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2015年7月31日金曜日

目標を持っていない人は、自分に期待していないことが原因である。
そして、「敢えて自分にはできない」と思うようにして、「チャレンジしない言い訳」にしている。
失敗を恐れるのは、他人の目があるからで、他人の目を恐れるのは自分の評価やイメージが下がると思っているからである。
チャレンジしなければ失敗することはない。
そして失敗しなければ、落胆したり傷ついたりすることはない。
人が目標を持たない、自分に期待しない理由は、「自分が傷つきたくないから」なのである。
「時間がない」と言っている人も同じで、失敗をしたくない人の言い訳である。
「時間がない」ということは、「時間さえあればできる」ということで、自分にはそれをやる能力も意思もあるが、時間がないから仕方ないという言い訳をしているのである。
実際には時間が無いのではなく、やってみて挫折するのが怖い、やってみて成果が出ないのが怖いのである。
「自分はまだ本気を出していない」と思うことで、査定されることから逃げているのである。
経済学の父と言われるアダム・スミスは、道徳哲学者だった。
どうすれば人が幸福に生きられるか、どうすれば幸せに社会が作れるかを考え抜き、その手段の一つとして「富がなければいけない」という結論に至った。
だから経済学を作ったのである。
人脈とは「自分が誰かを知っていること」ではない。
人脈とは、相手が自分を知っていて、相手が自分に一目置き、自分と関わることにメリットを感じてくれているこなのである。
つまり相手に「この人には協力したい」と思ってもらえる事が肝なのである。
その為には自分自身の能力を高め、頼りにされる人間にならねばならない。
アメリカの行動経済学の実験で「ズルをしてしまう構造」が明らかになった。
「自分に言い訳ができる範囲であれば、人は簡単にズルをしてしまう」という。
そして人間は、ズルをしてしまった時には、自分の中で言い訳を見つけて、その行為を正当化してしまう生き物なのである。

2015年7月30日木曜日

人が他人を妬むのは「差があるから」ではなく、「自分もそうできたはず」という感情である。
これを「相対的不満」といい、次のような状況で生まれる。
1.自分はAをほしい(Aになりたい)
2.自分はAを所有していないが、他人はAを所有している(Aになっている)
3.自分は他人と同じようにAを所有する(Aになる)資格があると考えている
つまり、1つ目の「自分はAをほしい(Aになりたい)」と思わなければ、そもそも不満を感じない。
また、Aを得ている人が世の中に誰もいなければ、そもそも妬むことはない。
そして、3つ目の「自分も得る資格がある」と考えた時に、不平等感を抱き「なんであいつだけ」という妬みが生まれる。
人は平等な社会になれば、より強く不平等を意識するようになる。
もともと不平等が当たり前であれば、不平等であることは気にならない。
しかし、「これからは平等な世の中」となった瞬間に、「これからは平等であるべき」という意識が働き、平等でない小さな部分が際立って見えてしまう。
平等な世の中になればなるほど、「平等そのものに対する執着」が強くなる。
不平等が社会の共通の法であるとき、最大の不平等も人の目に入らない。
すべてがほぼ平準化するとき、最小の不平等に人は傷つく。

By トクヴィル 『アメリカのデモクラシー』
アイリスオーヤマは、元々はプラスチック加工業だった。
ある時、社長の子供が犬を飼い始めて、社長が犬小屋を探したところ、木材のキットを自分で組み立てる商品しかなかった。
雨が降ったら犬も小屋の中もずぶ濡れになってしまい、衛生的ではない。
そこで、自社のプラスチック加工技術を使って犬小屋を作ったところ、大ヒットした。
そこからペット用品に進出して、いまや介護、園芸、家電の分野にまで拡大し、業績は右肩上がりで伸びている。

2015年7月28日火曜日

国税局で課税実務に関わる部署は、調査部、査察部、課税部であり、税務署では対処できないような案件を扱う。
調査部は資本金1億円以上が対象なので、全法人の2%にも満たない。
東京国税局管内の法人数は96万社だが、調査部のターゲットとなるのは上場企業をはじめとする1万数社程度であり、源泉所得税を除いて、これらに税務署が関わることはない。
査察部は刑事責任を追及する部署なので、行政手続き上の資料を持ち出すのは違法になる恐れがあり、課税部が保有する資料情報を使うことはできない。
従い、査察部内で独自に内偵を行い、事件の企画をする必要がある。
東京国税局では年間100件ほどを扱っている。
課税部は国税局内で担当する案件の他に、東京国税局管内の全84税務署が行う調査の指導・監督をする部署である。
全国12の国税局の中で、法人数・税収とも圧倒的に多い東京は格別で、東京国税局は東京都、神奈川県、千葉県、山梨県を所管しており、3000人の職員が配置されている。
税務署も合わせた総職員数は1万5500人にのぼり、約2割が東京国税局に配属されていることになる。
国税局内にも部署による序列があり、総務課、人事課、法人課税課や個人課税課などの主管課がエリートコースとされている。
出世する為には、若いうちに財務省、国税庁、国税局といった上級官庁に滑り込む必要がある。
1億円の大きさは、横38センチ、縦32センチ、高さ10センチになる。
ちなみに重さは10キロ。
国税局査察部は、国税犯則取締法に基づく調査で、裁判所の令状をもって強制捜査を行う部署である。
目的は脱税者を検察庁に告発することであり、マルサの調査は徹底した内偵により、脱税した所得の証拠(タマリ)で、裏付けとなる資産を把握できた事件が対象となる。
マルサと違い、一般にはあまり知られていない部署に「コメ」という隠語で呼ばれる国税局資料調査課がある。
資料の「料」と調査課の「調」をとって「リョウチョウ」とも呼ばれていたが、税務業界では知れ渡ってしまった為、隠語としての価値が無くなり、「料」のヘンを指して「コメ」と呼ばれるようになった。
コメはマルサとは違いタマリが無くても、蓄積されたデータをもとに調査対象を選定し、令状なしで調査を実行する。
コメはマルサが調査できない、あるいは調査しない複雑困難な事案や証拠不十分な事案に従事している。
1987年に公開された映画『マルサの女』で、それまでは国税の隠語で一般には知られていなかった「マルサ=国税局査察部」が認知された。
国税の隠語には、名詞の前に「マル」をつける習慣がある。
代表者を指すときには「マルダイ」、対象者は「マルタイ」、だから査察は「マルサ」となる。
マルサが知られるよになり、現在の隠語は「6階」(東京国税局旧庁舎の6階に査察部があった)、または「旧6階」とか「3階」(東京国税局現庁舎の3階に査察部はある)と呼ばれている。
国税職員の定期人事異動は、毎年7月10日。
この日には、異動日恒例行事として、事務室内での飲み会がある。

2015年7月26日日曜日

命を使うと書いて「使命」

by 演劇『流れる雲よ』主人公の特攻隊員のセリフ
最近、「社葬」を行いやすくなったと言われている。
家族だけが火葬場でお別れをする「直葬」や、身近な人達だけでする「家族葬」が増えており、葬儀の規模を大きくして売上金額を大きくしようとする葬儀業者が社葬を勧めているのである。
葬儀業者は「社葬の手引き」という冊子を用意して、葬儀費を法人の経費で落とす方法を解説伝授しているという。
なお、社葬であったとしても、密葬の費用、初七日の費用、四十九日の費用、戒名料、仏具仏壇の費用、納骨の費用、香典返しなどの返礼の費用などは、社葬の費用として扱うことはできない。
これらは遺族が支払うべき費用となる。
また、社葬の場合であったも、会葬者が持参した香典については、法人の収入としないで、遺族の収入にすることができる。
「耐用年数」と「耐久年数」という似たような用語がある。
耐用年数は税法用語であり、「使用可能年数」ということである。
一方、耐久年数は「使用できる最大限の年数」ということである。
税法上の「耐用年数」は大きな修繕費を要しないで使う事ができね年数として、省令で定められている。
例えば、放送用の鉄塔の耐用年数は40年と定められているが、東京タワーは築56年過ぎても問題なく使用されている。
株式売却の取扱いの基本は、「有価証券の評価損を計上してはならない」という課税上のルールがある。
元々、法人税法は土地や有価証券などの評価損を損金に計上することを認めていない。
これを認めると、恣意的に決算により適切な納税が回避されるからである。
また、評価益についても同じで、会社の決算が赤字の時に評価益を刑事用して赤字を埋め、将来大きく黒字に転じた時に評価損を出して利益を減額する、という事が可能となるので、評価益の計上も認められていない。
法人税基本通達には、「看板やネオンサイン、どん帳のように専ら広告宣伝の用に供されるものは、受贈益の対象にしない」という規定がある。
受贈益とは、経済的利益という意味。
つまり、経済的利益がない広告宣伝費資産として扱えるのは、看板やネオンサイン、どん帳に限られ、これらに該当しない「テレビ」は社名が記載されていたとしても、受贈益の対象となる。
更新されていないホームページは立て看板のようなものだから、無形減価償却資産として焼却しなければならない。
その場合の耐用年数は、更新しなかった期間となるが、あらかじめ更新しない期間を定めて償却するということは無いので、税務調査の時に指摘されて、遡って経費処理をすることとなる。
個人費用を会社が負担した場合、その費用相当額は社員または役員の給与とみなされる。
そして、社印や役員の扶養家族が支払うべき費用を会社が負担した場合には、その負担相当額は扶養者である社員または役員の給与とみなされる。
通勤手当が非課税扱いとされているのは、給与所得者がこれを自由に処分することができないからである。
現在、通勤手当の非課税限度額は欠がく10万円までであり、この金額を超すと超した金額分が課税対象となる。
月額10万円というと、東京駅から西は静岡県の掛川の少し手前となる「金谷駅」までの1ヶ月定期代に相当し、距離にして245キロとなる。
海外渡航費について法人税基本通達には、
「その海外渡航が当該法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、当該渡航のため通じ様必要と認められる部分の金額に限り、旅費としての法人の経理を見とめる」とあり、
・観光渡航の許可を得て行う旅行
・旅行の斡旋業者が行う団体旅行に応募してする旅行
・同業者の団体などが主催して行う、主として観光目的と認められるもの
は原則として法人の業務の遂行上必要な海外渡航に該当しない、としている。

2015年7月23日木曜日

2016年1月からマイナンバー制度(社会保障・税番号制度)が始まる。
最終的には銀行預金の管理までマイナンバーが使用される予定だが、最初は給与の源泉徴収票や社会保険の手続きから、社員本人や扶養家族のマイナンバーが適用される。
マイナンバー制度は「社会保障・税番号制度」と呼ばれるように、社員の給与と社会保険と年金を連動させて、課税の公平や医療費や年金の支給に漏れがないようにするのが目的である。
課税の面からすると、架空社員の排除という大きな効果が期待されている。
マイナンバーから実在の人物なのか、実際の勤務先はどこなのか、瞬時にチェックが可能となるからである。
税務署も株主と同様に、定款に定めのない営業行為をして損失を出した場合には、それは役員個人の営業行為であって、法人の営業ではないので、その損失を法人で計上することはできない、という考えを持っている。
業務の拡大には定款の営業目的の変更が重要になる。
決算書上の利益を減額しようとする場合、真っ先に考えられるのが「在庫の圧縮」である。
売上帳も仕入帳も経費帳もいじることなく、在庫という数字を減らすだけで、利益を減額できるからである。
もちろん、それを一番知っているのは、税務調査官であり、彼らは在庫の数字をいじりやすい業種を心得ている。
家具店、家電店、自動車販売店などの税務調査では、現在在庫の調査が行われる。
本来、個人が支払うべき「母校への寄附」を会社の経費で計上した場合、社長の給与として扱われる。
個人が負担すべき費用を会社が負担すれば、寄附金に限らず負担すべき人への給与として扱われる。
寄附金に関しては、法人税の通達で「負担すべき者に対する給与とする」と定められている。
寄付金には損金に算入できる限度額が決められている。
なぜならば、限度額を設けないと「納税するより寄附をした方が喜ばれる」という理由から、際限なく法人の経費が使われて、適切な課税ができなくなるからである。
当然、寄付する相手が国や地方公共団体であれば、納税した事と同じになるので、国や地方公共団体に対する寄付金の額については、損金算入の限度額は設けられていない。
一般の寄付金についての損金算入の限度額は
(資本金の額×2.5/1000+所得の金額×2.5/100)×1/4
となる。
具体的には資本金1億円、所得金額1000万円の法人だと、12万5000円が損金算入限度額となる。
使い途を明らかにできない「使途秘匿」の支払は、損金に算入することはできない。
これは使途が分からなければ損金性の判断ができないという見解となるのである。
使途秘匿金がある場合には、通常の法人税に加えて、使途秘匿金の40%を課税することになっている。
仮に法人の課税所得がマイナスであっても、この40%は課税徴収され、重加算税の賦課対象にもなる。
40%の税率については、受け取った側の税金も負担させるという意味があると言われている。
原則として、帳簿に支払先の記載がない場合には、使途秘匿金とされる。
商取引上、特別な事情があり帳簿に記載ざきなかった場合には、税務調査の段階で事情を説明して、それらの支払先を開示すれば、使途秘匿金の扱いはなくなる。
税金用語は難しい。
使途、つまり使い途が踏めてなカネという意味で「使途不明金」と「費途不明金」という2つの用語が使われており、両者の区分は明確ではない。
使途も費途も同じように思えるが、両者には使い分けがある。
税法が一般的に使っているのは「費途不明金」で、使い途ではなく、使った理由が分からないという意味である。
費途が分からないのは、交際費ということになる。
税務署の通達には「費途不明の交際費等」という言い回しで出てくる。
支払われた事実や支払先は分かるのだが、何のために支払ったのかが分からない費用を「費途不明の交際費」と呼び、法人の業務遂行に関係のない支出、つまり費途が分からない費用は損金に計上することができないと規定されている。
税務調査では、調査官は年間に20社を越す調査を担当し、一方の調査を受ける企業の方は5~7年にたった一度の調査を受けることになる。
比率にすると120対1と、圧倒的に調査官の方が件数をこなしている。
だから税務調査における調査官の調査方法、処理の方法を知っておく事が重要となる。
2015年7月1日の出国から「出国税(みなし譲渡益課税)」が導入された。
その概要は、有価証券やFX・匿名組合の持ち分の含み益の合計が1億円以上の日本居住者に対し、出国時の含み益について、譲渡があったものとして、所得税と住民税を課税するというものである。
ただし、出国日から遡って10年間で日本居住金が5年以下である人は含まないように配慮はされている。
実は、このような出国時の課税は多くの国で導入されていて、主要7カ国(G7)で導入していないのは日本だけだった。
しかし、未実現の利益に課税されるので、実際に売買した時に利益が出なかった時はどうするのか、海外移住ではなく商社などの社員の駐在はどう扱うのか、更には実際に「過度の節税」を防げるのか、様々な課題が残っている。

2015年7月20日月曜日

厚生労働省が勤労統計調査の2015年5月の確報値を発表した。
物価の変動を考慮した実質賃金が前年比で横ばいとなり、マイナスからの脱却は25ヶ月ぶりだった。
また、2015年5月の現金給与総額は26万8千円余りと2ヶ月連続で増加している。

2015年7月19日日曜日

東京証券取引所の資料から株主の変遷を見ると、終戦後に実施された株式の個人への売却、戦後からバブル期までの株式持ち合いとその解消により、日本企業の株式保有構造は大きく変わっている。
1949年に7割近かった個人の比率は下がり続け、現在では2割近辺で推移している。
金融機関の比率はバブルの絶頂だった1989年まで増え続け4割に達したが、その後こちらも下がり続け、現在は26%程度である。
その分、比率を最も増やしているのは外国人投資家で、その比率は1994年以降に伸びており、2003年以降は2割を常に超え。2013年には3割を超えている。
さらに名義は国内信託銀行となっているが、実際の保有者は外国法人ということもあるため、実際には比率は高くなる。
つまり、日本企業の富の3割は海外に流れているのである。
国税庁の民間給与実態統計から資本金10億円以上の大企業の給与総額を見ると、2012年から2013年にかけて給与総額は43兆9187億円から44兆8201億円と2%増えている。
また厚生労働省の調査によると主要企業の2013年度の月例賃金の上昇分が前年比で1.8%となり、賞与の増加分を加えると2013年の大企業の賃上げは2%程度と考えられる。
これらの統計から、大企業が2013年に支払った給与は前年比で1兆円程度増えたと考えられる。
次に2012年度と2013年度に支払われた配当に自社株買いなどを加えた株主還元総額の推移を見ると、全上場企業による2012年度の株主還元総額は8兆7600億円(配当7兆600億円、自社株買いが1兆7000億円)だった。
それが2013年度には10兆3400億円(配当8兆4200億円、自社株買い1兆9200億円)となった。
つまり18%の増加となり、前年比が金閣で1兆5800億円増えており、企業は給与増額分1兆円に対して、1.5倍を株主に還元した事になる。
さらに2014年度の株主還元総額は12兆7000億円を超えると想定されており、前年比で23%も増加し、差し引きでも2兆円となる。
2015年貼るに賃金が2.3%上昇して1兆円給与が増えたとしても、その2倍の額が株主に分売されることになる。
トマ・ピケティの指摘の通り、大企業の富は労働者の賃金よりも多く、株主に分配されているのである。
資本を持っていなければ、分配がもらえない構造になっている。
日本のGDPの1.7倍にも当たる巨額資金が、年0.02%しか富を生まない預貯金に眠っている。
5%の40兆円を経済の現場へ向かわせるだけで、8%の成長要因となる。
預貯金で得る金利収入は年0.02%程度でしかなく、100万円を2倍の200万円にするのに、3600年かかるのである。
これまで、世界の株価は平均すると過去100年の間、年率10%強で上昇している。
そして、世界人口は2050年に向けて毎日16万8000人ずつ増え続ける事を考えると、今後も年10%の伸びを規定できない話ではない。
個人金融資産1654兆円のうち815兆円が銀行で預貯金として眠っているが、そのうち200兆円は郵便貯金で、600兆円が民間銀行となっている。
銀行預金については1000万円までの預金元本を保証すべく、預金保険機構に資金がプールされていることになっている。
しかし、実際に預金保険機構には1兆6880億円(2014年3月末)しか資金プールされていない。
銀行は130兆円の国債を保有し、郵貯は資産の7割、簡保は9割が国債保有となっているという。
日本国債暴落と長期金利の急上昇、それにインフレの可能性を無視していると、大変な財産リスクに直面することも有りうる。
日本銀行は2014年末で既に国債発行残高の25%を保有しており、2015年末には35%を超えるとされている。
日本銀行が国債を購入する資金は、日本円を発行できる特権があるが故に、国債を買い続けることができる。
他にも日銀は銀行からの当座預金を預かっており、その資金でも国債を購入している。
国が発行した国債を、銀行が購入し、さらに銀行から日銀が買い取る。
銀行が日銀に国債を売って得た資金の一部は、当座預金として日銀に預けられ、その資金が更に国債購入に向かう。
国と銀行、日銀の間で、国債を通して資金がグルグル回っていて、その輪が新規国債の発行分だけ大きくなっているのである。

2015年7月18日土曜日

現在、個人金融資産1654兆円のうち815兆円が預貯金として眠っており、この預貯金から日本の家計が得られる収入は、金利が年0.02%前後なので、1630億円程度でしかない。
通常の金利水準となる3~4%ならば、国民の金利収入は24兆円から33兆円に跳ね上がる。
この半分でも消費に回るだけでも、日本経済には2.5~3.4%の成長要因となる。
日本では個人消費がGDPの6割を占めているということを忘れてはならない。
日本の個人金融資産の内訳(2014年9月末、日銀速報)
現金    56兆円 
預貯金  815兆円 ←既に金融機関経由でかなり国債保有している。
債券    28兆円
投信    86兆円
株式    89兆円
保険   239兆円 ←既に金融機関経由でかなり国債保有している。
年金   205兆円 ←既に金融機関経由でかなり国債保有している。
その他   70兆円
合計   1,654兆円
負債勘定  363兆円
純個人金融資産  1,291兆円
現在は国債費といっても23兆円のうち、国債発行費用12兆円は別として、毎年の利払い費は10兆円程度に収まっている。
これは金利水準が10年物の長期債利回りで0.4%程度だからである。
黒田日銀総裁が達成させようとしている2%インフレ目標が現実味を帯びてきたら、市場金利は2%にスライドして上昇していくことになる。
すると毎年発行が続いている新規国債の発行金利も2%に跳ね上がる。
例えば40兆円の新規国債発行だと、現状の0.4%なら利払い費は1600億円だが、2%になると8000億円に膨れ上がる。
単純に700兆円を超す国債発行残高で見ると、いずれ借換えが進み既発国債の全てに2%の金利上昇が定着すると、国債の利払い費は14兆円上乗せされ、現在23兆円の国債費が37兆円に跳ね上がる。
しかし、2%インフレ目標が達成する頃には長期債利回りは3~4%へ跳ね上がる。
そうすると国債の利払い費は50兆円を超え、ほぼ税収額と同じになることも有りうる。
1999年度から2015年度までの16年間、日本の国家予算の国債依存度は40%前後がずっと続いている。

<国家予算における国債依存度>
    国債依存度 うち赤字国債
1999年  37.9%   26.5%
2000年  38.4%   27.6%
2001年  34.3%   23.7%
2002年  36.9%   28.6%
2003年  44.6%   36.7%
2004年  44.6%   36.6%
2005年  41.8%   34.3%
2006年  37.6%   30.7%
2007年  30.7%   24.4%
2008年  30.5%   24.2%
2009年  37.6%   29.0%
2010年  48.0%   41.1%
2011年  47.9%   41.3%
2012年  49.0%   42.4%
これはあくまでも予算編成段階での数字に過ぎず、決算時の国債依存度が更に酷くなる。
最近では最も酷かったのは2009年度で、51.5%と予算の半分を国債発行という借金で賄っているのである。
この16年間だけでも予算ベースで720兆円もの国債発行をし、日本のGDPの1.5倍もの借金を膨らませてしまっている。
首都圏の不動産価格は「の」の字で上昇していく。
都心部から品川、川崎、横浜へ。
次に多摩エリアで上がり、埼玉県に波及していき、最後は千葉県となる。
この値上がりの動きを地図上でたどると「の」の字になるという。
現在は「の」の字の動きは、都心に留まり、そこから先はまだ穏やかであり、23区でも山手線の外側で城西エリアの江戸川区や葛飾区には、お手頃価格の新築物件が多くある。
超高層タワーマンションの中には、築16年目から毎月払う管理費・修繕積立金が急激に増えるケースが出てきている。
70平米の3LDKで管理費・修繕積立金を合わせた金額は、新築当初は月額4万円程度だが、16年目から月額8万円へ倍額になる値上がりが起きている。
超高層タワーマンションは、エレベーターの使用頻度が高く、運転電気代が高額となり、また特別仕様の長いワイヤーを定期的に交換せねばならない事などが、メンテナンスの経験から明らかになってきた。
超高層タワーマンションは、築年数が16年を超えると維持費が高額になるのである。
中古マンションの売却では、築年数が重要になる。
買い手からすると築20年以上は古すぎる。
築25年を超えると、住宅ローン控除も基本的に適用外となってしまうので、買い手のインセンティブが大きく下がってしまう。
買い手からすると「築15年目」までの物件が好ましい。

2015年7月17日金曜日

都心部と城南エリア、川崎市、京都市、仙台市で「マンションバブル現象」が起きており、中でも人気が集中しているのがタワーマンションである。
典型的な例が、JR目黒駅徒歩1分の立地で分譲される「ブリリアタワーズ目黒」で、全940戸のツインタワーマンションである。
立地の希少性から、かなりの高値が予想されたが、検討客に示されている価格から推計すると平均坪単価は600万円になるそうだ。
これまでに2万件以上の資料請求があり、モデルルームの見学予約も殺到しており、短期完売が予定されているという。
山手線の2駅離れた大崎駅から徒歩3分の立地に駅から屋根付きのデッキでアクセスできる「大崎ウエストシティタワーズ」という1084戸のタワーマンションがあるが、6年前の2009年に竣工後、販売期間8年以上を費やして今年2015年にやっと完売したという。
この物件の平均坪単価は300万円後半で、竣工時にリーマンショックに襲われた事も災いしたが、6年前の市場感覚では坪単価300万円後半は割高と言われていた。

2015年7月15日水曜日

<コンビニの売上高(2013年度)>
セブンイレブン   3兆7813億円
ローソン      1兆9454億円
ファミリーマート  1兆8627億円
サークルKサンクス   1兆189億円
ミニストップ      3499億円
デイリーヤマザキ    2100億円
セイコーマート     1817億円
NEWDAYS         999億円
スリーエフ         885億円
ポプラ           832億円
経済産業省がまとめた2014年のクレジットカード利用額は42兆4322億円と、前年比10%増。
矢野経済研究所は、クレジットカードショッピングの市場規模は2018年には60兆円になると予測している。
贈与税は相続税回避を防止するための補完税であり、贈与税と相続税はセットなのである。
オーストラリア人に相続税がない理由を訪ねると、こう答える。
「親が死んだ時は、人生で一番悲しい時の一つだろう。そんな時に追い打ちをかけるように税金を取るなんて、非人道的だよ」
一橋大学の森口千晶・教授は「成人人口の上位0.1%の超富裕層の平均所得は、米国が3億8000万円なのに対して、日本は5500万円に過ぎない」と述べている。
日本において、超富裕層の割合は米国に比べて著しく低い。
社会主義国の中国を始め、オーストラリア、シンガポール、スイス、カナダなど社会主義税制と言われる相続税を廃止している国が多いし、世界の多くの国が相続税の減税に向かっており、「格差是正」の名のもとに増税に向かっている先進国は日本だけである。
アメリカでは遺産税が35%から40%に増税されたが、1人当たり500万ドルまで非課税、つまり夫婦で12億円の基礎控除がある。
日本は今回の相続税改正で6億円の遺産に55%の税率がかかり、さらに配偶者と子供2人だと4200万円から相続税がかかる。
相続税が重すぎる最大のデメリットは、結果平等税制であり、働く意欲をうしなってしまうことである。
相続税の節税対策というのは、極めて後ろ向きの対応であり、エネルギーと時間の浪費である。
2013年の国税庁統計によると、人口の4.8%に過ぎない給与所得1000万円超の人が、所得税額の49%も負担している。
小金持ちかもしれないが、大金持ではない人達が所得税の半分を担っているのである。
消費税率も世界的にみてかなり低く、ごく少数の人達のみが税金を負担しており、税引き後の収入格差は小さいのである。
ノーベル賞経済学者で、シカゴ大学のゲーリー・ベッカー教授は、「人間は豊になると、優れた教育などで子供の質を高めようとする。親が豊になって金銭的な余裕ができると、子供の能力の向上にお金や時間をかけることを優先し、子供の数は増やさない」と述べている。
「豊かになると子供の数が減る」ことは、歴史的に地理的にも言える。
現在の日本の合計特殊出生率が1.43なのに対して、経済的に貧しいはずのアフガニスタンは5.14、ソマリアは6.67、コンゴ民主共和国は6.04である。
ベッカー教授の理論が正しければ、「教育の重要性を理解した日本人は、いくら政府が努力をし、少子化対策の予算を投入しても出生率は増えない」という事になる。
それならば、年金支給開始年齢を70歳以上にするなど、年金制度の変更をする方が合理的である。
日本政府は「買いオペと引き受けは同一ではない」と主張しているが、現在、日本銀行は年間80兆円もの長期国債を買い増している。
新発債と借換債を合わせた発行額153兆円の7割を日本銀行が購入している。
これは実質的な「日銀引き受け」であり、マネタイゼーションである。
入札後、数日間だけ民間金融機関が保有し、すぐに日銀が購入している。
銀行も日銀に転売して手数料を稼ぐために入札に参加しているのである。
日本では1998年の外為法改正まで、個人は直接海外投資をすることができなかった。
個人が生命保険を買い、生命保険会社が海外投資をすることによってのみ資金が海外に流れていた。
外為法は別件逮捕にしばしば使われていたので、個人が海外に投資することは非常にまれであった。
外為法改正直後に海外投資が始まった結果、円が売られ1997年7月には115円だったドル/円は1年後には147円にまで円安となった。
銀行にも持ち高規制があり、円売り/ドル買いの限度額が決められていた。
ただ、この規制は国内だけの規制だったので、東京時間15時にシンガポール支店に一時ポジションを移し、15時を過ぎたら本店に戻すという抜け穴があった。
さすがにこれらの規制は無くなったが、100万円以上の海外送金は税務署に届けねばならない規則は、海外投資をする上で精神的な障壁になっている。
政府の財政が破綻すれば、政府といえども国民を守ることはできない。
個人としては、財政破綻というハードランディングの保険として、外貨資産を購入しておく必要がある。
購入すべき外貨資産は世界最強の国の通貨「ドル」を中心にして、先進国通貨に分散するのが理想的である。
具体的には、ドル預金よりはMMF(マネー・マーケット・ファンド)の方がよい。
外貨預金は為替リスクはあるが元本保証なのに対して、MMFは元本保証ではない。
しかしドルのMMFは、1年未満の米国国債や一流企業の1年未満社債で運用されているので、元本割れの可能性は低いので、ドル預金とMMFとは大きなリスク差はない。
違うのは税制で、外貨預金の為替利益は雑所得として確定申告が必要な総合課税であるため、高額所得者だと税額が馬鹿にらないし、その年に雑役がなければ為替で損をしても相殺ができない。
為替で損をした場合と利益が出た場合とが著しく不均衡となっている。
一方、ドルのMMFは、2015年末までは換金時の利益が期課税となっている。
2016年から申告分離で税率は20%となってしまう。
倒産リスクに関しては、ドル預金は預金した銀行に対するリスクなのに対して、MMFは購入した証券会社ではなく運用会社に対するリスクとなる。
日本はバブル崩壊後、「大きな政府&低負担」というルーズな政策を続けてきた結果、累積赤字は1030兆円にもなってしまった。
こうなると補填するには「大増税&大幅歳出カット」か「インフレ政策」しか財政再建の道はない。
大幅歳出カットは社会保障費のカットが中心となる。
社会保障費は財政学上は「所得の再分配」だから「税収に見合わない格差是正政策」の修正ということになる。
国債費は過去の社会保障のツケであり、地方交付税の大部分(25%)を占める民生費の多くが社会保障費であるので、歳出の4割が社会保障費と言われている。
2014年度の予算段階では歳出規模は96兆円だから、その4割とすると38兆円となる。
税収は50兆円なので、税金で集めた額の8割を再分配してしまっているのである。
日本政府が2020年にプライマリー・バランス黒字化にこだわるのは、その後に「名目成長率>長期金利」を達成すれば財政は大丈夫という論理立て(ドーマの法則)からである。
しかしその一方で、厚生労働省は年金の信頼性は「名目の運用利回りが賃金上昇率をいくら上回っているか(スプレッド)が大切」と言っている。
つまり「名目成長率<長期金利」であれば年金財政は安泰だと言っている。
これでは年金財政が安定しても、日本政府は基礎的財政収支が黒字化しても借金は減らない破産状態になってしまう。
日本政府は財政再建では「名目成長率>長期金利」を前提とし、年金の健全性では「名目成長率<長期金利」と、全く逆の前提で国の将来を国民に説明しているのである。
1980年を1とした各国の名目GDPの推移(自国通貨建て)
    1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2013年
日本   1.34  1.82  2.04  2.07   2.04   1.96   1.94
米国   1.51  2.08  2.66  3.57   4.53   5.23   5.86
ドイツ  1.25  1.66  2.41  2.67   2.90   3.25   3.57
英国   1.55  2.46  3.18  4.18   5.42   6.37   6.92
フランス 1.68  2.34  2.70  3.28   3.91   4.41   4.66
イタリア 2.11  3.39  4.59  5.77   6.92   7.48   7.52
スイス  1.33  1.80  2.03  2.29   2.54   3.04   3.20
韓国   2.19  4.89  10.5  15.4   22.3   30.7   34.7
中国   1.98  4.17  13.7  21.3   40.5   87.0   126.7
青色ダイオードを発明したカルフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二・教授は、発明時に日亜化学工業が出した報奨金は2万円だった。
最初に中村教授が裁判で日亜化学に要求したのは20億円で、3度の増額で200億円になった。
東京地裁は2004年1月に請求通り200億円の支払いを日亜化学に命じたが、結局、日亜化学の支払額は8億4000万円に減ってしまった。
世界標準では世帯収入が年間5000ドル(60万円)から3万5000ドル(420万円)が中間層で、それ以上が富裕層という扱いになる。
この世界標準で考えると、日本人は全員が富裕層か中間層となり、生活保護受給者も入れると日本には低所得者はいなくなってしまう。
〇名目GDPの成長比較
        1997年      2013年
日本     523兆円     478兆円      ▲9%
米国     86,085億ドル   167,681億ドル    1.9倍
英国     8,454億ポンド  16,128億ポンド  1.9倍
中国     81,659億人民元 586,673億人民元  7.2倍
シンガポール 1,487億S$.   3,728億S$.    2.5倍
韓国     533兆ウォン   1,428兆ウォン    2.6倍
豪州     5,735億AUD   15,550億AUD   2.7倍

〇1993年から20013年の20年後の名目GDPの比較
米国 2.4倍
英国 2.4倍
豪州 3.4倍
シンガポール 3.8倍
韓国 4.5倍
中国 15.9倍
日本 ▲3%

2015年7月13日月曜日

近年、合同会社(LLC)の設立件数が増えて来ている。
法務省のデータによると、合同会社という制度ができた2006年から2013年の合同会社の登記件数は、次の数字となっている。
2006年 3392件
2007年 6076年
2008年 5413件
2009年 5771件
2010年 7153件
2011年 9130件
2012年 10889件
2013年 14581件
合同会社のメリットは、所有と経営の一体化、意思決定の早さ、有限責任である、決算公告の義務がない、定款自治の範囲が広い、利益配分が自由など、スモールビジネスとして運営していくのに適した形態という点である。
設立コストの安さも魅力であり、合同会社の登録免許税が6万円と株式会社の15万円より9万円安く、初期投資を抑えることができる。

2015年7月12日日曜日

日露戦争はアジアの島国日本がヨーロッパの強国を破った戦争として、アジアのヨーロッパ化を阻止する日本の地位を確立した。
1945年3月10日にあった東京大空襲は、明らかに戦時国際法違反の無差別爆撃で、極めて残虐な行為だった。
なぜ3月10日だったかというと、3月10日は陸軍記念日で、1905年に奉天の会戦で日本がロシア軍を破った日だった。
日露戦争の象徴的な日は2つあり、もう一つは日本海大海戦の5月27日で、これは海軍記念日となっている。
3月10日の陸軍記念日に大空襲を行い、それに対して大日本帝国は全くなす術がなく、国民が焼け死んでいくのをただ傍観するしかないので、日本陸軍の姿である、という事を可視化する為に3月10日というシンボリックな日を選んだ。
ヨーロッパのアジア進出を阻止したシンボリックな日が1905年3月10日であったとするならば、それが幻想であることが可視化されたのが、1945年3月10日の東京大空襲だった。
日本の左翼の問題は、ソ連の崩壊を正面からきちんと踏まえていないことである。
日本共産党は、ソ連崩壊時に「我々はソ連体制とは関係ない」と明言したが、ソ連に憧れていたのは間違いない。
日本の共産党中央委員の連絡員は、ソ連崩壊まで赤旗の記者の身分でモスクワに駐在していた。
日本で革命を起こす際に、ソ連との調整をするために駐在していたが、住宅費や光熱費はソ連共産党が負担してくれていた。
それだけでなく、モスクワ大学に留学させたいが、裏口入学をさせてくれというお願いの記録も全部残っている。
社会党左派の社会主義協会も、共産党以上にソ連に憧れていたが、彼らもソ連崩壊の要因に取り組もうとしなかった。
ソ連崩壊後も左で元気なのは、JR総連、JR東労組くらいである。
JR総連委員長だった松崎明は、元々革マル派のナンバー3で、その後、革マル派とは決別しているが、反スターリン主義では一貫していた。
ソ連は社会主義国ではない、ろくでもない国だから滅びて良かったぐらいの感覚でいたので、JR総連はソ連が実際に崩壊しても社会主義が間違ええていたとは思わず、組織もきちんと維持できたのである。
現在の日本にとっての最大の脅威は、反知性主義である。
論理整合性を通常のレベルで重視した場合、アベノミクスというのは出てこない政策である。
金利が限りなくゼロに近い時にお札を刷るのは、どう考えても金融政策とは言えず、これは財政政策である。
金融政策と財政政策の区別もつかないような議論になってしまっており、明らかな反知性主義からなされるものである。
また、内閣総理大臣と内閣官房長官の双方が偏差値秀才でないのは、極めて異例なことである。
小泉進二郎の人気も明らかに学歴エリート、偏差値エリートと別の所に求心力が集まっており、明らかにその流れの中に反知性主義がある。
反知性主義は危機の時代において必ず出てくる。
反知性主義は、状況によると破壊行動や暴力性に変わる可能性があり、怖い存在である。
バチカンは未だに台湾とは外交関係を持つが、中国との間に外交関係はない。
バチカンは中国との関係の調整を何度も試みてきたが、中国政府がどうしても譲らない事が1つだけある。
それは高位聖職者の人事権で、高位聖職者の人事権は中国の天主教愛国会が持っているという。これは共産党が作ったダミー団体で、プロテスタントの方は三自愛国教会という団体がある。
バチカンが外交関係を結ぶのはコンコルダート(正教協約)で、通常の外交関係ではなく、神様の世界の領域と世俗の人間の世界の領域を区別する条約である。
神様との条約なのでバチカンにも絶対に譲れない点として人事権がある。
中国が人事権を認めないという理由で、外交関係が樹立できない。
これは中国は世界の普遍的な価値を共有できない国だというキャンペーンにバチカンが入ってきていることを示している。
ネポティズムというのは甥を重視する主義「nephew」で、要するに縁故採用の意味である。
なせ甥かというと、ローマ教皇と関係している。
ローマ教皇は独身で、自分の血が一番近いのは、甥っ子になる。
だから甥っ子を一族の利益代表として縁故採用の形が生まれてきた。
日本の仏教は妻帯ができるが、妻帯ができるというのは、仏教の力が弱くなったことを示している。
カトリックが妻帯を認めない独身性を続けているのは、宗教が権力を持っているからで、権力を子供に継承していくと社会的に大変なアンバランスが生じてしまう。
だからカトリックは独身制にしているのである。
似ているのは中国で採用された宦官で、去勢をしてしまう事で、子孫を作れなくし、血族による権力の継承を宦官制度が防止していた。
プロテスタントが妻帯を認めているのは、宗教としての権力がカトリックに比べて圧倒的に弱いからである。
ロシア正教やギリシャ正教は、もっと面白いシステムを採用しており、司祭を二つに分けている。
キャリア組の司祭は黒司祭といって、ノンキャリア組は白司祭という。
白司祭のトップは黒司祭の一番下と同じランクになり、白司祭は結婚することができ、黒司祭は結婚ができない。
大きな権力は継承させない、それほどでもない権力は継承が可能という、巧妙なシステムにしているのである。
今から30年くらい前までは、ルネサンスと宗教改革は、近世もしくは近代に分類されていた。
しかし今の高校の教科書では、そのあたりがあいまいになっている。
岩波書店の『講座世界歴史』には1969年から71年に出た本と1990年代半ばに出た本の二種類あるが、後者は時代区分がされておらず通史という考え方を否定しているので、外交官には役に立たない。
通史や時代区分というものは、欧米の帝国主義が力を持って歴史を裁断していった歴史観に過ぎない、という考え方になっている。
ロシアの歴史教科書は今でも時代区分をしている。
ソ連時代から時代区分は変わらず、ルネサンスも宗教改革も中世になっている。
中世と近世の境界線は1648年で、要するに30年戦争ほ終結してウェストファリア体制が成立することによって、国際関係は宗教ではなく、国家という要因で動くようになり、その結果、近代的な国際法が昨日し始めた。
以上の理由から中世と近世の境目は1648年に置くという考え方である。
宗教が基準で動いていた時代と、国家が基準で動くようになる時代の境目はウェストファリア体制である。
戦前の日本の教育システムが優れていたのは、エリートが四分割されていた点である。
現在の日本はアメリカ型のシステムに則っており、エリートをつくるのは一本線になっており、エリートになるには職業科の高校ではなく、普通科の高校。そして四年制大学に行って大学院へ、という流れが出来上がっている。
これに対して戦前は、まず軍人か非軍人かで分かれた。
軍人は陸軍幼年学校、あるいは中学校の途中から海軍兵学校か陸軍幼年学校に移り、エリート軍人としてのキャリアパスがあった。
もう一つは、中学校から高等学校に進み、それから帝国大学に行くというキャリアバス。
あるいは中学校から専門学校に行くキャリアパス。専門学校も東京商大(現在の一橋大学)、小樽商大、大阪商大(現在の大阪市立大学)といった所は、ビジネスの世界では東京大学経済学部よりも活躍できる環境にあった。
また実用語学、ロシア語や中国語は専門学校の方がレベルも高かった。
ちなみに高校は国際基準では中等教育であり、高校は高騰中学校という意味になる。戦前の高校、いわゆる旧制高校への新確率は1%程度で、高校入試に合格すれば東京大学法学部のような特殊な所を除いて、どこの大学でも行けたので、事実上は大学試験というのは無かった。だから高校進学と大学進学の率は殆ど同じだった。
私立大学は別の枠で、私立大学の入学試験が現在のように難しくなったのは、1970年代の半ば以降で、それでは圧倒的に国立大学の方が難しかった。
しかしこのようなコースに進む為には最低条件として授業料を払えないと進めなかった。
成績は良くて中学に進学させたいが経済的余裕がない子供は、小学校を卒業した所で師範学校に行った。師範学校の授業料は免除されており、寄宿舎や食費や小遣いも国が出してくれていた。
高等師範学校は、師範学校の教員を養成するためにあり、広島高等師範や東京高等師範が最高学府だった。
高等師範を終えた中には教員よりも研究者としての資質がある人材を教育する目的でできたのが東京文理科大学だった。この後の東京教育大学、現在の筑波大学である。
戦後にアメリカが、複数あった日本のキャリアパスょ一本化してしまったのは、良くなかった。
アメリカは日本が全世界を敵に回しても戦争ができたのは、日本の教育システムが良かったからだと考えていた。
だからアメリカと同じように一本化すると同時に、中学校を高校に昇格させ、高校を大学に昇格させ、その結果、実質的な大学は無くしてしまうという戦略があったという。
だから戦前の大学の卒業論文は、現在の博士論文のレベルであり、大学に所蔵されている過去の卒業論文を見ていくと、じんじん劣化していることが分かる。
2013年1月に発生したアルジェリア人質事件の時に、偶然、クロアチアにいた城内実・外務政務官を、安倍総理はアルジェリア入りさせ、結果はうまくった。
城内政務官は、元外務省のドイツ語のキャリアだった。
通常、ドイツ語のキャリアというのは、ドイツ語の勉強をあまりしない。
ドイツは敗戦国なので、ドイツ語は国連公用語になっていないからである。
しかもドイツ人の殆どが英語を話せるので、仕事は英語でできてしまう。
なぜ未だにドイツ語が外務省のキャリア研修語で残っているか、ということ自体が不思議である。
これは戦前の日独伊三国軍事同盟の残滓と言われている。
城内政務官は、ドイツ語キャリアであるにも関わらず、総理通訳を務めている。
総理通訳というのは、語学レベルが若手の中で上から3番目ぐらいまでに入らないと指名されない。
また城内政務官の父親が警察庁長官てせ、警備公安肌でずっと来ているので、過激派やテロに関しては皮膚感覚でよく知っていた。
その城内政務官が、アルジェリアに現地対策本部を作り、イギリスやフランスと連携し、アルジェリア政府と接触するための国際グループを作った。
そこで情報の真偽を判断し、おかしな情報は東京に報告しなかった。
アメリカに頼らず、イギリスを頼ってイギリスの判断を仰いだので、混乱することがなかった。
ボランティアとは、何の見返りも求めずに社会に貢献することである。
このボランティアを、かつて日本は「翼賛」と言っていた。
翼賛は強制ではなく、自発的に国家を支持することである。
大政翼賛会は強制ではなく、政党が自発的に政党を解消したもの、ということになっている。
大政翼賛会には、色々な企業も自発的に参加し、個人も自発的に参加した。
翼賛体制とは、ボランティア国家をつくるということである。
日本には翻訳に成功しなかった言葉で、カタカナにして済ませている言葉が時々ある。
例えばコンピューターは、昔の辞書にはほぼ「電子計算機」と書かれているが、これは大変な誤訳で、コンピュータにできることは計算だけでなく、人口知能としての機能があることに翻訳した人が気づかなかったのである。
中国はそれに気づいていたので、「電脳」と訳した。
横文字がそのまま入ってくるのは、怖い事である。
日本人は漢字カナ混じりの文化を使うが、その最大の問題は、実は言葉の意味を消化しないでも分かった振りができることである。
デフレかインフレかという議論が一方にあり、景気がいいか悪いかという議論が他方においてある。
この二つの議論は全く関係が無い。
インフレはパラメーターの話でいり、インフレ政策でお札を多く刷り、産業政策がきちんとできない形で一番大きな可能性は、名目賃金の上昇、実質賃金の低下である。
ケインズが当初狙ったのはこれであり、管理通貨政策をしようとしたのは、労働者は賃金がデフレで下がってくると、賃金が下がったと言って怒るから、お札をたくさん刷る。金と結びつかないお札を刷ることで、名目賃金は上昇するが、物価がそれ以上に上がると実質賃金は低下している。労働者はバカだからそれに気づかない、ということである。
これとニューディール政策のような政策は全く別の話である。
ニューディール政策によって、アメリカの景気は本当に良くなったのか、現在の実証研究では否定的になっている。
あの程度のことでは経済に影響を与えられない。
アメリカの経済不況が解決したのは簡単な話で、第二次世界大戦という大規模な公共事業をやったから、アメリカの経済はよみがえり、それが半世紀ぐらい影響力を持つことができたのである。
一神教の本来の性格は、「他の宗教の信者に対しては無関心」である。
一神教徒にとって基本的に大切なのは、神様と自分の関係なので、他の人が何を信じていようが関心は無い。
関心が無いから併存できる。
その端的な例がエルサレムである。
エルサレムは偶発的な衝突はあっても、カトリック教会も正教の教会も、プロテスタントの教会もイスラームの寺院もアルメニアの教会も、ユダヤ教のシナゴーグも全部併存している。
みんな一神教で神様を信じていて、自分が神様との関係でどう救われるかにしか関心がないので、併存できるのである。
EUは基本的にヨーロッパの文化総合が拡大したものである。
ヨーロッパの文化総合は3つの原理から成り立っている。
1つ目はユダヤ・キリスト教の一神教の伝統。
2つ目はギリシャ古典哲学の伝統。
3つ目はローマ法の伝統。
この3つが総合されて、一つの文化になっている。
これが理解できていると、ギリシャ経済危機の本質も理解できる。
ギリシャは3つ目のローマ法の伝統がない。
ヨーロッパの基本になっているのは、西ヨーロッパでありローマ法の伝統が強い。
ローマ法も一つの宗教で、「合意は拘束する」、約束したことは守らないといけない、というのも一つの宗教的な考え方である。
一方、口では約束したが心ではそうは思っていない、ということがギリシャ古典劇ではよく出てくる。
また、ロシアがEUに統合できないのも、ロシアは企保的にビザンツ帝国、東ローマ帝国の後継であって、ユダヤ・キリスト教の一神教の伝統、ギリシャ古典哲学の伝統は持っているのだが、ろーく法の伝統を持っていないからである。
東京大学で一番難しいのは、偏差値からすると医学部で、理Ⅲは偏差値80を超えているので、記憶力が特殊な人しか入れないが、それ以外の所は、努力すれは入れる。
努力家の一番の塊が法学部と言われているが、法学部よりもっと難しい学部がある。
それは専門課程の教養学部で、その中でも内部進学の点数が特に高いのが国際関係論で、その出身者が外交官になっている。
文学部哲学科は、一番の老舗学部だが、ここには内部進学の点は低くて、希望すれば殆ど入れる。
それに対して、駒場の科学哲学の講座は、内部進学の点が物凄く高い。
東大生というのは偏差値の高い所に行きたがる習性があるので、哲学をやりたい学生の多くは、駒場に残るのである。

2015年7月11日土曜日

太平洋戦争末期には、日本のあちこちの都市が空襲を受けたが、絶対に空襲されない場所が2ヶ所だけあった。
箱根と軽井沢である。
なぜ、この2ヶ所が空襲されなかったかというと、中立国の公使館と大使館があったからである。
箱根の強羅にはソ連大使館があり、軽井沢にはスイス公使館があった。
戦時国際法で、外交団が避難している場所はスイスを通じて、あるいはスペインを通じて、日本はアメリカに「ここに中立国の大使館がある」と連絡していた。
アメリカはそれを踏まえて、その地域には絶対に攻撃をしない。
少しでも戦時国際法に関する知識があれば、絶対に安全な場所は軽井沢と箱根だと分かるのである。
だから、その時期に金持ちが逃げ込んだので、箱根・軽井沢はリゾートとして非常に発展した。
1945~1946年ぐらいまでで軽井沢と箱根生まれという人がいたら、その人の親は非常に情報に精通していたということである。
田辺元の『歴史的現実』は2001年に、こぶし書房という革マル派系の出版社から復刻されている。
解説を書いているのが、革マル派の指導者の黒田寛一である。
ちなみに革マル派や中核派、革労協、つまり社会党・社青同解放派の指導者達の思想は、人を殺す思想を作ったから、ものすごく重要である。
本物の思想は、人を殺す。
人を殺すぐらいの力がないと、思想としては実際の力を持たない。
人を殺す思想とは、殺人を奨励するような思想ではなく、思想を受け入れる人間を大義名分のために、その思想のために自分の命を捧げるという気持ちに、必ずさせるのである。
自分の命を捧げるということは、自分の命を大切にしない人ということになる。
そういう人は、他人の命はもっと大切にしない傾向が強い。
人殺しの思想の前提には、必ず自己犠牲が入るのである。
戦後の70年前後の新左翼運動で影響力を持ったリーダー達の思想は、1930年代の日本の思想と構造が似ているところがある。
田辺元の『歴史的現実』は1940年に岩波書店から出版され、大ベストセラーになった。
特攻隊の青年たち、学徒動員の人達が、この『歴史的現実』をポケットの中に入れて突っ込んでいった。
読むと分かるが、個々人の生命は有限であるが、悠久の大義、国家のために命を捧げるならば、それは永遠になるという論理を『歴史的現実』から導き出したのである。
その後、田辺は1941年から何も書いておらず、大学の講義以外の公開講演をしていない。
1944年になって、「懺悔道」について講演をし、その時点で戦争にどうして負けたのかを真剣に考えるのである。
そして戦後に、自分は間違えていたという『懺悔道としての哲学』を出版し、これがまた大ベストセラーになった。
岩波書店は『懺悔道としての哲学』など、田辺が戦後に出したものは復刻しているが、『歴史的現実』は大ベストセラーになったにもかかわらず、復刻していない。
戦時体制に協力した本を、岩波は復刻しない傾向が強く、例えば京都学派の高山岩男の『世界史の哲学』も、1942年に岩波書店から出ていたが、復刻していない。
ミュンヘン大学のオットー・ケルロイター教授の『ナチス・ドイツ憲法論』という本も出していたが、復刻していない。
危機を突破するために神学は非常に重要である。
なぜなら、神学は何度も危機を克服してきているからである。
ずっと続いている宗教は、それだけ危機を切り抜ける知恵を内在しているのである。
マルクスが『資本論』で説明したように、株は犠牲(架空)資本に過ぎない。
株自体は何の価値も生み出さない。
そもそも資本主義は生産を基本とする運動によって利潤を獲得していく。
これを現実資本の運動と言い換えることも可能である。
「持っているだけで儲けになる」という株は、現実資本から株式資本に利潤が移転しただけの犠牲資本に過ぎない。
「危機」は英語で「crisi」(クライシス)だが、そのものとなったギリシャ語の「クリーシス」には、分かれ道、重篤などの意味がある。
今まで未分化だったものが分化されるので、そのうちどちらかを選択しなくてはならない。
その時の選択で運命が大きく変化するのである。
危機はだいたい事後的に分かる。
「あの時は危機だった」とは、危機を克服した時だけ分かる。
危機を克服できないと、そのまま破滅してしまうからであり、危機だったかどうかという反省できる機会すらなくなるのである。

2015年7月10日金曜日

相続税とは、人が死亡した時に、その亡くなった人が残した遺産を相続した人に対して課税する税金である。
現在、我が国では年間に130万人弱の人が亡くなっている。
その中で相続税の申告が必要なほどの財産を残して死亡する人は、平成27年の相続税の改正後で、年間8から9万人と言われている。
つまり、年間130万人の相続が発生しても、93%の人は相続税は発生しない。
トマ・ピケティは『21世紀の資本』の中で「資本主義の第1基本法則」として「α=r×β」の式を提示し、この式は歴史上のあらゆる時点のあらゆる社会に当てはまる絶対法則であるとしている。
αは所得の中の資本シェア、rは資本収益率、βは資本/所得比率であり、rは人類の歴史を通して5%、βは5倍から6倍に決まっており、この2つをかけるとαは30%になると書いている。
つまり年収1000万円の人は、
1500万円×600%(6倍)=6000万円の資産を持っていることになる。
また、ピケティによると、所得は「労働所得」と「資本所得」からなり、その比率は7対3になるとしている。
そして、ピケティは、貧富の差が縮まったのは戦争の時だけだったと主張している。

2015年7月8日水曜日

日本の債権市場規模は8兆2800億ドルだが、その6割以上を償還期間10年の債券を含め、利回りが0.5%を下回っている。