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2014年12月25日木曜日

2010年の国勢調査によると、生まれた土地にそのまま住み続けている人の割合は13%程度と、日本国民の1割弱しかいない。
大多数の人は、進学、就職、転勤、結婚、子供誕生などで、生活スタイルの変化に合わせて、住み替えをしている。
社会資本が過剰になる時代となった中で、需要を水増しし「未来」が操作されている。
道路建設計画は、経済成長率、自動車保有率、ドライバー数、通行料などの前提条件が、現在も右肩上がりの楽観的な仮定をベースに、予測を積み上げられており、採算は見通せる黒字計画が出来上がる。
道路建設では、時間を1時間短縮することで、乗用車の場合は3600円、大型トラックの場合は6000円の時間節約効果が生まれるという前提で「経済効果」が算出されている。
その為、巨額の投資で建設しても、そのバイパスが1時間の時間短縮効果があるならば、道路利用者はその浮いた時間で、それまで必要だった時間分の稼ぎを別に得られると説明されている。
しかし、開通してみれば、交通量は実際の5分の1という事も多く、トンネルの建設費用は当初予算の2倍になる事は珍しくない。
つまり、事業効率の低下分を補えるだけの労働生産性や賃金の上昇は見込めないのである。
総人口に占める65歳以上の人口の割合となる「高齢者比率」が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、20%を超えると「超高齢化社会」と呼ばれる。
日本は1950年には高齢者比率は5%だっだのが、1970年には7%を超え高齢化社会となり、1994年には14%ほ超えて高齢社会となった。
高齢者社会から高齢社会になるまで、たった24年しかかかってない。
他の先進国は、フランス115年、アメリカ73年、イタリア61年、ドイツ40年と比べると、日本の特異性が理解できる。
さらに、今後も日本の高齢化率は上昇し、2025年には30.5%、2055年には40.5%と予測されている。
ちなみに、2055年の日本人の平均年齢は55歳と還暦に近づき、この時に日本人の最も多い人口を擁する世代年齢(中位年齢)は57.8歳となる。
これまで、利益団体といえば農業団体、建設業界、医師会、労働組合などの業界団体がイメージされていたが、今後は「世代」が一つのキーワードとなる。
アメリカでは、会員数3千数百万人を有するAARP(全米退職者協会)が高齢者による圧力団体として活発なロビー活動をしている。
日本では本格的な組織化はされていないが、全国の老人クラブの連合体である「全国老人クラブ連合会」(全老連、会員数843万人)が、最大の高齢者団体となる。
(内閣府『高齢者関連団体活動状況調べ』)

高齢者関連団体活動状況調べ

2005年時点の日本政府の純債務残高は421兆円とGDPの85%に相当していた。
しかし、世代会計によると年金債務の現在価値だけで1255兆円、全ての潜在的債務だと2647兆円に達するという。
「世代会計」とは、政府を支える負担をし、政府から受益を受ける国民と政府との関係において、どの世代が得をし、どの世代が損をするのかを金銭的に評価する枠組みで、1991年にアメリカの経済学者のアワーバック、ゴーケール、コトリコフの3人が『Tax Policy and the Economy』という学術雑誌で提唱した比較的新しい概念である。
世代会計は、政策決定の場において、公的部門による世代間の再分配政策を評価する有力なツールとして、認知されている。
日本における社会保障給付90兆円のうち、年金や老人医療など高齢者向けは60兆円に及ぶが、その一方で出産・育児関連予算は4兆円しかない。
また、高齢者向け社会保障支出は、対GDP比で15%以上を占めていのに対して、家族・教育や労働分野でり若者向け支出は、対GDP比で2%程度しかない。
1991年に世代会計の概念を具体化したコトリコフは、将来世代が担わされている政府の公的債務が増え続ける財政民主主義の欠陥について、「財政的幼児虐待体質」と呼んでいる。
現在の民主主義制度の下では、若者の民意が政策決定に届きにくいという構造的な欠陥がある。
日本では有権者の平均年齢は2007年で51.3歳と、有権者の45%が55歳以上の世代で占められている。
40歳未満の世代が全国民に占める割合は44.7%だが、選挙権が与えられているのは20歳以上なので、40歳未満の世代が有権者全体に占める割合は32,1%にまで低下する。
つまり、日本では民意の平均が今後増々「高齢化」していき、「孫の名義のクレジットカード」を使いまくり、将来世代の明るい未来を奪い取る構造が酷くなっていくのである。

『破産する未来 少子高齢化と米国経済』