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2016年9月13日火曜日

トランプが新大統領になったら、内政は「本来のアメリカ人」か「チャンスのない底辺層」に配分するかの違いで、オバマ以上に社会民主主義的なアメリカが生まれる可能性がある。
そもそもトランプは、長く民主党員でもあった。
年金、高齢者向け医療保険制度など社会保障制度の拡充、公共インフラ整備事業費の増額、富裕層への増税や関税引き上げについても言及している。
「小さな政府」「税金は少ない方が良い」という、共和党の世界観とは相容れない政策を主張している。
現在のハーバード大学の授業料は、「10ヶ月で7万ドル」、ロースクールまで含めると最低6年かかるので、授業料だけで5000万円必要となる。
現実に、アメリカのエリート大学の殆どは超富裕層の子供しか入学できなくなっている。
エリート大学を卒業すれば、投資銀行で年収2000万から3000万円で社会人をスタートできるが、普通のアメリカ人には就職口がない。
大学を卒業してもアルバイトをして数十ドルの日銭で暮らしているのである。
アメリカ人の若者にとっては閉塞感どころではなく、絶対に追いつかないほどの格差が広がっている。
アメリカでは有色人種が多数派となりつつある。
アメリカの人口統計局によると、アメリカの総人口は2050年には現在の1.5倍の4億5000万人に増加し、白人の割合が46%と過半数を割り、ヒスパニック系とアジア系で40%を占めることになる。
全米がカリフォルニア化するのである。
その時に最大の「負け組」は、白人男性で労働者層のブルーカラーであり、トランプの不法移民批判や排外主義出来な傾向をみていると、この層に対する配慮が垣間見える。
アメリカ大統領選挙で、民主党本命のヒラリー・クリントンの対抗馬として、社会民主主義者を標榜するバーニー・サンダース上院議員が、特に若者の支持を集めた。
サンダース候補について、メディアでは「社会主義者」とか「社会民主主義者」と報じていた。
しかし、彼がかつて所属していた「社会主義青年同盟(YPSL)」というのは、第四インターナショナルに変わったトロツキスト(共産党とは別の立場にある共産主義者)系のアメリカ共産主義運動の中でも最左翼、日本でいうと革マル派とか中核派のような過激派集団だった。
トロツキストの世界観を共有していた民主党員という経歴が、許容される範囲なのか疑問である。
確かにバーモント州の上院議員になる過程で、おそらく転向し、禊は済んだと思われるが、「生粋の社会主義者」を自称するくらいだから、民主党では最左派の立ち位置には違いない。
そのサンダースを支持した民主党員は、彼が社会主義者だからではなく、華麗なる経歴のエスダブリッシュへの拒絶反応であり、特に若年層に反ヒラリーが多い。
2008年の大統領選挙では、反ヒラリー票がオバマに流れたという。
アメリカでユダヤ人が政権の中枢に入ったのは、ジョン・F・ケネディ政権の時代である。
初のアイルランド系カトリックのケネディ大統領は、地元ボストンの優秀なユダヤ系を補佐官やスタッフとして採用した。
これを機に、ユダヤ系は民主党の主流派となっていき、マイノリティは1970年代に力を持ち始めることになる。
同時期に、ユダヤ系にとって第二の権力への途が開かれたのが、ヘンリー・キッシンジャーの共和党ニクソン政権入りである。
ニクソン大統領は、WASPの共和党にあって、「勢力均衡理論」を提唱するキッシンジャーを直々にスカウトし、1969年の政権誕生とともに国家安全保障問題担当大統領補佐官(のちに国務長官)に迎えた。
これを機に、共和党の中枢にもユダヤ系エリートが入っていくことになる。
アメリカの外交戦戦略の中心が、国務長官からNSC(国家安全保障会議)に移ったのは、キッシンジャーの時代からとなる。
東ドイツは1949年の建国の時点で、1200万から1300万人の人口を持ち、複数政党制を取っていた。
その政党の中に国民民主党というナチス党があり、党員は800万人だったという。
人口が少なく、「旧ナチス」というだけで戦犯にしていたら、国家建設ができなかったので、ナチス党が認められたのである。
1947年8月に、ソビエト軍事政府が政府指令を発し、名目だけの旧ナチス党員に社会復帰への道を開き、市民権や政治的権利を回復し、そして1948年には、非ナチ化の終了を正式に宣言している。
東ドイツの戦後復興のためにナチスの戦争責任を不明にし、旧ナチス党員を温存したことが、現在の旧東ドイツでネオナチが台頭している一因なのである。
旧東ドイツには、キリスト教民主同盟もあり、この政党がドイツ統一を牽引する機関車となるが、東ドイツの複数政党制というのは、議席を固定していので政権交代はなかった。
ドイツにもカトリックりバイエルン地方には、食事を楽しむグルメの習慣がある。
バイエルンが本社のBMWには排ガス偽装は起こらなかった。
フォルクスワーゲンの風土は、ナチスを生み出したプロイセンそのもので、偽装装置を開発する計画性を持ち、巧みな偽装隠しをして販路拡大という至上命題を合理的に実現していた。
偽装計画の指令書すら出てこず、悪事は口頭の指示で行い、決して痕跡は残さない。
ナチスとやり方が一緒であり、こういうとドイツ人の体質は変わらない。
ヒトラーはオーストリアという南方出身だったが、ナチスドイツの中枢はプロイセン出身者が固めており、彼らは悪事にも真面目に取り組む。
東西ドイツ統一の結果、プロイセン的な文化が西ドイツに入ってきて、全国に広がったのである。
欧州には南北問題がある。
なぜか南部中心に財政状況が厳しいカトリック・正教国のポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの「PIIGS」があり、北部のプロテスタント国は比較的、経済状況が良い。
欧州北部の強い経済を支えているのは、プロテスタントのカルヴァン派で、彼らには生まれる前から神に選ばれているという選民思想がある。
天国に神のノートがあり、そこに自分の名前が書かれているという「予定説」の立場に立っている。
「自分達はこの世での成功が保証されている。一見失敗したようであっても、それは神の試練であり、これに耐えれば必ず成功する。世の中のため、人のために努力すれば神は喜ぶ。自分の人生とは、神を喜ばすためにある」という教えである。
これがプロテスタンティズムが資本主義を生んだ背景となる。
逆に、大航海時代に新大陸から大量の金銀を収奪し、莫大な富を得たスペインやポルトガルなどのカトリック国から、なぜ資本主義が生まれなかったのかという事は、来世の天国を重視するカトリシズムとの関係がある。
この世はたかだか80年だが、あの世は永遠だから、人々は自分がこの世に貢献するよりも、天国に行けるように教会に全てを寄付しようと考えるので、教会にお金が貯まり、豪華な建物が建てられ、教会インフラという形でカトリックの富が蓄積された。
そのため、産業資本は蓄積されず、資本の社会循環も起きず、産業革命が起きなかった。
カトリシズムは欧州金融危機の問題とも関係しているのである。
「パナマ文書」の情報の出方は特殊である。
スクープした『南ドイツ新聞』に匿名の情報提供があったのは、公表される2016年4月の1年前だったという。
1社で分析できる情報量ではなかったので、ICIJに渡して2016年4月3日に発表に至ったとされている。
この種の世界的なスクープの提供先として、『南ドイツ新聞』が選ばれるのは、今回が初めてである。
このスクープで最も打撃を受けたのは、明らかにイギリスだった。
ポンドのような通貨が、ドルや円、ユーロと対等な国際通貨として通用している理由の一つが、カリブ海のバージン諸島などの海外領土をタックスヘイブンにしているからである。
形式的には、イギリスに追求が及ばないように、自治と主権があることにして、ダーティな取引をやらせているのである。
国際商取引の徴税を強化するという各国の思惑とともに、国際社会からイギリスへの警告だったと思われる。
移民政策を議論する前に、そもそも近代欧州の民主主義がどの程度、不偏性を持つ制度なのかを理解する必要がある。
これには、家族制度、相続と関係してくると、エマニエル・トッドは『移民の運命』で指摘している。
兄弟が平等に相続する社会では、「兄弟は平等だから人類は平等だ」という考え方が出来る。
それに対して、長男が相続する、遺言によって親が相続財産の比率を兄弟間で変更できる社会では、「兄弟が不平等だから、人類も不平等である」という考え方になる。
人類学的に分析すると、兄弟で平等に相続をする地域は希少であり、バリ盆地と地中海沿岸のフランス領域に限られると、トッドは指摘している。
たまたま1789年にフランス革命が、バリ盆地で起こり、バリ盆地特有の倫理観である「平等」が、近代民主主義思想の中心に位置づけられた。
他方、長子・長男相続のドイツや、遺言相続のイギリスでは、民主主義社会における「平等」の概念が異なるのである。
フランス社会では、文化と宗教が分離していて、フランス語のできない第一世代の移民は差別されるが、フランスで生まれた第二世代は、フランスに同化して社会のフルメンバーとして認められる。
それに対して「多文化共存モデル」と綺麗ごとを言うイギリス型は、移民して来るのみよく、伝統・習慣を残してもよいが、ただし、どんなに長くイギリスに住んでも社会への同化は認められないから、差別は継続する。
特に酷いのは、ジャマイカ出身者で、彼らはイギリス国教会に属し、家族制度も極めてイギリスに近いが、イギリスのフルメンバーには成れない。
イギリスでは、親の出自や階級によって、子供の将来がほとんと゛決まってしまい、優秀でも自ら進学を諦めてしまうので、階級も固定されたままとなる。

移民の運命 〔同化か隔離か〕

フランスが二度にわたってイスラム原理主義者によるテロに狙われたのは、フランスが持つ弱みに原因がある。
フランスの人口学者で歴史学者のエマニエル・トッドが『移民の運命』で指摘しているが、フランスは基本的に同化主義を国家原理に据えている。
出自が何処であろうと、フランスの言語と文化を受け入れるならば、国家のフルメンバーとして認める。
「自由・平等・博愛」のもと、どこの国の出身だろうが、どんな宗教を信じていようが、拒絶しないというのが、フラス共和国の理念だある。
「自由・平等」とは、もともとアンシャン・レジーム(旧体制)の第一身分「カトリック聖職者」からの自由と平等を意味している。
革命の精神に基づいて、カトリック聖職者が支配していた学校を世俗化するため、学生と教師が宗教シンボルを身に着けることを1905年に法律で禁止した。
この流れがあり、2004年にフランス公立学校でのブルカ(イスラム女性が身に着けるヴェール)着用を禁ずる「ヴェール禁止法」、2020年には新たに「公共の場で人の顔を隠すことを禁ずる法律」が制定された。
フランスのこれら禁止法は、人間の理性が宗教的権威に勝利した結果を維持するためのものである。
ナチズムの本質とは、人種主義である。
ヒトラーは「血と土」の神話に基づいて、優秀なアーリア人種が世界を支配するのは当然、というナチズムを展開した。
「アーリア人は生まれながらにして優秀である」ことが公理なので、ロジックとしては合理的だが、科学的でも実証的でもなく根拠のない思想だった。
ノルウェーはナチスに協力した過去がある。
ヒトラーはノルウェー人もアーリア人種に属すると考えた。
当時のノルウェー首相のキスリングがヒトラーの友人だったからである。
今では信じられないが、第二次世界大戦中のノルウェーでは、ナチスのSS親衛隊の将校を集めては、ノルウェーの金髪の女性と結婚させ、そして優秀なアーリア人を生産するという「人間牧場」を作っていた。
無教養で信仰を持たないヒトラーとは異なり、キスリングは父親がルター派の牧師でもあり、熱心なルター派だった。
人種主義者のキスリングは、国家を人間の身体のようにみなすコーポラティズムの立場から、ノルウェー人同士の助け合いを重視し、祖社会福祉政策を主張した。
欧州の人種主義は、キリスト教と結びつく危険性がある。
新彊ウイグル自治区の回族は、漢人と同じ中国人だが、宗教だけがイスラム教という複合アイデンティティを持っている。
だから、豚肉を食べない回族のために、豚肉を使わずに、羊肉だけ使う中華レストランがある。
回族は独自の言語を持たないので、漢字で書かれたコーランがある。
ちにみに、「国立ウイグル自治区博物館」は、ウイグルの博物館なのに、イスラム関係の文物は殆どなく、説明はどれも漢族中心の話ばかりで、博物館のウイグル人館員との会話も、かなり発音がなまった中国語だという。
ソ連が成立する1922年まで、中央アジアには国家は無かった。
当然、近代的な民族意識もなく、遊牧民には血縁に基づく部族意識、農耕民には定住すねオアシスを中心とする地理意識があり、両者に共通するのはイスラム教スンニ派という宗教意識だった。
テュルク系言語とペルシャ系言語の双方を話すバイリンガルも多くいた。
もともと中央アジアはテュルク系民族の土地で、帝政ロシアの時代は「トルキスタン(テュルクの地)」という一つの地域だった。
それが、19世紀までに中国とロシアによって東西に分割され、西トルキスタンをソ連が5つの民族・国に分けたのである。
その結果、中央アジアは、ソ連崩壊後に旧ソ連自治共和国から独立したカザフスタン、キルギス(タン)、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの「スタン」5カ国の旧・西トルキスタンと、現在の中国・新彊ウイグル自治区の旧・東トルキスタンに分かれしまった。
宗教改革といっても、欧州のキリスト教とアラブのイスラム教では、全く別物である。
イエス・キリストが活動したのは、僅か3年くらいであり、神の子であるイエスかく語りき、というのは断片的である。
一方で、イスラム教の預言者ムサンマドは長生きで、コーランには彼が一気にしゃべったことが克明に綴られている。
コーランの1冊は丸ごと神の言葉であり、誰も挑戦することができず、中身を理性で吟味することはしない。
つまり、人間の理性、自由裁量の入る余地が極めて限定されているのかイスラム教なのである。
そこで、「腐敗したイスラム教」をどう改革するかという話になると、原点に戻るしかなくなる。
つまりイスラム誕生時の振出に戻る「初期化」である。
従って、ISが正統カリフの時代を夢見るのは、ある意味では当然であり、現代のイスラム宗教改革とは過激派達によって「振り出しに戻す運動」に必然的になってしまうのである。
国境を線で規定すること自体、近代欧州で生まれた、ここ150年程度の思想である。
事実、1855年の日露通好条約では、千島列島の択捉(えとろふ)島と得撫(うるっぷ)島の間、つまり海上に国境線が惹かれる一方で、陸地の樺太ではこれまで通り、両国民が自由な行き来可能な雑居地として、明確な国境線は定められなかった。
緩衝地帯として機能する「面」の国境だった。
ISやアル・カーイダなどのイスラム過激派は、唯一神アッラーの法のもと、カリフが指導する単一のイスラム帝国を建設しようとしている。
彼らは、生き残っても死んでも目的果たしたと考える。
テロを実行して殉教者になると、天国で72人の処女と楽しく過ごせ、遺族には年金が支給される。
もし生き残って聖戦に勝利した場合は、地域の支配を任せられ、現実の世界で力を誇示できる。
どちらにしも、勝ちが約束されているのである。