高を戸来には市中に売却する必要があるが、国債が暴落し長期金利が暴騰した後にならないと、買い手は現れない。
日本では2000年位まで、貨幣供給量は経済成長に合わせて極めて適切なペースで増加していた。
貨幣供給量とは「発行銀行券残高」、「日銀当座預金残高」、そして相対的には微々たる「政府発行硬貨」である。
2000年3月末時点では、発効銀行券残高は54兆円、日銀当座預金残高は6.8兆円と、発効銀行券残高の方が大きかった。
2016年8月末時点では、発効銀行残高が96兆円なのに対して、日銀当座預金残高が303兆円と、日銀当座預金残高が発行銀行残高の3倍にもなっている。
2000年から発行銀行券残高は1.8倍にしか増えていないのに、日銀当座預金産高は45倍となり、その結果、貨幣量は6.6倍にもなっている。
この20年間で日本の国力である名目GDPは、全く伸びておらず経済規模は変わらないのに、貨幣量6.6倍という、この伸びは恐怖を感じる。