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2016年6月16日木曜日

現在、日本の相続税の税収は1兆円ちょっとと、消費税の10%以下となっている。
日本には1700兆円もの莫大な個人資産があることを考えれば、これはいかにも少なすぎる。
現在、全国の相続資産に対する相続税の割合は2%に過ぎず、遺産の98%はそのまま遺族が手にするのである。
もちろん、それはタックスヘイブンを用いてである。
富裕層や大企業から直接税を取れないので、広く取れる消費税で賄おうとするのである。
パナマ文書により、セコムの創業者と親族に繋がる法人が1990年代にタックスヘイブンに設立され、当時の取引価格で700億円を超す大量のセコム株が管理されていたことが判明した。
セコムの創業者と親族は、日本と英国の弁護士、パナマの法律事務所もサック・フォンセカと逃税策を協議していたのである。
パナマ文書には、セコム株保有にかかわる各法人の役割を説明した書類や法人の定款、株主名簿があり、創業者の死後にセコム株を親族らに取り分けておくことなどが記されていた。
法人が設立された場所は英領ヴァージン諸島・ガーンジーで、セコム創業者の2人、飯田亮氏、故戸田壽一氏は、この法人を使ってセコム株を間接的に管理する仕組みを作っていたのである。
タックスヘイブンの法人には、自分達が所有しているセコム株を拠出し、名義上はタックスヘイブンの法人の所有にしたのである。
そして、このタックスヘイブン法人が所有していたセコム株を2002年に親族3人に無償譲渡したようである。
セコムの親族3人は、このセコム株無償譲渡を受け、それぞれが81億円、43億円、31億円の合計155億円の所得税を払っている。
セコム株700億円分を、普通に創業者から親族に贈与すれば、当時の贈与税の税率は70%だったので、500億円近い税金を払う必要があった。
もし贈与しないままにしておけば、創業者が死亡した際に相続税がかかり、こちらも500億円近い税金を払うことになる。
これをタックスヘイブン法人から無償譲渡されたという形を取ることで、155億円と3分の1に抑え込み、住民税を含めても半分以下に抑えたのである。
普通、個人から個人へ贈与された場合は、もらった側に贈与税がかかる。
しかし、法人から個人に贈与された場合は、もらった側に贈与税ではなく所得税がかかることになる。
そしてこの場合の所得税は、一時所得となり、普通の所得税の半額で済み、最高でも18.5%(当時の税率)にしかならなかったのである。
しかし日本の法人から個人が贈与された場合には、法人側に寄附金という扱いになり法人税がかかる。
そのため、税金の総額は、個人から個人に贈与した場合とさほど変わらなくなる。
セコムの場合、タックスヘイブンの法人なのでへ宇人勢が掛からなかった。
さらに当時は、所得税の高額納付者は公示する制度、いわゆる長者番付があったが、セコム創業者の親族は長者番付に載らなかった。
彼らは少し期限を遅らせて申告したのである。
親族3人は株の無償譲渡を受けた後、全てを一度に申告せずに、いったん少額の納税をした後、修正申告をするという形で、残りの大きな納税をしている。
当時のセコム広報は、「警備会社として慎重を期すために、申告が遅れた」とコメントしている。
パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の最大の顧客は中国であり、実に顧客の3分の1は中国・本金の居住者だった。
クレディ・スイスの2015年の発表によると、中国のミリンネアの人口は133万人と、日本の213万人に対してまだ少ない事を考慮すると、中国人のタックスヘイブン利用は多すぎる。
総合商社はタックスヘイブンを利用した逃税がしやすい業態である。
2014年3月期の決算では、大手商社5社は連結ベースで2100~4450億円もの当期利益を計上しているが、税負担は極めて低い。
単独ベースでは大手5社がそろって営業赤字になっている。
総合商社は、グループ全体の利益を税金の安い海外子会社に移し、日本本社では利益が出ないようにしている。
そのため、総合商社の実質税負担は多くの場合10%を切っている。
アップルはネヴァダ州、アイルランド、オランダ、ヴァージン諸島などのタックスヘイブンを巧みに利用することで、グループ全体の実効税率を9.8%にまで下げている。
アメリカには、コストシェアリングという制度があり、アメリカの会社と外国の会社が、無形資産を共同開発した場合、アメリカでの権利はアメリカの会社、アメリカ外での権利は外国の会社が使用できることになっている。
アップルは研究開発を全てアメリカで行っているにも関わらず、アイルランド子会社が費用を負担しているということで共同開発という形を取っている。
これにより、アメリカ外でのアップルの使用料は、アイルランドの子会社が全て受け取れる事になっている。
アイルランドの法人税率は12.5%とアメリカの3分の1である。
2004年にはアップルは、世界売上の3分の1をアイルランド子会社に集中されていた。
タックスヘイブンのペーパーカンパニーが受けた配当には、税金がかからないが、ペーパーカンパニーからその株主に配当を出した場合には、本国で税金が課せられる。
タックスヘイブンを使っての脱税スキームで、税金を逃れるためには、お金をタックスヘイブンに置きっぱなしにせねばならない事になる。
しかし、実際には3つの方法で引き出す事ができる。
1つ目はタックスヘイブンのペーパーカンパニーに、別荘などを買わせる。ロンドンの高級住宅街の多くはタックスヘイブンのペーパーカンパニーが買い占めている。
2つ目はペーパーカンパニーからお金を借りる。
配当であれば、税金がかかるが借金であれば税金はかからない。
3つ目は母国が特別に一時的にタックスヘイブンからの送金を無税にする事があり、それを待つ。
アメリカなどではブッシュ大統領もオバマ大統領も、この特別措置を実施した。
このままアメリカ人の資産がタックスヘイブンに置きっぱなしになってしまうより、税金は取れなくてもアメリカ本国に戻した方が景気対策になるという判断である。
パナマ文書に載っていたアイスランドのシグムンドゥル・グンロイグソン前首相の脱税スキームは、富裕層のテックスヘイブン利用の典型的な例である。
前首相は、妻名義でバージン諸島のタックスヘイブン設立したペーパーカンパニーを通じて、アイスランドの銀行に投資していた。
殆どの先進国では、投資家の配当収入には税金がかかる。
しかし、タックスヘイブンでは配当収入には税金が課せられない。
つまりタックスヘイブンに会社をつくり、その会社がアイスランドの銀行に投資をしたことにすれば、配当金に税金はかからないのである。