Amazon

2017年5月29日月曜日

世界28ヵ国、3万3千人以上の25~64歳の大卒以上の知識層に対して行う意識調査「エデルマン・トラストバロメーター」(信頼度調査)では、国別に調査結果が示されている。
2016年2月に発表された調査結果によると、日本で最も信頼されていない業種はメディアで、次に信頼されていないのが金融機関だという。
日本に信託が正式に輸入されたのは1905年である。
日露戦争後の経済復興のための資金調達策として担保付社債信託法貸が制定され、金銭、有価証券、不動産などを管理運用する信託業務として発展してきた。
第二次大戦前に、日本に進出していた米フォードやIBMが日本国内に残した資産は戦時中「敵国資産」とされた。
当時は「鬼畜米英」のスローガンが公然と掲げられており、競売にかけられ、軍費調達に転用されて然るべきところだが、なんと三菱信託などの信託銀行が管理してきたのである。
敗戦を迎え、GHQが進駐してきた際に、こうした敵国資産が開戦前と同じ状態できちんと保管されていたことに米国側は驚いたという。
特にIBMの社史には、「スリッパ1足に至るまで我々の財産は保全されていた」と明記されているという。
信託が仕組として体系化されたのは海外だが、「信じて託す」という人間ならではの営みは、日本にも古くから存在した。
平安時代、828年、「庶民に広く教育の機会を与えたい」と空海は理想を抱いていた。
しかし、空海には学はあるが財はなく、この考えに賛同した貴族の藤原三守(みもり)が土地と邸宅を寄附し、京都・九条に私設の学習所「綜芸種智院」を建設した。
藤原三守が委託者で、空海が受託者となって運用し、庶民が受益者となった。
同志社を設立した新島譲は、明治時代に活躍した林業家の土倉三郎に300円を預け、植林事業で運用し、妻の八重の生活資金とするように遺言に残している。
「ヴェニスの商人」「トム・ソーヤの冒険」「あしながおじさん」「レインマン」では、ストーリーの重要なポイントに信託が扱われている。
「ピーターラビット」で知られるビアトリクス・ボーターは、印税や親からの遺産で取得した4300エーカーの土地・農場をナショナル・トラストに托し、英国湖水地方の美しい景観を現在の我々に残した。
ウォルト・ディズニーは、全財産を遺言信託し、55%を親族を受益者とする信託、45%を公益信託とし、配当の大半をカリフォルニア芸術大学に送り続けているという。
信託博物館によると、投資家が集団で資金を出し合って投資するスキームは、オランダが発祥とされ、投資信託という形態では、1868年に英国のThe Foreign and Colonial Government Trustが最初だという。
信託は、移民とともに新大陸米国に渡ると、法人企業が信託を業務として提供し始めた。
当初は、富裕層の資産保管、財産管理、遺言執行が主な業務だったが、資金調達の手段として信託の仕組みが利用されるようになった。
その後、投資信託が本格的に普及し始め、従業員の退職後に備えた年金信託も登場していく。
東京丸の内の日本工業倶楽部会館1階に、三菱UFJ信託銀行が運営する「信託博物館」がある。
信託博物館によると、信託は古くは紀元前19世紀の古代エジプトに遡るという。
パピルスに記載された「ウアーの遺言」では、信頼できる後見人に自分の財産を拓氏、自分が死んだら子供に渡すように約束したとの記録が残る。
紀元前18世紀の古代バビロニアでは、「ハンムラビ法典」に、商人から資金や商品を預かった代理人の記述がある。
代理人は承認のために元本の倍の利益を上げ、損失発生時のルールさえ明記されているという。
紀元前2世紀から紀元1世紀頃の古代ローマでは、法定相続人以外の人物への信託遺贈が盛んにおこなわれていた。
初代皇帝アウグストゥスは、信託遺贈をめぐる争いを解決する専任の法務官を置いたという。
中世イギリスでは11世紀以降、十字軍に参加する兵士が、センチで命を落としても領地を没収されないように、信頼する友人に対し妻子のため、領地を管理保有するよう託した。
金融庁によると、日本の資産運用会社は42%が金融機関や事業法人の系列だという。独立系はわずか20%に満たない。
公募投信の純資産残高の比率では、さらに差が歴然とし、系列の運用会社の残高は86%を占めている。
外資系が10数%で、残る独立系は僅か1%にすぎない。
取扱い商品に占める系列運用会社の商品の比率は、大手銀行は62%、大手証券は56%となっており、ライバル銀行・証券の系列運用会社の商品は、取り扱わない。
つまり、銀行や証券が、顧客に最適な商品を勧めてくれるとは、思わない方が良いということである。
日本全体のファンド数は増加しており、2015年12月末時点で5843本になっている。
公募投資信託全体の残高は2000年末の49兆円から2015年末には97兆円に増加しているが、1本当りの残高は2009年以降、160億円前後で推移し、増えてないのが特徴である。
これに対して、米国では2000年建て以降、8000本前後で推移している。
一方、純資産残高は2000年末の7兆ドルから2015年末には、なんと16兆ドルに増加し、1本当りの残高は8.5億ドルから19億ドルと2.3倍に増加している。
金融庁の資料によると、純資産が2000億円を超える日本の公募株式投信は、本数ベースでは僅か1%にすぎない。
残高ベースでは2000億円以下は全体の65%に相当する。
過去3年間、投資信託の保有者の約半数は投信1銘柄しか保有していない。
金融庁によると、2012年3月から2016年3月までの純増ベースの売れ筋投資信託の上位5位までのランキングでは、計25本中、23本が毎月分売型だという。
毎月分配型は、運用利益が出ない場合、純資産を取り崩してでも分配に回すケースが多く、批判が根強い。
業界のアンケート調査によると、保有比率は「60代」「70代以上」の高齢者が多く、元本の一部を取り崩して分配金として払い戻すこともある事を理解している顧客は、なんと37%に過ぎないという。
また毎月分配金の使途は、「自分のこづかい」が39%、「生活費」が32%、「特に使わない」が28%にも上っている。
使い道がないのに分配を受けているのである。
毎月の分配金にも課税されるため、税金分が目減りし、複利効果がなくなるのを理解せず、使い道がない人にまで分配型を売りつけているのである。
人口予測の精度は非常に高く、1960年代に国連が世界の人口予測をし、40年経過した2000年時点での差異は、0.09%しかなかった。
2016年3月末の純資産残高は、日本ではトップが米国不動産投資信託、2位が海外リート、3位も米国リート、4位が海外株式、5位が米国低格付け債券で、全てアクティブ商品となっている。
これに対して、米国ではトップが米国株式インデックス、2位が世界株式(除く米国)インデックス、3位も米国株式インデックス、4位は米国株式、5位が米国債券インデックスで、4位を除くと全てインデックス商品になっている。
日米の売れ筋投信を比較すると、投信購入時に課される平均販売手数料(税抜き)は、日本が3.2%なのに対し、米国は0.59%。
資産運用会社が運用費用として徴収する平均年率信託報酬(税抜き)は、日本が1.53%なのに対し、米国は0.28%と、各種手数料の圧倒的な低さが分かる。
日本の資産運用では、運用成績が良くても手数料で損失が出てしまう「手数料負け」という言葉もあるくらいである。
販売手数料も信託報酬も米国より高いにもかかわらず、日本の過去10年の平均収益年率はマイナス0.11%であり、米国のプラス5.20%と雲泥の差となっている。
また、投資設定依頼の平均期間は日本が13年で、米国は31年。
平均純資産総額は日本が1.1兆円なのに対して、米国は22.6兆円となっている。