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2017年9月17日日曜日

経済学者の将来予測は全く当たらないため、経済学も統計学の研究者によってオカルトの一種と批判されている。
例えばアメリカにおいて、1970年~75年の経済が大きく変化した4つの期間(70年の軽度の刑期交代と72年の景気回復、73年の石油ショックとインフレ、74年の深刻な景気後退、75年の景気急回復)を対象に、実質国民総生産(GNP)成長率とインフレ率について、アメリカを代表する官民6つの経済研究所の予測がどれだけ当たっているかを調査した著名な研究がある。
それによると、48件の予測のうち46件が景気の転換点を予測できていなかった。
予測機関で経済モデルの開発に携わってきたウィリアム・シャーディンは経済予測の特徴を次のようにまとめている。
1.経済予測の精度は予測対象期間が先になるほど低い
2.エコノミストの予測能力を平均すると当て推量とほぼ同じである。
3.常に予測成績が上位の予測機関はない
4.常に予測成績が上位の経済学派はない
5.特定の経済指標について、常に高い予測能力を実証している予測機関はない
6.先進技術を取り入れても経済予測の精度は上がらない
7.予測はエコノミスト個人の心理的な性向によって影響される場合がある
8.コンセンサス予測(複数のエコノミストの予測の平均)をしても制度はあまり上がらない
9.経済予測の精度が過去30年間に向上しているという保証はない
要するに景気の動向をエコノミストに聞いても無駄だということである。
現代ポートフォリオ理論の創始者として1990年にノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツのアイデアは「株価も水の分子運動と同じようにランダムに動いている」というものだった。
そして、この理論の本質は「株価は無意味に変動しており、未来を正確に予測するのは原理的に不可能である」というもので、全ての予測は「この範囲に何パーセントの確率で存在する」という確率論的なものにならざるを得ないというものでる。
こうした運動を物理学では「ランダムウォーク」という。
現代ポートフォリオ理論は「分散投資」の勧めとして知られており、マーコウィッツは一つの株だけを持つよりも複数の株を組み合わせた方が、同じリスクでより高いリターンが期待できることを数学的に証明した。
この理論は証券会社にとって、様々な金融商品を投資家に売りつける理屈に使え、「卵はひとつのカゴに盛るな」と広く宣伝されている。
ところが、マーコウィッツがノーベル賞を受賞した理由は、別の所にあり、同じ統計学の手法を使って「最も効率的なポートフォリオとは市場に投資することである」という発見をしたことだった。
つまり市場全体の動きに連動するインデックスファンドに投資せよというのである。
この効率的ポートフォリオの発見は、投資家は何も考えずにインデックスファンドを買えばよいというものであり、証券会社にとって非常に不都合な発見となった。
アクティブ運用の平均的なパフォーマンスを調べると、パッシブ運用に比べて、手数料コストの分だけ負けているということが、様々な統計調査で明らかになっており、学問的には決着がついている。
経済学者からすると、全ての投資アドバイスはオカルトの類に過ぎない。
アメリカを代表する30社の株価平均である「ニューヨーク・ダウ」のチャートを見ると、1928年の大恐慌を大底に、その後は見事な右肩上がりとなっている。
「長期投資は成功する」という投資理論の原則は、このニューヨーク・ダウから導き出された一種の経験則に過ぎない。
それも株価が大きく上昇し始めた1980年代半ば以降に唱えられたものである。
アメリカでもベトナム戦争に突入した1960年代から1980年代半ばまで、20年にわたる株価の低迷を経験した。
「株式の死」と呼ばれたこの時期には、誰も長期投資など説くことはなく、株式投資はアメリカ゛てもギャンブルの一種と考えられていたという。
しかしその後、アメリカの株式市場には1987年のブラックマンデーはあったものの、2000年のITバブル崩壊までの20年に及ぶ大きな上昇の波が訪れ、これがいわゆるニューエコノミー相場で、長期投万能理論はこの「黄金の20年」に確認した。
これに対して日本の株式市場には、長期投資の成功を理論的に裏付ける適したチャートは存在しない。
そこで日本の資産運用本では、無理やりアメリカ型のノウハウを当てはめざるを得なかった。
人類が貨幣を発明して以来、何度かの停滞はあったものの、経済規模は一貫して拡大してきたから、投資レンジを長くすれば長期投資が確実に富をもたらすことは間違いない。
ただし、これは100年単位の話であり、我々が生きている間に長期投資から富が得られるという保証はどこにもない。