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2015年3月25日水曜日

アメリカでは1990年代に「物価連動国債」が発行された。
物価連動国債とは、物価に連動して価格が調整される国債のことである。
この物価連動国債によって、マーケット参加者が考える予想インフレ率の平均が分かる。
例えば、10年物の物価連動国債を発行すると、その物価連動国債の利回りが出る。
これと普通の10年物国債の利回りの差を出汁、それを10年間で平均したものが予想インフレ率となる。
アメリカはその数値を金融政策の判断に参考にできると考えて、1年債、3年債、5年債など様々な物価連動国債を発行しており、それぞれの期間の「予想インフレ率」を算出できる。
アメリカでは、物価連動国債が国債発行額の4分の1の規模にまで達している。
日本でも2003年に初めて10年物の物価連動国債が発行されたが、2008年9月のリーマン・ショックを機に、発行が停止されてしまった。
ちなみに、リーマン・ショックを機に物価連動国債の発行を停止した国は日本だけである。
第二次安倍内閣の発足後、2013年に物価連動国債の発行が再開され、予想インフレ率が可視化された為、日銀は予想インフレ率を見ながら金融政策の判断をしている。
経済は予測インフレ率で動いており、予想インフレ率は実質金利に影響を与える。
実質金利=名目金利-予想インフレ率
企業経営者の先優予想を調査しているのが、3ヶ月毎に発表される「日銀短観」で、各企業が3ヶ月後の業況を予想し、それが数値としてまとめられている。
この日銀短観の調査に、2014年3月から「企業の物価見通し」という指標が加わり、1年後、3年後、5年後の物価上昇率を予測している。
企業の投資判断に影響を及ぼすのは、実質金利であり、投資行動を左右するのは、将来の予想である。

消費税の性格から見ると、消費税は社会保障財源にはなりえない。
税理論からすると、国は所得再分配機能を担うので、税源は各人の能力に応じて払う「応能税」が適している。
一方、地方は公共サービス機能を担うので、税源は各人の便益に応じて支払う「応益税」が適している。
消費税は徴税コストが少なく、安定財源であるので、本来は地方税にするのがふさわしい。
実際に、分権が進んでいる国では、消費税は地方の税源になっている。
社会保障は所得再分配政策であり、国の業務部分が多いので、地方の税源であるべき消費税を税源にしていない。
財政破綻論者は、金利について片側しかみていない。
名目金利(長期金利)は大体、名目GDP成長率とほぼ同じくらいになる。
つまり名目金利が上昇する時には、もう一方で同じ程度の率で経済成長が起こり、実体経済が良くなっているのである。
経済成長が起こると、税収が増え財政収支は改善され、財政健全化に向かっていくので、破綻することはない。
財務省のサイトの中に「財務大臣になって財政改革を進めよう」というシミュレーシヨンゲームがある。
このゲームでは中期財政計画(2013年8月)における政府の財政権限化目標が基礎となっている。
ゲームには、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、2015年までに赤字半減、2020年までに黒字化するという2つの目標がある。
しかし、健全化の手法について、歳入の増額と、歳出の削減しか選択肢がなく、結論として「増税を認める」か「社会保障を減らす」かのどちらかを選ばないと目標を達成できない。
「経済成長による税収増」、「増税による景気低迷に伴う税収減」という事は考慮されていない。
私が大臣になると、「目標を達成することができませんでした。行政サービスの停滞など、将来世代に更なる負担を残す事になりました」というメッセージが出て、高齢者が苦しんで、学校が廃校になり、山火事が消せず、交通事故が多発する恐ろしいイラストが出てくる。
つまり、「こんな悲惨な状況を避けるは、増税しか選択肢はない」という国民教育のツールなのである。

経済理論の中に「課税の標準化(タックス・スムージング)」という考え方があり、課税のインパクトを薄く延ばすことが重要だということである。
今回の復興税のように、一度にある特定の世代に課税して賄おうとすると、震災のショックと増税による経済への悪影響によて二重のショックを与えることになる。
従い、東日本大震災のような大災害の場合は、増税ではなく国債を発行すべきである。
仮に100年に1度の震災であれば、100年債を発行し、100分の1ずつ時間を分散して償還していくのである。
物価統計といえば、総務省の消費者物価と日銀の企業物価が代表的なものだった。
総務省では、8000世帯に毎月、家計思慕の記入を依頼し、それを集計した家計調査を行っている。
家計調査から支出額の多い588品目を指数品目として採用し、品目については毎月同じ銘柄のものを調査する。
これらを集計して消費者物価指数を月に1回公表している。
総務省統計では、品目を5年に1度しか改訂しないので、物価が安くなって消費が増えた品目は相対的に過小評価となり、この上方バイアスにより真の値より高めに出る可能性がある。
しかし現在は、スーパーなどの民間企業ではPOSシステムのデータを集計して分析し、営業管理に活用している。
このPOSデータを使用して、東京大学が毎日「日次物価指数」を公表している。
POSデータなので総務省統計のように調査する品目を決める必要がないので、上方バイアスが少ない。
ただし、東大日次物価指数は、全国300店舗のPOSデータであり、スーパーやコンビニで扱う商品だけなので、総務省統計と異なり、全ての物品をカバーしているわけではない。
家電などの耐久消費財やサービスは対象外で、カバーしているのは総務省統計の17%程度であり、消費税抜き価格になっている。

財政破綻の確立を確認する経済指標として、国債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の先物商品がある。
各国の国債が破綻した時に、手持ちの国債の損失を保障してもらう保険料のようなもので、そのレートが低いほど安全である。
この指標は格付会社の恣意的な格付けと異なり、金融機関が身銭を切って市場で取引しているものなので、客観的な指標である。
2015年3月末現在、米国0.14%、英国0.20%、独0.16%、日本0.37%、仏0.41%、ギリシャ20.32%となっている。
この数字が50%であれば、2年間保険料を払うと破綻した時に補償してもらってトントンとなり、2年に1回破綻するといってもよい。
日本の数字は、270年(1÷0.37=270)で1回デフォルトがあるかないかの程度である。
この指標を知っておくと、日本の財政破綻が近いかどうかが判断できる。
もし今、10年以内に日本が破綻すると考える人は、0.37%の保険料を10年間払い続ければよい。
3.7万円支払えば、日本の国債が償還不能になったら、100万円手に入り、27倍の儲けとなる。

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