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2017年1月23日月曜日

「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートが低いから日本の財政は健全」と言われるが、CDSレートとは「国の倒産確率」にすぎない。
国が資金繰り倒産するのを回避するために、中央銀行が国債を引き受ければ倒産は避けられる。
元利金の支払い不能状況が回避されれば、CDS市場では倒産は回避されたことになる。
つまりCDS市場で定義する財政破綻は日本では起こらないかもしれないが、貨幣の価値が下がり過度なインフレになる可能性はある。
2015年6月末時点で、ゆうちょ銀行を含む銀行全体の国債保有額は259兆円である。
日銀の国債保有額は2015年7月末で386兆円、2016年8月末で397兆円となり、日銀が民間銀行よりも多額の国債を保有している。
日銀の国債保有シェアは4割だが、FRBの2割弱よりもかなり大きい数字になっている。
ちなみに2015年8月に、国債通貨基金(IMF)は、日銀の国債買入れが2017年~2018年に限界を迎えるとのレポートを公表している。
2016年度の日本政府の国債発行予定額は152.6兆円であり、これは新発債と借換債の合計額である。
2016年度は34兆円の赤字なので、この分が新発債となる。
借換債分は、以前保有していた金融機関が再度、同額分を購入してくれれば達成できるが、新発債分は新たに誰かに買い増ししてもらう必要がある。
よく「国債を保有している金融機関は、国債を売れば自分の首を絞めてしまうので国債相場は崩れない」と言われるが、誰かが新発債を買い増ししてくれるなければ、国債相場は大崩れする事になる。
日本国債は日本人しか保有していない、という事実が意味しているのは、外国人投資家にとって日本国債は全く魅力のない商品だということである。
日本国債には信用リスクが全く上乗せされていないということである。
市場原理が働かない日銀が年間発行額の8割も買っていれば、外国人にとって魅力のないレートまで金利が下がるのは当たり前である。
日銀が国債を売却しようとした場合、相当に金利が上昇しないと外国人投資家は参入してこないという事を理解しておく必要がある。
EUの財政ルールでは、単年度の財政赤字がGDPの3%を超え、是正処置が不十分の場合には、最大でGDPの0.2%の罰金を科せるとなっている。
この基準を日本に当てはめると、日本のGDPは500兆円だから、単年度赤字が15兆円を超えれば、1兆円の罰金となる。
ちなみに、2016年度の日本の財政赤字は予算段階で34兆円である。
また1992年に調印された弐ーろに参加いるための「マーストリヒト条約」では、「政府債務の対GDP比60%以内」という加盟条件がついている。
この基準を日本に当てはめると、日本のGDPは500兆円だから、政府債務は300兆円以内ということになる。
ちなみに、2016年6月末の日本の累積赤字は1053兆円である。
2016年7月に罰金の制裁を受けたポルトガルの財政赤字は対GDP比4.4%、スペインは5.1%だった。
日本は6.8%であり、ギリシャの7.2%に近い。
2015年に財政破綻懸念で世界中が大騒ぎしたギリシャの公的債務は対GDP比で177%だった。
ちなみに日本の債務は対GDP比で211%である。
「日本は財政支出を中央銀行の紙幣増刷で賄う『ヘリコプターマネー』にすでに手を染めており、世界最悪の公的債務を高インフレで解決する可能性が高い。
ヘリコプターマネーに手を染めれば、必ず最後はインフレになって破綻している。
日銀による巨額の国債買入れに出口が無ければ、日本がそうなる可能性は非常に高い。」
by 野口悠紀雄(2016年5月27日、ブルームバーグニュース)
「異次元の質的量的緩和」とは上手な表現ではあるが、政府の資金繰りを中央銀行が賄う「財政ファイナンス」そのものである。
2016年度は150兆円の国債が発行され、そのうち120兆円を日銀が最終的に引き受けている。
政府は直接的に日銀に国債を売って資金調達をしているのではなく、入札で民金金融機関に国債を売っているが、日銀が入札直後の国債を民間金融機関から買い集めているのである。
そして民金金融機関は、日銀への転売手数料が目的で入札に参加しているのである。
マイナス金利政策は、現在の日本では不評である。
理由は、マイナス金利導入前に「異次元の質的量的緩和」という余計な事をしてしまったからである。
通常は、長期金利の方が短期金利より高いので、銀行の利益は短期で調達したものを長期で運用することによって得ている。
長短金利差が大きければ大きいほど、利益が増える。
預金金利が0%でも長期金利が高ければ、銀行は利ザヤを確保できるが、黒田総裁が「異次元の質的量的緩和」により、長期国債を購入した結果、長短金利差が無くなってしまった。
長短金利差は縮小どころか、逆転したタイミングでマイナス金利政策を導入してしまったのである。
これではマイナス金利を更に深堀りさせると、金融システムリスクを発生させ、銀行株の下落が株式市場の暴落の引き金を引く恐れもある。
マイナス金利政策の効果が出ないのは、長期国債を爆垓して長短金利差を縮小させてしまってから、マイナス金利政策を導入してしまった政策ミスのせいである。