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2017年1月29日日曜日

スコットランド生まれのイギリス人であるアダム・スミスは1776年に『国富論』を執筆したことで、経済学の生みの親となった。
アダム・スミスは哲学者であり、文筆家であり、政治評論家で、政治活動家だった時期もある。
経済社会のより良きあり方を模索し、市井の人々を幸せにできる世の中の姿を追い求めた果実として『国富論』が誕生した。
なぜ、世のため人の為のことを思ったアダム・スミスの著書が『国富論』などというタイトルなってしまったのは、日本語への翻訳とタイトルの省略が原因である。
『国富論』の原題は『An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations』であり、これをそのまま日本語に訳したのが『諸国民の富の性質と原因に関する研究』という邦題で、当初はこの題名が使われていたが、ある時から『国富論』に省略されるようになってしまった。
これについては原題側の責任もあり、フルタイトルが長すぎるので、次第に『The Wealth of Nations』と省略されるようになり、日本語版も短縮され、当初は『諸国民の富』となっていて、基本的に原題の省略形に忠実で、英語のnationは国民を意味しており、決して国家ではなかった。
ところが、富国強兵路線を目指していた明治期のある時にこの『諸国民の富』が、『富国論』と書き換えられた。
その後、さすがに『富国論』では原著の趣旨に反しているということで『国富論』への改名が行われた。
『富国論』よりは『国富論』の方がセンスはいいが、どちらにしても国民よりも国家が前面に出てくるニュアンスになってしまった。