パナマ文書により、セコムの創業者と親族に繋がる法人が1990年代にタックスヘイブンに設立され、当時の取引価格で700億円を超す大量のセコム株が管理されていたことが判明した。
パナマ文書には、セコム株保有にかかわる各法人の役割を説明した書類や法人の定款、株主名簿があり、創業者の死後にセコム株を親族らに取り分けておくことなどが記されていた。
法人が設立された場所は英領ヴァージン諸島・ガーンジーで、セコム創業者の2人、飯田亮氏、故戸田壽一氏は、この法人を使ってセコム株を間接的に管理する仕組みを作っていたのである。
タックスヘイブンの法人には、自分達が所有しているセコム株を拠出し、名義上はタックスヘイブンの法人の所有にしたのである。
そして、このタックスヘイブン法人が所有していたセコム株を2002年に親族3人に無償譲渡したようである。
セコムの親族3人は、このセコム株無償譲渡を受け、それぞれが81億円、43億円、31億円の合計155億円の所得税を払っている。
セコム株700億円分を、普通に創業者から親族に贈与すれば、当時の贈与税の税率は70%だったので、500億円近い税金を払う必要があった。
もし贈与しないままにしておけば、創業者が死亡した際に相続税がかかり、こちらも500億円近い税金を払うことになる。
これをタックスヘイブン法人から無償譲渡されたという形を取ることで、155億円と3分の1に抑え込み、住民税を含めても半分以下に抑えたのである。
普通、個人から個人へ贈与された場合は、もらった側に贈与税がかかる。
しかし、法人から個人に贈与された場合は、もらった側に贈与税ではなく所得税がかかることになる。
そしてこの場合の所得税は、一時所得となり、普通の所得税の半額で済み、最高でも18.5%(当時の税率)にしかならなかったのである。
しかし日本の法人から個人が贈与された場合には、法人側に寄附金という扱いになり法人税がかかる。
そのため、税金の総額は、個人から個人に贈与した場合とさほど変わらなくなる。
セコムの場合、タックスヘイブンの法人なのでへ宇人勢が掛からなかった。
さらに当時は、所得税の高額納付者は公示する制度、いわゆる長者番付があったが、セコム創業者の親族は長者番付に載らなかった。
彼らは少し期限を遅らせて申告したのである。
親族3人は株の無償譲渡を受けた後、全てを一度に申告せずに、いったん少額の納税をした後、修正申告をするという形で、残りの大きな納税をしている。
当時のセコム広報は、「警備会社として慎重を期すために、申告が遅れた」とコメントしている。