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2016年5月6日金曜日

資産運用を検討する時に「損して困る最大の金額」をどう決めるか分からない個人投資家には、「360」という数字を使う方法がある。
65歳から95歳まで生きるとすると、リタイア後の期間は360ヶ月になるので「360」を使用するのである。
殆どの人が老後の備えとして資産を必要としているので、老後の生活費との関連で資産運用の損のインパクトを考えるのである。
例えば、「360万円損したら、老後に年金に追加して取り崩して使うことができる資産が毎月1万円減る」と考えて、自分にとって損のインパクトを評価するのである。
勤務先の会社に独自の企業年金制度が無く、年金は厚生年金だけというサラリーマンは「個人型確定拠出年金」と呼ばれる制度を、自分で金融機関を探して手続きすれは利用できる。
個人型の確定拠出年金の利用枠は毎月2万3000円までなので、年間27万6000円のお金を、所得税・住民税がかけられる前の所得から、積立投資に回すことができる。
仮に税率が20%になる所得水準の人の場合、毎年5万5000円強の税金を節税でき、確実で大きなメリットとなる。
加えて確定拠出年金では、運用期間中にかかる税金20%が免除される。
プロの運用の世界では、テクニカル分析はまともな投資分析手法として相手にされることはほぼ無い。
証券会社には、テクニカル分析が専門の担当者を置くケースがあるが、これは殆ど個人相手のリテール営業用という位置づけであり、アナリストやエコノミストと同列の存在ではない。
テクニカル分析は占いに似ている。
有効性の根拠が証明された占いはないが、全ての種類の占いが厳密なテストを受けているわけではない。
そして、占いは一部の根強いファンを持つが、政府や企業が意思決定に使うことはない。
若い人は、自分の金融資産の中でリスク資産の比率を高めてもいい場合が多い。
しかし、それは「運用期間が長いとリスクが小さくなるから」ではなく、若い人は大きくて安定した「人的資本」(将来の稼ぎの割引現在価値)を持っているからである。
また、若い人の多くは、そもそも所有する金融資産の額が人的資本に対して小さいと考えられるからである。
「運用期間が長い方がリスクは小さくなる」というのは完全に間違いである。
同じリスク資産に投資するならば、1年間投資するよりも2年間投資する方が、運用資産の額が取り得る範囲の上下は間違いなく拡大する。
「運用期間が長いと大きなリスクを取ってもいい」という誤った見解が投資家の間て根強い支持を得ている理由の一つに、『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者パールトン・マルキールのように、正しいセオリーだとして教える権威がいるからである。
『ウォール街のランダム・ウォーカー』最新版の「リスクは投資期間に依存する」というタイトルが付いた小項目で「株式投資のリスクも投資期間に応じて減少するのだろうか。答えはもちろん「イエス」である」という記述があり、「長期投資=リスク縮小」という誤解をする人が減らないのも無理はない。
この本が議論の根拠に挙げるデータ自体に誤りがある訳ではないが、データの見方が間違っている。
投資期間別に見た場合、投資期間が長くなるほど「年率の」投資収益率の上下のブレ幅が小さくなることをグラフで見せて、長い期間投資すればリスクが小さくなると説明しているが、これは不適切である。
仮に投資期間1年で「年率の収益率」がプラスマイナス10%の範囲にあり、投資期間が2年間ではこれがブラスマイナス7%であったとした場合、「運用資産額」で見ると、1年後は投資資産額に対して上下90~110%、2年後では86.5~114.5%となる。
つまり「年率」の収益率の上下幅が縮んでも、その収益率が複数年に適用される訳だから、資産額の上下幅はそれなりに大きなものになる。
投資家にとっての問題なのは、運用資産の価値なのである。

株価は、将来、企業が株主にもたらす利益の割引現在価値の合計として考えることができる。
利益成長率が一定の下の理論的に適正な株価は、次のモデルとなる。
P=E÷(r-g)
P=株価
E=今期の1株当り利益
r=株式投資のリスクに対して投資家が要求するリターン(金利+リスクプレミアム)
g=利益の成長率(一律と仮定する)
例えば、ある会社の1株当りの利益が50円で、投資家の要求リターンが6%、利益成長率が4%ならば、この会社の株価は50÷(0.06-0.04)=2500円となる。利益成長率が2%に低下すると50÷(0.06-0.02)=1250円となる。
投資をスタートした時の株価が異なるだけで、投資した後に投資家が得られると期待できるリターンは変化しない。
この成長率は、マイナスでも構わなく、利益成長率がマイナス2%ならば、50÷(0.06-(-0.02))=50÷0.08=625円が適正株価となり、理論上、この株価で投資する限り、投資家の期待リターンは6%と変わらない。
つまり投資家の投資時の株価が十分に低ければ、リターンは十分確保できるのである。
投資家にとって注目すべきは、現在の株価が十分に低いのかどうかということになる。
「毎月分配型」と称される投資信託は、毎月決算を行って分配金を支払う仕組みに特色があり、銀行の店頭で売られている投資信託の中でこのタイプは主力商品となっている。
毎月分売という仕組みは、運用利回りがプラスであることを前提とするならば、課税のタイミングが早くなる分だけ、年1回分配の同一運用内容の商品よりも確実に損してしまう。
しかし、年金収入の補完を意識する高齢者にとって、実際には自分の資産を取り崩しているたけだが、毎月収入があることは分かり易く、安心感を得られる。
分配金を一定に保つことによって、「安定した利回り」に近いイメージを与えて安定した運用であるかのように見せる売り方が効果的である事から、銀行の窓口販売では「売れ筋商品」の地位を獲得した。
「ドルコスト平均法」は、同一の投資対象について、定期的に一定金額の購入を行う積立投資の方法として有名である。
同一口数を買い付け続けるよりも、平均買い単価が下がるのは有利だと、推奨されることが多く「積立投資の王道」と説明される。
しかし、結論としては「ドルコスト平均法は、特段有利な投資方法ではないし、時には弊害もある」と事になる。
ドルコスト平均法をやっているので、リスクが抑えられているはずと思っていても、既に買ってしまった株や投資信託のリスクが小さくなることはない。
ドルコスト平均法は、「平均買いコスト」に投資家の支店を週知友させることで、投資対象が値下がりした時の「気休め」をあらかじめ提供する投資方法に過ぎない。
〇ドルコスト平均法の弊害
1.ドルコスト平均法による投資は、十分な運用資金がある場合に機会損失につながることがある。
2.余計に手数料がかかることがある。
3.同じ投資対象にリスクを集中させることになる。
リスクを低下させるためにドルコスト平均法で投資するならば、投資するこどに買い付ける対象を変えた方が、分散投資の効果が働いて好ましいはずである。
バランスファンドの存在を擁護する論拠に「プロによるアセットアロケーションの付加価値」がありうるが、資産配分のタイミングで安定的に成功する運用者を見つけることが難しいのは、資産運用業界の常識となっている。
だからこそ、年金運用などのプロがプロに資産運用を委託する機関投資家の世界では、スポンサー自身が資産配分を決めて、アセットクラス(資産区分)ごとに運用を任せる相手を選ぶスタイルで運営することが、標準になっているのである。
NISA口座でバランスファンドを買うのは間違いである。
NISAは運用益が非課税になる制度なので、自分の運用全体の中で機体リターンの高い資産の運用をNISA口座に集中させることがベストとなる。
NISA口座内でバランスファンドに投資すると、NISAの非課税メリットを薄めてしまうことになる。
バランスファンドとは、内外の株式・債権など複数のアセットクラス(資産分類)に投資する運用商品のことである。
資産クラスま配分を決める「アセットアロケーション(資産配分計画)
」は投資に不慣れな人にとっては難しく感じられるので、これをファンドの運用側でやってくれるバランスファンドは、初心者にとって気が楽な商品だと言える側面があるため、よく「初心者向き商品だ」とセールス時に説明される。
また、NISA口座でも運用期間を通じて資産配分を調整する投資行動である「リバランス」を可能にするので、「NISAに向いた商品だ」とマネー誌などの記事にも、頻繁に掲載されている。
しかし、バランスファンドが、「初心者向け・NISAに向いている」というのは明白な誤りである。
お金の運用に関する3つの見方に気づくと、これらの嘘に理解できる。
1.投資家はリスクを投資金額で調整できる。
2.投資家にとって大切なのは自分の資産の「一部」ではなく「合計」である。
3.投資家は運用の中身を知らないよりも知っている方がよい。
リスクの把握が難しいという点について、少なくともバランスファンドは「初心者向け」の商品ではない。
個人が自分のお金を扱う上でわきまえておくべき「7つの常識」
1.年齢と運用方法は基本的に無関係。高齢者向け、若者向けといった年齢別に最適な運用商品、運用方法といったものは無い。
2.資金使途と運用方法ね無関係。老妓資金と子供の学費は同じ運用方法でいいし、そもそもお金を分けて運用すること無意味である。
3.リスクを取る大きさは、運用商品の種類ではなく、リスクを取る運用商品に投資する「金額」で調節すべきである。
4.運用商品を購入するかもしれない相手(銀行、証券会社、保険会社、FPコンサルタント)にお金の運用を相談してはならない。
特に「無料相談」は自らカモになりに行く行為である。
5.配当や分配金を使うのも、自分が持っている普通預金を取り崩すのも、同じ金額を使うのであれば、経済的な意味は同じ。預金がある人には「分配金のニーズ」など無いはずである。
6.株式や投資信託は、お金が必要だと思えば、自分が買った値段より安く売っても全く問題ない。
7.同じ市場に投資するに当たって手数料がより高い商品は、それだけでダメ商品。「手数料は高いが運用は上手い」という運用商品を事前に選ぶことはできない。
日本政府の中長期経済見通しでは長期金利は2~3年後には2%に達する予定となっており、「インフレ率2%」が達成された後、日本銀行は少なくとも現在のようなペースで長期国債を買う事はなくなり、数年後には長期国債の利回りが2~3%に達する可能性が充分ある。
そうすると、長期国債の価格は2~3割下落することになる。
特に、貸出先不足から、有価証券の運用に大きく依存している銀行については、運用の失敗で債務超過に陥る事態となる可能性も十分ありうる。
自己資本に関する規制基準が厳しいメガバンクよりも、経営リスクがあるにもかかわらず基準が甘い地方銀行や第二地銀、信用金庫などには不安を感じる。
銀行と親しくなっても、ろくなことはないので、取引銀行はドライに選択する必要がある
銀行は預金口座の資金の動きを通じて、顧客のお金の動きや、生活の様子、場合によっては顧客の関心のありかまで知る事ができる。
「証券会社からお振込みのあったお客様は、リスク商品に対するご関心がある可能性が高いので、投資信託セールスのアプローチを是非してみましょう」という社内マニュアルまで存在する。
顧客の資金移動のデータを与信判断に使えのはいいとしても、その気になって使おうとすれば、マーケティングにも使える途方もないビッグ・データを保有している。
金融商品のセールスに引っかかりやすい「情報弱者」の顧客を割り出す統計分析も可能なのである。
山崎元さんの著書『信じていいのか銀行員』(講談社現代新書)の原稿の元になったのは、主に銀行員を読者とする『近代セールス』(近代セールス社刊)という雑誌に「山本元の資産運用の常識・非常識」というタイトルで連載されていたものである。
山崎さんは、雑誌執筆当時、銀行員が顧客にとって正しい営業を行わないことへの怒りと、銀行員に資産運用の正しい常識を知ってほしいという願い、心ある銀行員はきっと行動を改善してくれるはずだという期待とが交錯していたという。
だから、本書を一番読んでほしい読者は銀行員であり、顧客と銀行の双方が長期的に上手くいくようなビジネスのあり方を改めて考えてみることを期待しているという。