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2016年9月15日木曜日

大学、専門学校の中退者は年間1万6000人いるという。
日本中退予防研究所によると、中退後にフリーターか無職になっている割合は、男性54.1%、女性63.4%と高い数値となっている。
就職試験や公務員試験では高卒枠となり、大学の就職課の利用もできないまま、社会に放り出されてしまい、高卒新卒よりも遥かに厳しい状況となっている。
加えて奨学金の返済を迫られれば、もはや対応はできなくなる。
2004年に日本育英会が整理・統合されて、独立行政法人日本学生支援機構として生まれ変わった。
公的機関であるはずの日本学生支援機構は、民間からの資金を導入し、奨学金制度を金融事業として展開し、「奨学金」制度は国と金融業者がタッグを組み低所得世帯をターゲットしにした貧困ビジネスへ変貌した。
平成24年度学生生活調査によると、全学生のうち奨学金を受給する者の割合は、大学昼間部で52.5%、大学院修士課程で60.5%、大学院博士課程で66.2%と過半数を大きく超えている。
1990年代後半までは、奨学金の受給者は大学生全体の2割程度だった。
大学生の過半数が利子を利益とする金融業者の顧客となっており、社会人になる時点で数百万円の負債を抱えているのである。
沖縄はデータを見ると深刻な状況が理解できる。
圏内の非正規雇用者が占める割合は44.5%、離職率も高く大卒3年内離職は49%、高卒3年内離職は62%となっており、雇用は崩壊状態である。
平均月収の24万6400円は全国最低ランクであり、最低賃金677円も全国最低である。
一方で、県の公務員の平均給与は41万5100円と抜きんでており、深刻な格差を抱えている。
離婚率も人口1000人に対して2.59組と全国1位となっており、県中部にはクラスの半分以上が片親という小学校が現れたと、新聞報道されている。
性的サービスを売る風俗店で、ネックとなる法律の一つは売春防止法である。
売春防止法では第二条で「売春」の定義がされており、「売春とは代償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう」とされている。
また「性交」とは「男性器を女性器に挿入する行為」とされている。
つまり、男性器を男性のアナルに挿入する行為は売春ではなく、売り専門や男性相手の出張ホストは、売春防止法の対象外となる。
親世代の経済的苦境に追い打ちをかけるように、大学の学費の高騰は続いている。
40年前の1975年の国立大学の入学金は5万円、授業料は3万6000円だった。私立大学の平均値は入学金9万5584円、十行嶺は18万2677円と安価だった。
これが2013年になると、国立大学の入学金は28万2000円、授業料は53万5800円となり、国立大学の授業料は15倍と急騰しており、2年おきに改定される国立大学の学費は、今後も上昇が止まる気配はない。
私立大学の入学金は26万4390円、授業料は86万72円と高騰し、4倍以上になっている。
40年前と物価上昇を勘案した上で、学費の負担を考えると、1975年の大卒男子の初任給は9万1272円、2013年は20万2469円と貨幣価値は約2倍強の上昇に留まっている。
それに対して、大学の学費は4~15倍に容赦なく膨れ上がっているのである。
現役大学生で、最も経済的な問題を抱えるのは、地方出身で一人暮らしをして学生生活を送る「自宅外通学の私立大生」である。
全国的に世帯収入の下落は続いており、厚労省の国民生活基礎調査によると、1994年の664.2万円から2013年には528.9万円となり、この20年で2割減となっている。
この算出された平均値は高所得世帯が押し上げており、全世帯のうち最も比率が高いのは、200万円台である。
この世帯収入の下落は、大学生への仕送り金額に直結しており、東京私大教連の調査によると、首都圏の大学に通う新入生では、毎月の親からの仕送り額は8万8500円と過去最低を更新している。
ピークだった1994年の12万4900円から3割も減っているのである。
2014年の文部科学省調べによると、大学や短大、高専を忠と退学した人の中退理由の1位は「経済的理由」だった。
学費が払えなくなり退学する学生は、退学者全体の2割を占める。
また、東京私大教連の調査によると、親元を離れて通う首都圏の私立大学生の1日あたりの生活費は897円と、900円を割ったのは調査開始以降初となっている。
1990年には2500円に届く金額だったのが、この25年で6割以上も下落している。
現在の大学生の経済的貧困はデータをみても明らかである。
東京証券取引所は2015年6月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)で、社外取締役を二人以上入れるよう求めており、委員会等設置会社を目指すよう指導している。
よりアメリカ式の経営を目指す方向性となっているが、アメリカでは社外取締役の数を増やすと逆に経営が悪くなるという研究結果が多くある。
外資系企業に近いソニーは、ずっと収益が上らず赤字を続けていたのに、ストリンガー前社長の報酬は上がり続け、2012年期では4500億円の赤字でありながら、役員報酬は8億円を貰っていた。
アメリカでも1970年代までは従業員とトップは1対20程度の年収差だったが、現在では1対500まで差が開いている。
役員報酬の公開が、報酬額を挙げる方に作用してしまっており、同規模の会社でもっと貰っている経営者がいることを理由に、競うように報酬をあげて行ったのである。
2010年以降、日本でも1億円を超える取締役のルン間報酬を開示するようになったが、日産自動車のカルロス・ゴーンの10億円をトップに、従業員と経営者の年収格差は開いてきている。
消費税は累進性がなく、低所得者にしわ寄せがいき、もともと貯蓄の少ない層に税をかけることで、消費を押さえかねない。
日本では消費税を、将来的に欧米並みの20%にした方が良いという議論があるが、ピケティは懐疑的と主張している。
理由としては、EUの国同士は交易しても関税がかからないので、例えばフランスがドイツから税金を取ろうとする場合に、付加価値税を利用しているという。
欧州の付加価値税は、あくまでもEU内の関税のようなもので、欧州各国の財政的な協力がない表れでしかないからだ、と指摘している。
ピケティは、2015年1月29日に初来日した際に、学生との質疑応答で、「rがgよりも大きいのはなぜですか」という質問に対して、「よく分からない。でもデータを調べたらそうなっていた」と応えた。
理由はないが、論理的な説明はできるとし、もしrがgよりも小さくなるならば、人は将来の所得が上がることを見越して、無限に借り入れをした方が得になるし、投資もしたくなくなるのでおかしい。
その逆は論理的に正しいということになる、と説明している。
ピケティは、富の分配の問題を経済学の中心に置きたいと思い、研究を続けて来たという。
この分野は19世紀以降、マルクスやデヴィッド・リカードらが望んできたが、もう一度別のアプローチで挑戦べきだと考え注目したのが、サイモン・クズネッツの分析だった。
サイモンは税務統計を利用して20世紀前半に格差の研究をしたが、ピケティはその手法を時間的にも空間的にも広げ、歴史的なアプローチを取ったという。
『21世紀の資本』は経済書としては異例のベストセラーとなった。
この本が指摘したのは、「資本主義というのは、放っておけば必ず格差が広がっていく」ということである。
第二次世界大戦後しばらくは、それほど格差というものは無かったのに、格差の広がりを示す様々なデータが存在し、次第に格差が広がってきたいるが、その理由がよく分からなかった。
そこにピケティが、何百年分ものデータを集めて分析し、見事にデータで資本主義の本質を実証したことで、漠然と思っていた事が、やはりそうだったのかと納得できたのである。
ピケティは、データがない場合には、オノレ・ド・バルザックなどその時代の文学作品の中のやり取りからデータを導き出しているのは、面白い手法であった。
マルクスは19世紀のイギリスの労働者の様子を見て、データを精査したのではなく、実感をもとに分析を重ねて行って、資本主義では労働者は窮乏化していくしかない、やがて革命が起きるんだという理屈を作りあげが、ピケティのデータでその理論が実証されたのである。
ちなみに電子書籍には、傍線を引く機能があるが、そのデータを集めると『21世紀の資本』の場合、「はじめに」と「第一章」にはかなりの線が引かれているものの、第二章以降に線を引いている人は殆どいないという。
つまり、この分厚い本を最期まで読み通した人は、実は少数にとどまっている。

21世紀の資本

「靖国神社に祀られている英霊を顕彰するのは当然だが、あのひどい負け戦を美化することを保守主義と勘違いしている人達がいる」
by 住田良能 (元産経新聞社長)
1945年に、GHQが日本を占領した時に出した神道指令のなかで、日本軍国主義イデオロギーを構成した書物として、文部省が編纂し、昭和12年から配布した『国体の本義』を禁止した。
どのような国家にも、その国家を成り立たせる国体というものがあるが、戦後は日本の国体の一部に日米安保条約が注入されたのである。
だからこそ、日本の保守派は親米保守となり、アメリカとの関係を崩すことに、保守陣営は形而上的な恐れを持っている。
つまり戦後システムにおいて「力」の部分で安保条約という細い線に頼り、それによって日本の国体がギリギリの所で維持されてきたからである。
日米同盟を守るということが、日本の国体を守ることになっている。
この基本は外務省の人間にとっては、刷り込みのように認識されており、だからこそ、宮内庁にはあれほど多くの外務省の人間が配属されているのである。
待機児童をめぐる「保育園落ちた、日本死ね!!!」の匿名ブログは、論理的には「自分にとって非常によくない事があった。だから、そのような国家は無くなってしまえ」という事だった。
母親の心中を汲んだとしても、この感情的な言葉が国会の質疑で取り上げられ、「死ね」という言葉が議事録に残ったのは、憲政史上初めてである。
「死ね」は政治の否定であり、考え方の違う人間を排除しているという意味では、民主主義の危機であり、ついに日本のダークサイドが国会に上がってきたという事である。
待機児童問題や子供の貧困に関しては、場当たり的に戦力の逐次投入をすべきではなく、社会の分断を阻止する決意で抜本的解決を図る必要がある。
能力差はあるし、経済的な格差はあるのは当然だが、個人の力では這い上がれない「絶対的な貧困」の放置は、現在だけではなく20年、30年後の日本を危うくする。
若者の将来不安の次は、「職業格差」や「希望格差」である。
ある飲食チェーンの店員が付けている名札の名前の下に「将来の夢」が書いているが、その大半が「事務員」だったという。
時給1000円程度で一生懸命働いている20歳前後の若者の夢が、非正規でもいいからブルーカラーではなく、ホワイトカラーになりたい、というのである。
つつましい「事務員になる」という夢さえ、叶うかどうか分からないのが、今の日本の現実なのである。
2016年の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したのは堀川恵子氏の『原爆供養塔』だったが、彼女が作品を書く動機は「怒り」だという。
他の候補作である清武英利氏の『切り捨てSONY』も追い出し部屋の実態を取材した怒りがテーマの作品であり、小野一光氏の『殺人犯との対話』はダークサイドの怒りであり、候補作全てが怒りをベースに書かれていたのは間違いない。
怒りの対象が明確でないがゆえの怒りの原因探し、不健全な社会現象で「ダークサイド」のマグマが溜まっている。

原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

中国共産党は、革命後に簡体字を採用したが、この表記法は国民国家形成において非常に重要な問題となる。
表向きは識字率を挙げるためとしているが、その本質は、国民からそれ以前の知識を遠ざけるためである。
簡体字教育が普及すると、それ以前に使われていた繁体字が読めなくなり、共産党支配以降に認められた言説だけが流通するようになる。
つまり、歴史を断絶させるための情報統制を行ったのである。
ロシアも同じことをした。
ロシア語では、1917年の革命後に3つの文字表記を排除したため、特殊な訓練を受けないと革命前のロシア語が読めなくなってしまった。
ボルシェヴィキ政権、ソ連政権は、革命前の知的遺産のうち、国民に知らしめた方が良いと思うものだけを選んで、新しい百戸表記で出す事にしたのである。
敗戦後の日本でも、当用漢字の導入、新漢字・新かなづかいの制定をするなど、似たようなことをしている。
大東亜戦争の「開戦の詔勅」の中には「国際法を遵守する」という言葉が無いように、当時の日本人は既存の国際法などは欧米の白人が作ったものだから、従う必要はないと考えていた。
現在の中国も、国連海洋法条約があり、批准はしているが、欧米に押し付けられたものだから従う必要はない、と考えているようである。
近代戦の経験に乏しいことも、昭和の大日本帝国に似ている。
戦後中国が経験した近代戦は、1969年の中ソ国境における珍宝島事件、1979年の中越戦争くらいで、その後40年近く実践を経験していない。
しかもどちらも陸軍の戦争であり、海軍に至っては1894年の日清戦争の黄海海戦までさかのぼる事になり、120年以上のブランクがある。
中国人民解放軍は、第一列島線を引き、沖縄、台湾、東シナ海、南シナ海すべてを中国に内包する地図を描いており、さらに今世紀の早いうちに第二列島線の内側は中国の制海権にすると計画している。
第二列島線では、小笠原諸島からグアム島を抜けてバブアニューギニアまでの内側は、すべて中国の海にするという構想も描いている。
人民解放軍関係者は、この二本の線は中国が引いたのではなく、もともとはアメリカが設定したのだと豪語しているというが、正当化される訳はない。
2014年3月18日に、ロシアはクリミア併合の手続きを正式に完了し、国際社会は新たな時代に突入した。
3月15日には、国連安保理でロシア編入に賛成するクリミアの住民投票を無効とする決議案がロシアの拒否権で否決された。
この決議で注目すべきは、これまでならばロシアに同調する中国がこの時は棄権したことである。
もし中国が賛成すれば、中国は「力による現状変更は認めない」という欧米の主張に同調することとなり、中国が南シナ海・東シナ海で試みている「力による現状変更」を自ら否定することとなる。
しかしロシアに同調して、拒否権を発動すると、中国はロシアが主張するクリミアのロシア系住民の「民族自決権」を認める事となり、ウイグル、チベット両自治区など中後区国内の少数民族問題に影響が及ぶことになるからであった。
アメリカの中東石油依存は2割態度しかなく、エネルギーの安定確保が中東関与の動機とはいえない。
アメリカが輸入してきたのは、主に輸送コストの安い北米と南米原油である。
アメリカが現在もなお中東地域に高い関心を持ち、深く関与している理由は、同地域の不安定化が、欧州、アジアの同盟国とイスラエルに及ぼす悪影響を懸念しているからである。
エネルギーは原油以外で代替可能であるが、兵器燃料としては石油に代わるものはない。
アメリカが中東から一定量の原油輸入を継続しているのは、戦略物資である自国の石油を温存する狙いもある。
アメリカは各州に1つずつ、つまり国全体では50の民主党と、50の共和党があり、4年に一度、これらが合体して大統領選挙を戦う国である。
ブッシュ政権の反動から生まれたオバマ政権の外交は成果が乏しい。
2015年7月14日、核協議でイランと国連安保理常任理事国など6カ国(米英仏独中露)が最終合意に達し、オバマ大統領は「核兵器へのすべての道は断たれた。13年にわたる懸案が解決した」と述べ成果を強調したが、事態は楽観できずイランの核保有を少し先に延ばしただけであり、イラン外交の大勝利であった。
ウラン濃縮のための遠心分離機は10年後も6104基残ると共に、地下にある核開発工場も研究機関として存続する。
この合意内容では、イランは1年で広島型原爆を製造でき、その後1年もあれば、この原爆を小型化して弾道ミサイルに搭載できるようになる。
さらに、イランの軍事施設に対する査察は、回数が制限されることになる。
イランは核開発に向けた強い国家意思を持っており、保守派だけでなく、リベラル派も含めて、国民の大多数が核開発を支持している。