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2015年5月12日火曜日

政府・与党は「海外移住する人には、持ち出す株の評価益に税金を課す」という税制改革案を検討しているという。
この法案が成立したとして、実際に税金が課せられるのは、年間100人程度の富裕層だけと想定されており、徴税額も大した額にはならい。
しかし注目すべきは、「評価益に課税する」という点で、税の根本的思想に反する抜本的な改革となることである。
これまでの日本の税制では、実現益に対してのみ課税されてきた。
この評価益にも課税するという前例ができると、資産価格を上げておいて、評価益に課税する大増税の布石となる。
月間インフレ率が凄まじかった国ランキング

            時期   日々のインフレ率 価格が2倍になるまでの時間
1位 ハンガリー   1946年7月    195%      15.6時間
2位 ジンバブエ    2008年11月     98%       24.7時間
3位 ユーゴスラビア 1994年1月     64.6%      1.4日
4位 ドイツ     1923年10月     20.9%       3.7日
5位 ギリシャ    1944年11月     17.1%       4.5日
6位 中国      1949年5月     13.4%       5.6日
1992年末に日本銀行が保有する国債は全資産の48.5%だったが、2014年9月末には82.9%となった。
更なる量的緩和が続くと、2015年末には90%に近づくことになる。
2014年11月時点で、日本の10年国債の利回りは0.47、2年国債などは0.02%しかなく、日本銀行が保有する国債の平均利回りは0.482%しかない。
つまり保有国債がの収入が殆どない状態となっている。
これでは、当座預金の金利を少しでも上げたら、収入よりも支出の方が大きくなってしまい損失を垂れ流すことになる。
2014年9月末の日本銀行の資本金は1億円で、引当金が3.8兆円、準備金が2.9兆円となっており、合わせた6.7兆円以上の損を出すと、債務超過になってしまうのである。
229.3兆円の保有国債の平均利回りが0.482%ということは、保有債券の年間収入は1.1兆円しかない。
日銀の当座預金の残高は161,5兆円なので、当座預金の1%の金利をつれると1.6兆円、2%の金利をつけると3.2兆円、3%の金利をつけると4.8兆円の利息を支払わねばならない。
仮に4.8兆円の支出となると、収入は1.1兆円なので、毎年3.7兆円の損失となり、2年弱で日銀は債務超過になってしまう。
14年間、JPモルガンで勤務し、「伝説のディーラー」と呼ばれていた藤巻健史・参議院議員は、1997年に10年国債の利回りが0.6%から2.4%に上昇したタイミングで、国債を先物で売りまくり、国債先物のプットオプション(国債先物を売る権利)を買いまくり、金利スワップの固定を買いまくった。
その結果、1997年12月の1ヶ月だけで300億円を稼いだという。
一般企業で言えば、純利益ベースの数字である。
JPモルガンでは、12月から翌年11月までの業績で12月のボーナス額が決まっていたので、ニューヨークの上司から、残りの11ヶ月は会社に出社せずに遊んでいろと言われていた。
ちなみに300億円の利益に対するボーナスは、会長並みのボーナスに相当する。
しかし、藤巻氏は「JPモルガンで未来永劫に破られない年間利益額を達成しよう」と勝負を続けた結果、残りの11ヶ月で300億円の利益を全て吹っ飛ばしてしまい、会長並みのボーナスも全て失ってしまった。
日本政府は2020年までにプライマリーバランスの黒字化を達成するという国際公約をしている。
しかし、プライマリーバランスとは国債費(元本償還+利息の支払い)を除いた話でしかなく、プライマリーバランスを実現できたとしても、国債費分だけは毎年赤字の状態なのである。
ちなみに、2020年の国債費の想定額は31兆円となっている。
つまり、2020年に国際公約を守れてプライマリーバランスを実現できたとしても、2020年度予算は31兆円の赤字なのである。
国の財政事情は急速に好転している。
2015年会計年度(2014年10月~2015年9月)の予算教書によると、2015年度の予想財政赤字は対GDP比▲3.1%まで改善している。
2009年度  ▲10.1%
2010年度  ▲9.0%
2011年度  ▲8.7%
2012年度  ▲7.0%
2013年度  ▲4.1%
2014年度  ▲3.7%
2013年4月の異次元の量的緩和以降、日銀以外の金融機関は保有国債を売却し始めている。
日銀の資金循環統計によると、2013年末から2014年6月にかけて、銀行等は411兆円から36兆円、公的年金は69兆円から65兆円、生命保険は154兆円から153兆円になっている。
また、決算資料によると、国債保有残高はメガバンク3行が101兆円から73兆円、ゆうちょ銀行は138兆円から126兆円になっている。
つまり、2013年3月末と2014年6月末を比べると、銀行等は51兆円、公的年金は4兆円、生命保険は1兆円の国債保有を減額されている。
さらには2014年10月には、GPIFが日本国債の運用比率は6割から35%に引き下げると決定している。
現在、日本銀行は巨額の日本国債の唯一の買い手となっている。
米ハーバード大学で金融史が専門のアレックス・ファーガン教授は、「1950年~80ル年は中央銀行の肥大化がインフレと深くかかわってきた」と指摘している。
教授によると、1900年以降、主な中央銀行の資産規模はGDPのほぼ10~20%だったという。
現在、FRBをはじめECBや英国中央銀行の資産規模はGDP比で25%弱と、歴史的にみても高い水準になっている。
異次元の量的緩和を進めている日本銀行の資産規模は、既にGDPの50%強に達しており、2014年10月の更なる量的緩和により、2015年末にはマネタリーベースがGDP比70%に達する事になるので、資産規模も対GDP比70%を遥かに超えることになる。
2014年10月29日にバランスシートの拡大を止め、「量的緩和の縮小」を決定したFRBが「バランスシートを平時の規模までに戻すのに10年かかる」と言われている。
日銀がバランスシートを平時の規模に戻すのには、30年近くはかかるのである。
日本銀行が国から直接、国債を購入することを「国債引き受け」と言い、ハイパーインフレを経験した先人たちが二度と起こすまいと、財政法第5条で禁止されている。
現在も国は入札では民間の市中銀行に国債を売っており、日銀には直接売っていない。
しかし、民間金融機関が入札で買った国債は、大半が「国債買いオペレーション」で、すぐに日銀に転売されている。
10年で満期がくる10年国債に関して言えば、異次元の量的緩和開始以来、毎月、発行額の7割相当を日銀が買ってきている。
既に、国が発行した国債を中央銀行が通過を発行することで直接引き受けをする「マネタリーゼーション」が、実質的に行われているのである。
マネタリーゼーションだと認識されれば、「国債は暴落する」と金融界では常識となっており、黒田総裁が「量的緩和は2%の物価上昇目標を達成するまで」と発言することで、量的緩和の本質のカモフラージュに成功している。
日本の経済が狂乱したバブル期は1985年から1990年と言われている。
この狂乱は、土地の値段と株価が上昇したことにより起こった。
このバブルの5年間で、株価は3.4倍、東京の土地の値段は10倍になった。
しかし、東京都区部のバブル期の消費者物価指数は、1985年から1987年まで1%以下で、1988年は3.2%、1989年と1990年は2.7%と、低位安定していた。
それなのに、土地と株の価格が狂乱し、日本経済そのものが狂乱したのである。
消費者物価指数に目を奪われて、資産価格の高騰を見逃した、当時の澄田・日銀総裁は、バブル崩壊後に「資産インフレを見落としたのは間違いだった」と反省談話を出した。