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2017年3月14日火曜日

日本社会の最大の問題点は、「生活保護予備軍が激増している」ことである。
その要素は非正規雇用者の増加であり、かけらの多くは老後の生活力を持っていない。
つまり、現在、非正規雇用で働いている人達の大半は、老後に生活保護を受給する可能性が高いのである。
現在の日本では非正規雇用者が2000万人おり、年金に加入していない者も多い。
一橋大学の高山憲之・名誉教授の研究によると、非正規雇用の半数以上が厚生年金に加入していないという。
最悪の場合、この2000万人がそのまま生活保護を受給することになる。
高齢者の生活保護受給世帯は2010年1月の時点で57万世帯に達し、生活保護の4割を占めている。
また2013年の警視庁の発表によると、万引きで検挙された者の31%は高齢者だった。
この20年で、高齢者の万引きは3倍に激増している。
高齢者が盗んだ者の68%は、パンやおにぎりなどの食料品だったという。
万引きに限らず、高齢者の犯罪は激増しており、この20年で5倍になっている。
その犯罪の65%が万引きなどの窃盗となっている。
退職後、再就職をしても自分が年収100万円程度の収入で、子供が働いているならば、子供の扶養に入ることができる。
子供の扶養に入れば、子供の税金が安くなり、自分は国民健康保険に入らなくて済む。
子供にしても両親を自分の社会保険に入れたとしても、社会保険料は変わらない。
扶養に入れる要件として、税法では「生計を一にしていること」となっている。
これは一緒に暮らしている必要はなく、仕送りをしてたり経済的な後ろ盾になっていればよいのである。
税金の上で扶養に入れることと、健康保険の扶養にいれることは若干、条件が異なる。
税法で扶養に入れられる親族は、6親等以内の血族もしくは3親等以内の姻族となっている。
自分の親族であれば従兄弟の子供や祖父母の兄弟でも扶養に入れる事ができ、配偶者の叔父叔母でも入れることができる。
この親族とは必ずしも同居していなくても、経済的に面倒を見ているという一定の条件をクリアしていれば扶養に入れられる。
健康保険に入れられる家族の範囲は、原則として「同居している3親等以内の親族」となっているが、次の2つの条件をクリアしていれば父母、祖父母、曾祖父母、子供、孫、兄弟姉妹については別居していても入れることができる。
条件1 年間収入
60歳未満 130万円未満
60歳以上または障害者 180万円未満
条件2 
同居の場合 収入が扶養者の収入の半分未満
別居の場合 収入が扶養者からの仕送りの額未満
但し、収入が扶養者の収入の半分以上の場合であっても、扶養者の年間収入を上回らず、日本年金機構が諸事情を勘案して、扶養者から扶養されていると認めるときは被扶養者となることがある。
退職した年にするべき裏ワザとして「社会保険料を前納する」という方法がある。
国民健康保険の保険料は、前年の収入を基準に決められている。
退職した年は、退職金をもらって所得が多くなっているので、翌年の国民健康保険料は非常に高くなってしまう。
しかし再就職しない場合は、所得はゼロなのに、高額の国民健康保険料を支払わなくてはならない。
だから、退職してお金があるうちに国民年金保険料を前納で払っておくのである。
自治体によって異なるが、翌年の3月分まで前納でき、若干の割引もある。
また、国民健康保険料を前納すると、支払った全額がその年の所得から控除でき、節税になる。
所得から控除できる社会保険料というのは、その年分の社会保険料だけではなく、支払った年に支払った額が全額控除できるようになっている。
つまり翌年分の社会保険料を先に前納しても、払った年に所得控除できる。
老後に海外で暮らす場合、税金の裏ワザがある。
定年して直ぐに海外に住民票を移せば、定年後の住民票を払わずに済む。
住民税は、前年の所得にかかってくるので、退職して無職になって翌年は収入が無いのに、高い住民税を払う必要がある。
しかし、住民税は1月1日に住民票がある自治体からかかってくるものなので、その日に海外に住民票を移していれば住民税はかからない。
そして、1年間のうち、おおむね半分以上海外にいれば、住民税は払わなくてよいことになっている。
生活が苦しくなった時には、消費者ローンではなく、「生活福祉資金」という制度を利用すべきである。
これは各地区の福祉協議会がやっている制度で、諸国の低い人、失業などで所得が激減した人などを対象に生活資金の貸付を行っている。
この生活福祉資金は、平成21年10月に失業が増えている事を踏まえ、低所得者向けへり貸付が大きく拡充された。
生活支援資金15万円以内(二人以上の世帯は20万円)
生活再建資金60万円以内
住宅入居資金40万円以内
申込者は、原則として連帯保証人が必要だが、連帯保証人がいなくても借入申込はできる。
貸付利子の利率は連帯保証人を立てる場合は無利子、連帯保証人がいない場合は1.5%となる。
そして、この゛位勝福祉資金や自治体の融資を返済できなくなった時には、生活保護を申請すべきである。
自治体としても「公的融資の返済が滞っている」という記録が残っている以上、生活に困っていることを把握していなかった、という言い逃れはできないので、生活保護の申請はしやすくなるはずである。
個人年金の利率は他の金融商品に比べて良くない。
しかし、個人年金に加入すると所得控除を受けられるよになる。
年間掛金が8万円以上の個人年金に加入していれば、所得税4万円、住民税2万8000円と合わせて6万8000円の所得控除を受けられる。
これは戻ってくる税額に換算すると平均的なサラリーマンの場合、1万円程度だが、この節税分を含めれば個人年金は他の金融商品よりも遥かに有利な金融商品となる。
個人年金の掛け金は1万円からできるので、年額12万円で税金が1万円戻るとすると、節税分を利息と考えると8%ととなる。
複利計算にはならないが、8%の利息がつく金融商品と考えることができる。
確定拠出年金は所得税が安くなるというメリットがある。
サラリーマンの場合、月額2万3000円までの掛金が全額、所得控除となる。
年間で27万6000円までの掛金が所得控除になる。
この所得控除により、平均的なサラリーマンの場合、年間4~5万円の節税となる。
つまり、年間4~5万円の税金補助を受けながら、毎年27万円の年金を積み立てているのと同じことなのである。
自分の負担は実質的に22~23万円となる。
老後の生活設計をする際に、念頭に置く必要があるのは「貯金はあまり役に立たない」という事である。
老後の生活を貯金中心で設計するというのは、ナンセンスなことなのである。
老後生活が何年続くかは、個人差がありすぎて、誰も分からないからである。
平均寿命で死ぬのは全体の半分の人であり、残りの半分の人は平均寿命よりも長く生きることになる。
つまり平均寿命より長く生きる可能性が50%ある。
老後の生活は「貯金を中心にしてはダメ」であり、貯金以外の柱を用意する必要がある。
一番の柱は、やはり年金になる。
年金の最大の長所は、「死ぬまで定期的に一定のお金がもらえる」という点である。
自治体の窓口では生活保護の申請を受理する前に、申請希望者を追い返している。
これは昭和56年11月に当時の厚生省が出された「生活保護の適正実施の推進について」という通知以降のことだと言われている。
この通知が出された当時、暴力団の不正受給が問題化しており、「不正受給を防ぐように」という指示の通知だった。
各自治体はこの通知以降、生活保護の相談・申請があっても、極力追い返すという方針を取るようになってしまった。
生活保護の申請の相談に訪れた人が実際に申請をする割合は、2004年の会計検査院の調査によると30.6%だという。
(社会保障費支出の減じ様に関する会計検査の結果について、2006年10月)
つまり申請に訪れても7割の人は窓口で追い返えされているのである。
この会計検査の結果は、10年以上前の2004年のものだが、なぜか
これ以降、会計検査院は同様の報告を発表していない。
生活保護システムの最大の欠陥は、国と自治体の間で責任の所在が明白になっていない点である。
本来は生活保護は憲法で定められた国民の権利なので、国に責任があるはずだが、地方自治体が窓口となっている。
予算面でも生活保護の費用を4分の3を国が出し、4分の1を地方自治体が出しているが、地方自治体分については国から出されている地方交付税交付金で賄われているという建前になっている。
つまり建前上は国が全額出している事になっているが、地方交付税は生活保護費に紐づきで支給されていないので、生活保護費が増えれば地方自治体の財政が圧迫されることになる。
だから特に財政事情の苦しい自治体や生活保護者の多い自治体は、生活保護に関して組織的にブレーキをかける傾向が出てしまう。
生活保護の大きな問題の一つに、「生活保護費の大半は受給者の生活費に使われていない」というものがある。
生活保護費として税金から支出されている費用のうち、その半分以上が医療費になっている。
生活保護費の半分が医療費ということは、家庭の支出の半分が医療費ということと同じである。
医療機関にとって生活保護費というのは、実は重要な収入源となっている。
医療費を削減できれば、生活保護費は大幅に削減できる。
2012年3月の厚生労働省の発表によると、生活保護受給者が必要以上に病院に通院する「過剰受診」は全国で3816人だったという。
古いデータになるが2007年に厚生労働省は生活保護を受ける水準の過程がどのくら存在するかという調査を実施し、発表している。
(生活扶助基準に関する検討会・第1回資料)
この調査結果によると、低所得者層の6~7%は生活保護水準以下の生活をしていることが判明したという。
現在、生活保護を受けている人は200万人なので、生活保護の受給者は貧困層全体からすると氷山の一角に過ぎない。
しかも、この低所得者層というのは、近年、急激に増加し続けている。
日本は直接的な社会保障だけでなく、貧困者のためのインフラ整備も圧倒的に遅れている。
日本は低所得者への住宅支援は公営住宅くらいしかなく、その数も全世帯の4%に過ぎない。
支出される国の予算は2000億円と、先進諸国の1割に過ぎないず、しかも昨今は急激に減額されている。
2000億円というのは、国の歳出の0.2%でしかなく、国の公共事業費の2%に過ぎない。
フランスでは全世帯の23%が国から住宅の補助を受けており、その額は1兆8000億円、イギリスでも全世帯の18%が住宅補助を受けており、その額は2兆6000億円、アメリカでも住宅政策に毎年3兆円が使われている。
日本で公営自由宅に入れる基準は「月収15万8000円以下」となっている。
この基準では子育て世代は入れず、子供が多くて生活に困っている世代は全く対象になっていない。
しかも公営住宅の総戸数は圧倒的に少ないので、2005年の抽選応募倍率は9.9倍になっている。
自己責任の国アメリカは、貧困者への扶助に日本の10倍を費やしている。
生活保護だけではなく、バリエーションに富んだメリハリの利いた保護施策が行われている。
アメリカには勤労所得税額控除(EITC)と呼ばれる補助金制度があり、収入が一定額以下になると国から補助金が貰える。
課税限度額ら達していない家庭は、生活費が幹部されるという制度で1975年に貧困対策として始まった。
年収が120万円の子供を持つ家庭に限り、40万円程度の補助金が貰える。
また片親の世帯では現金給付、食費補助、住宅給付、健康保険給付、給食給付などが受けられる制度もある。
また子供がいない老人を除く健常者に対しては、現金給付ではなく、フードスタンプなどの食費補助の支給がある。
フードスタンプは月100ドル程度の食品を購入できる金券が支給されね保井戸で、1964年に貧困対策として始められた。
2016年3月のアメリカ農務省の発表によると、4577万人がフードスタンプを受けたという。
実にアメリカ国民の8人に1人がフードスタンプの恩恵に与っているのである。
日本では、この十数年で生活保護受給者が急増しているが、他の先進国と比べれば、生活保護の支出も受給率も非常に低いのである。
日本の場合、生活保護基準以下の2~3割しか生活保護を受けていない。日本の生活保護捕捉率は2割とされている。
つまり、本来は生活保護を受けるべき状況なのに受けていない人が生活保護受給者の4倍もいるのである。
イギリス、フランス、ドイツなどでは、要保護世帯の7~8割が生活保護を受けているとされている。
また日本の生活保護は、社会保障費のうち10%にも満ず、GDP比では0.3%であり、自己責任の国アメリカの1割程度しかない。
日本の生活保護受給者の数も圧倒的に少なく、国民のわずか1%以下であり、アメリカは国民の1割程度となっている。
現在の生活保護の支給額が多いように見えるのは、周りに生活保護レベル以下の生活をしている人が多すぎるからである。
生活保護受給者が貰い過ぎているのではなく、貧困者が増えすぎているだけである。
ワーキング・プアの人が生活保護受給者を攻撃するということは、貧困者が貧困者を攻撃するということであり、貧困者同士で争えば貧困者全体の利益は損なわれることになる。
世論が生活保護受給者に厳しくなれば、生活保護費は削減され、生活保護が今よりも受けにくくなり、生活保護の質も更に低下していくことになる。
借金があっても生活保護は受けれるが、生活保護費は借金の返済には使えないという法的な縛りがあるので、それを楯にして自治体が申請を拒む事が多い。
この場合、弁護士に相談し、じこはさんなどで借金を整理する必要がある。
弁護士は普通30分の相談をするたけで5000円以上取られるので、簡単に相談できない。
しかし生活保護の申請に関しては、弁護士は無料で対応してくれる。
各地域の弁護士会が申し合わせて、生活保護の弁護士費用については無料にしているからである。
各弁護士は生活保護の申請を代行した場合、弁護士会から報酬的なものが支払われることになっているので、弁護士もボランティアではないから、気軽に相談すればよい。
各弁護士会では、無料法律相談会を行っていたり、「法テラス」という低所得者のための無料法律相談窓口を設けている。
生活保護を受けるかどうかの判断基準は、家賃である。
家賃が払えなくなった時、部屋を追い出される前に生活保護の申請をする必要がある。
住む家を失ってしまうと、生活保護の受給手続きがかなり面倒になるからである。
「生活保護は住民票が無ければ受けられない」というのは、嘘であり、生活保護は憲法で定められた日本国民の権利であるから、自由所が無くても生活保護は受けられる。
生活保護申請窓口は自治体になっているため、住民票が無ければどこの自治体が窓口になるか特定できないことになる。
市区町村というのは、「住民」に対する行政サービスを行うのであり、「住民」でなければ対応する必要はない、という論法となる。
だから現実的には、住民票が無い人の場合は、NPO法人や弁護士、司法書士などの手助けがなければ、なかなか生活保護は受けられなくなる。
「来月の家賃が払えそうにない」という状況になったら、迷わずに生活保護の申請をすべきである。
生活保護受給者には、生活費の支給以外に様々な特別待遇がある。
社会保険料が全額免除となり、健康保険や年金の掛け金を払わずに、掛金を払ったのと同じ待遇を受けられる。
生活保護を需給している間は、年金は払っているものとしてカウントされる。
また医療費は健康保険料を払わなくてよいだけでなく、自己負担分も免除される。
つまり医療費は全く無料ということになる。
ただし、自己負担分を免除する場合、福祉事務所からその都度にチケット(生活保護法医療券・調剤券)を貰わねばならないので、急患のときは利用できない。
老後破産の多くが、医療費が原因となっている事を考えると、生活保護を受けられれば、老後破綻の多くは救える。
他にも、住民税や固定資産税などの税金も免除され、NHKの受信料や高校の授業料も無料となる。
「生活保護は働いている人は受けられない」というのは嘘である。
普通に働いていても国が定める基準以下の収入であれば、生活保護を受けることができる。
年金収入があっても、生活保護基準以下の収入であれば、生活保護は受けられる。
そして、生活保護を受けたからといって、年金の支給が止められることはない。
低賃金の人と同様に、年金収入と生活保護基準の差額分を受給できるのである。
生活保護では家賃は別に支給され、千代田区では最高6万9800万円まで出してもらえる。
しかも、税金、社会保険料、NHK受信料は支払わなくてよいので、だいたい25万円の収入がある人と同等の生活ができる。
東京以外の地域でも、だいたい20万円程度の収入と同等の生活ができる。
この20万円という数字と年金を比べると、夫がサラリーマンで40年間、平均的な収入で厚生年金に入っていたとする。
この場合、夫がもらえるのは老齢年金が月6万5000円、厚生年金から10万円、これに妻の老齢年金が6万5000円で、合わせて23万円程度となる。
つまり、夫が平均的なサラリーマンを40年間続けた夫婦の年金と生活保護の額は、殆ど同額なのである。
もし自営業で国民年金にしか加入していない夫婦の場合は、基礎年金しかもらえないので、夫婦で合わせても月13万円にしかならず、生活保護の方が7万円も多い事になる。
日本でも近年、格差社会の問題が議論されるが、社会の格差化は世界的な問題になっている。
貧困問題に取り組む国際支援団体のオックスファームが2016年1月に、「世界のわずか62人の富豪が、最貧層36億人分と同じだけの富を所有している」と発表した。
この62人の2015年の資産は1兆7600億ドルで、日本円に換算すると206兆円であり、これが世界人口の半分の数の富を合わせた額と同じだというのである。
日本でも富の集中と格差の拡大は確実に進んでいる。
年収200万円以下のサラリーマンは、1999年には803万7000人だったが、2014年には1139万2000人になっている。
この人数には、フリーターやニートは含まれておらず、低所得者層はこの数倍存在すると見られている。
一方で、クレディ・スイス銀行の調査「グローバル・ウェルス・レポート」によると、日本の億万長者は2004年には134万人だったが、2013年には273万人に達しているという。
マネーゲームの中心地はウォール街ではなく、ロンドンのシティである。
イギリスは金融や企業の規制を緩くすることによって、世界中の企業やお金を呼び込んでいる。
ロシアの企業は海外で上場する時に、ニューヨークではなく、シティを選ぶ。
このロンドンの規制の緩さは、世界的な問題をもたらしている。
あのリーマン・ショックもロンドンが大きく関与しており、リーマン・ブラザーズが破綻した要因となった「レポ105」という取引はイギリスの子会社で行われていた。
「レポ105」というのは、決算期直前に手持ちの債権を、後で買い戻すという条件のもとで、一時的に現金に換えると言う取引である。
決算期直前にこの取引をすれば、決算書上は現金を多く保有することになり、決算書を健全な経営内容に見せれる。
多額のサブプライム・ローンを抱えていたことが破綻の原因となったAGIも、そのサブプライム・ローンはAGIのロンドン支社が中心となって推し進められていた。
マネーゲームの総本山は、ニューヨークのウォール街ではなく、ロンドンのシティである。
世界金融全体のシェアを見ると、ロンドンのシティの方が、ウォール街を凌駕している。
国際的な株取引の半分、国際新規公開株の55%、国際通貨取引の35%はロンドンのシティが占めている。
またイギリスの外国為替取引量は、1日あたり2兆7260億ドルと、世界全体の4割を占めており、断トツの1位となっている。
2位のアメリカはイギリスの半分以下の1兆2630億ドルである。
シティがこれほど世界金融に影響力を持っているのは、イギリスがタックス・ヘイブンの総元締めだからである。
BSIによると、イギリスとその外国領のオフショア銀行預金残高は、推定3兆2000億ドルと、世界のオフショア市場の53%を占めているという。
タックス・ヘイブンの起源は19世紀にまで遡る。
西欧列強がアジア、アメリカ、アフリカに植民地を展開していた時代である。
イギリスでは植民地への投資を増やすために、植民地の企業の税金を安くしたことが、タックス・ヘイブンの起源となる。
イギリス本島は、税金を安くすることはできないし、金融に対する規制や監視なども先進国として責任を持つ必要がある。
しかし、世界に点在するイギリス領の島々では、他国から抗議があっても「自治領なので、責任外だ」と言い訳ができる。
実際に、イギリスは実際に海外領を使って、外交上の問題をクリアしてきた伝統がある。
例えば、イギリス海峡に浮かぶジャージー島のイギリス王室領のジャージー代官管轄区では、外交や国防についてはイギリス本国が行うが、独自の憲法、議会によって自治を行っているという建前がある。
ヨーロッパの政治犯がイギリスに亡命を求めて来た時に、彼らをジャージー島にかくまい、「ジャージー島は自治地域であり、我々の管轄外だ」と言い逃れをしてきた。
タックス・ヘイブンで一番被害を受けているのは、実はアメリカ政府である。
代表的なタックス・ヘイブンであるケイマン諸島には、18,857の企業があり、そのうち半分はアメリカの関連会社である。
アメリカは、ここで年間1000億ドルの税収を失っているという。
また、現在、世界の銀行資産の半分以上、多国籍企業の海外投資の3分の1が、タックス・ヘイブンを経由していると言われている。
IMFは2010年の発表で、南太平洋などの島嶼部のタックス・ヘイブンだけで18兆ドルの資金が集められているとしている。
18兆ドルというのは、世界総生産の3分の1に当たる巨額なものである。
しかもこれは、「過少評価と思われる」と付記されている。
国際非政府組織の「税公正ネットワーク」は2010年末時点で、21兆~32兆ドルの金融資産が、タックス・ヘイブンに保有されていると分析している。
アメリカのポピュラーなウイスキーに「バーボン・ウイスキー」というのがある。
このバーボン・ウイスキーというのは、アメリカが独立戦争時のフランスの支援に感謝して、フランス・ブルボン王朝から取った名前だという。
2003年3月にアメリカとイギリスによって、「イラクは大量破壊兵器を保有している」として、イラク戦争が開始された。
しかし、結局、大量破壊兵器は見つからず、今でもイラク戦争については不可思議な事が多いが、経済面からその開戦理由を知る事ができる。
2000年11月に、フセイン大統領は石油取引をドル建てからユーロ建てに変更し、アメリカにダメージを与えている。
当時のイラクは経済制裁を受けており、輸出入が制限されていた。
しかし、人道物資に限っては輸入が許され、それに見合う量だけの石油うの輸出が可能だった。
その石油取引をユーロ建てで行ったのは、フランスとロシアの石油会社だった。
アメリカは、イラク戦争でフセイン政権を崩壊させた後、すぐにイラクの石油取引をドル建てに戻している。
中東戦争でアラブ諸国で混乱が続く中、石油価格の上昇で、アラブの産油国には膨大な富が流れ込んだ。
サウジアラビアの石油収入は1970年には12億ドルだったが、1974年には200億ドルを超え、1979年には700億ドルに達している。
10年間で60倍になったのである。
明治維新から第二次世界大戦までの70年間で、日本のGNPは6倍に増加、実質賃金は3倍、実質鉱業生産は30倍、実質農業生産は3倍になっている。
日本の経済は、戦後に急成長したと思われがちだが、実際には戦前の経済成長の方が凄まじかった。
西ドイツが第二次世界大戦後に、急速に復興した要因は、ドイツの工業設備が戦災の影響をそれほど受けていなかったからである。
連合国軍の調査によると、ドイツ産業全体の戦災によるダメージは2割程度だっという。
国中が激しい空爆に遭い、ソ連や米英軍に首都まで攻め込まれたにも関わらず、産業の被害は驚くほど少なかったのである。
アメリカはマーシャル・プランによって、戦後のヨーロッパ復興を支援したが、敗戦国ドイツに対しては、その額は低く設定されていた。
国民一人あたりに換算すると、イギリス62.9ドル、フランス64.5ドルに対し、西ドイツは半分以下の28.3ドルだった。
連合国の選良方針で、ドイツの産業復興の目標を「ドイツ国民の需要を満たす範囲で、連合国の生活水準以下」とされていた。
また、賠償金としてドイツ国内の産業資産が充てられることになっており、ソ連は占領地域から工作機械を大量に持ち出している。
そして、連合国が占領している期間の占領経費は西ドイツの負担だった。
この占領経費は膨大で、西ドイツの占領経費と防衛費の額は1949年には歳出の2割、1950年には4割に達しており、50年代を通じて歳出の2~4割となっている。
GDP比では5%前後と、他の欧州諸国の軍事費よりも高かった。
この占領経費分は、アメリカからのマーシャル・プランによる支援がくを軽く超えていた。
西ドイツの工業生産が戦前の1936年の水準に回復したのは、戦争終結からわずか4年後の1949年だった。
日本の工業生産が戦前水準に回復するのは1955年頃であり、戦後10年が経っている。
日本の戦後復興は奇跡と言われたが、西ドイツは日本の半分以下の機関で復興を成し遂げている。
その後の西ドイツ経済は急成長を遂げ、1950年から1958年の間に国民所得は2.2倍、国民総生産は名目で2.2倍、実質で1.8倍、工業生産は2倍、輸出は4.4倍となっている。
日本の所得倍増計画が始まったのは1961年なので、西ドイツはその10年以上前に、既に所得倍増を達成している。
そして、1959年には国内総生産がフランスを抜き、1960年にはイギリスを抜いて、世界第2位となっている。
イスラエルという国はユダヤ人が作った国だが、ユダヤ人が世界で最も多く住んでいる国はアメリカである。
アメリカにはイスラエルより多くい500万人以上のユダヤ人が住んでおり、世界最大のユダヤ人居住国である。
大航海時代に、スペインやポルトガルはユダヤ人を追放したが、イギリスはそうしなかったため、世界中のユダヤ人がアメリカ大陸のイギリス植民地に流れ込んだのである。
特にニューヨークには多くのユダヤ人が移住してきたこともあり、現在のニューヨークは総人口の2割以上、170万人がユダヤ人であり、エルサレムやテルアデブよりも多い。
ニューヨークは世界最大のユダヤ人居住都市なのである。
現在、アメリカはイスラエルに毎年25億ドルから30億ドルの援助をしている。
また、本来はアメリカの民間団体が他国に援助を行う場合には税金が課せられるが、アメリカのユダヤ人団体がイスラエルに寄附金を送る時には、税金はかからない。
ユダヤ系ロビイスト団体のAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)は、全米退職者協会に続いて、2番目に強い影響力を持つという調査結果もある。
AIPACの外交問題担当部長は『ニューヨーカー』誌の取材で、「24時間あれば、このナプキンの上に上院議員70名分の署名を集めることができる」と答えたという。
アメリカとアラブ諸国の結びつきは、第二次世界大戦中に行われた密約に端を発しているという。
第二次世界大戦終盤に、アメリカとサウジアラビアが密約を交わし、それが戦後の世界経済に大きな影響を与えているとされいする。
サウジアラビア初代国王のイブン・サウドの伝記や、アメリカの元CIAロバート・ベアの手記によると、1945年2月のヤルタ会談直後にアメリカの巡洋艦「クインシー」の艦上で、ルーズベルト大統領とイブン・サウド国王の極秘会談が持たれたという。
その席上で、サウジアラビアは、今後の石油取引の全てをドルで行うという約束をし、アメリカはその代わりにアラブの王国が他の国や勢力に脅かされた場合は、アメリカ軍が守るという確約をしたというのである。
実際にサウジアラビアは、ニューヨーク・マネーセンターバンクの非居住者ドル預金口座を石油の決済口座として指定し、これ以外の決済は行っていない。
アラブ諸国は「石油取引をドル建てで行う」という密約を堅持し、石油業界全体の暗黙の了解のようになっている。
ドルが石油取引を独占していることは、ドルが世界の基軸通貨とされる大きな要因といえる。