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2016年1月19日火曜日

アメリカのデラウェア州には、2013年の人口91万人に対して、100万社以上の法人が登記されている。
これは米国の株式公開企業の50%以上、また米国大手企業のフォーチュン500の実に64%に及ぶ。
しかし、デラウェア州の法人税率は、全米ベスト10入りするほどの高税率である。
デラウェア州が法人を引き付ける理由は、州の会社法にある。
会社の設立手続きは数日で完了し、費用面で格安で、届け出には会社名と設立年月日、登録代理人だけでよく、会社の帳簿は州内に置く必要がない。
取締役は1人でもよく、法人でも良い。
株主総会、取締役会は州外で開催してもよく、地域的な制限はない。
経営者に対する株主代表訴訟で発生する損害賠償責任は、会社定款で制限することができる。
LLCはパス・スルー税制により法人課税されないので、出資者が米国に居住していない非居住者の場合は、税金は米国内で生じた所得にしか発生しない。
また、デラウェア州に法人を設立し、そこへ商標権や特許権のような無形資産を移転した場合、ロイヤリティや使用料などの利益にデラウェア州は課税しない。この無形資産にはなぜか貸付金も含まれている。
従って、使用料を受け取るデラウェアのLLCは無税である一方で、使用料の支払い側ではその額は経費扱いとされ、課税所得を低く抑える事ができる。
そして、使用料を受け取ったデラウェアのLLCが使用料支払い法人に高利で資金を貸し付けた場合、その貸付で生じる利息収入は、デラウェアのLLCでは無税扱いであり、利息を支払う側では経費となり、納税額を圧縮できる。
このように、デラウェア州では、米国内でも租税回避の起点となるとともに、富裕外国人などの非居住者や外国法人の隠れ蓑として利用可能な制度が用意されている。
オフショアセンターの規模について、いつくかの推計がある。
TJN 11.5兆ドル オフショアの個人資産
IMF 1.7兆ドル オフショア経由のポートフォリオ投資
しかし、個人資産についての他の推計では、8兆ドルとするものもある。
租税回避地として認識されている国と地域の多くが、英国ないし英国王室と何らかの関係がある。
英国王室との関係は、英連邦、英連邦王国、英国王室属領の3つに分類される。
英連邦は、英国本国とかつて植民地であった独立主権国家から構成され、インド、シンガポール、オーストラリア、南アフリカなど53カ国。
英連邦王国は、英国国王を自国の国王に頂く英国連邦加盟国のことで、英連邦王国は英連邦に含まれる。
英国王室属領は、イギリス国王の直轄地で、極めて高度な自治権が認められており、英国の法律は原則で適用されないため、英連邦には属さず、独自の憲法すら制定している。
英国王室属領は、英国政府からの財政的支援は受けておらず、英国政府は王室属領の安全保障上の責任は負うが、そのための防衛・外交に関する経費は王室属領が自ら負担している。
他にも、英国には王国属領と同様に自治権を有する特殊な地域が存在する。
現在ロンドンを管轄する地方自治体「Greater London Authority」の行政機関の下に、行政単位として32の区がある。
しかし、これらとは別に中世のロンドン旧市街にあたる地区を管轄する「City London Corporation」という別の行政機関が存在し、特殊な自治権を有している。
ここは「シティ」と呼ばれ、ロンドンの金融街であり、シティはマグナ・カルタをイングランド国王だった「失地王ジョン」に承諾させて以来、自由と自治の根拠地となって以来、自治都市なのである。
伝統的に英国国王がシティに立ち入るには、事前にロンドン市長ではなくシティのロンドン市長の許可が必要となる。
1950年代には米国の国家税収の3割を占めていた法人税収入は、2009年にはたった6.6%にまで落ち込んでいる。
2011年には、米国の総税収のうち、法人税は9%、所得税は37%となっている。
ちなみに日本の場合は、法人税12%、所得税は18%である。
NPOのCTJ(Citizen of Tax Justice)は、フォーチュン500にランキングされた米国大企業のうち2008年から2012年の5年間に継続して高い収益性を上げた288社を調査した報告書を公表しており、下記の事は判明した。
・この5年間に288社の法人税の実際の負担率は19.4%しかない。
・288社のうち、ボーイング、GEなど26社はこの5年間、全く法人税を支払っていなかった。また96社の実際の負担率は10%以下だった。
・これらの企業のうち海外で利益をあげている企業の3分の2強が、米国本国よりも外国政府へ多くの法人税を支払っていた。
・Appleは米国国内の利益に対して36.5%の法人税を支払っていると主張するが、海外利益に対する税率は3.4%でしかない。
・Googleは、米国国内での利益に47.4%の税率を支払う一方で、海外利益の税率は3.3%に過ぎない。
・Microsoftは、売上の半分以上が米国内からであるにも関わらず、その利益は全体の4分の1に過ぎず、海外利益の税率は8.8%に過ぎない。
法定実効税率はあくまでも表面税率の話であり、企業が実際に負担している税率ではない。
日本の税額は、以下の計算で決定される。
税額=(企業利益-益金不算入-損金算入)×税率-税額控除
益金不算入は、企業が収益として認識するもののうちで、課税を免除されたもので、代表的なのは法人間での受取配当がある。
損金算入は、企業会計では費用として認識しないものを税務上の費用である損金として計上を認めるものである。
税額控除は税額を直接減額することである。
この損金算入と税額控除は、租税特別措置法に基づいている。
2011年度の租税特別措置による減収は1兆9300億円で、うち税額控除が4800億円、特別償却などで5000億円、準備金の損金算入は5800億円だった。
法人税減税は、日本の法人税が世界各国と比較して高い事を前提にした議論である。
法人に課される税には、国税と地方税があり、両方を合わせた全ての税率を法定実効税率という。
法定実効税率を国別に比較すると、
          合計    国税   地方税
米カリフォルニア州 40.75%  31.91%  8.84%
日本        35.64%  23.71%  11.93%
フランス      33.33%  33.33%  -
ドイツ       29.55%  15.83%  13.72%
中国        25.00%  25.00%  - 
韓国        24.20%  22.00%  2.20%
イギリス      24.00%  24.00%  -
シンガポール    17.00%  17.00%  -
つまり国税だけを比べると、日本の税率はそれほど高くないが、日本の法定実効税率が高いのは、地方税が原因なのである。