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2015年11月19日木曜日

日本で培われた金融技術である債務の「飛ばし」という日本語は、「Tobashi」という英語にもなっている。
ギリシャは国家ぐるみで粉飾決算をしていたが、使われた方法は古典的なものだった。
ある通貨を担保にして、別の通過を調達するのと同じ効果があるデリバティブ商品である「クロス・カレンシー・スワップ」を使った。
例えば、100億円を相手に渡して、1億ユーロを受け取り、満期まで円を貸した方は円の金利を受取り、逆にユーロを借りているのでユーロの金利を支払う。満期になると100億円が返ってきて、1億ユーロを相手に返す。交換レートは直近のスポットを使い、最後に戻ってくる時も同じスポットが使われるので、最初にトレードした時点での損益は何もないが、金利の変動などで損益が発生する。円とユーロの金利を交換(スワップ)しているので、スワップと呼ばれる。
しかし、ゴールドマン・サックスがギリシャ政府と取引したクロス・カレンシー・スワップは、最初に設定する為替レートを直近のスポットからかなり離れたものにしていた。
欧州連合の財務データの開示ルールでは、最初に余分に入ってきた金額をそのまま現金として扱い、デリバティブ取引による将来のキャッシュアウトは債務残高に含めなくても良かったのである。
ギリシャ政府は、ゴールドマン・サックスからローンを借りていて、その金利を定期的に支払っているのと同じキャッシュフローにも関わらず、このようなデリバティブ取引は、借金として処理しなくて良かったのである。
つまり、ギリシャ政府は、債務の「飛ばし」をやっていたのである。
ゴールドマン・サックスは、2兆円ほどの特殊なクロス・カレンシー・スワップをギリシャ政府と取引して、少なくとも数百億円ほどの利益を稼いだと言われている。
さらにその後のギリシャ危機でも、このギリシャの内情を知り尽くしたゴールドマン・サックスは、ギリシャ国際のCDSの自己勘定取引でも一儲けしたと言われており、抜け目がない。