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2016年8月3日水曜日

第一次大戦直前の各国の工業生産力、鉄鋼や石炭の生産量をみると、ドイツ、オーストリア=ハンガリーの同盟国と、ロシア、英国、フランスの連合国は、ほぼ拮抗していた。
ところが、アメリカは一国で両グループと同じ規模の生産力を持っていた。
だから、第一次大戦は大英帝国とドイツの覇権争いに見えるが、実際にはアメリカが唯一の覇権国であることが世界的に明らかになる戦争だったのである。
自分の部下には、優秀な男よりも幸運な男を選びたい。
by ナポレオン
日銀がこれだけ国債を抱えてしまっている中、何かの拍子に金利が上がって債券価格が急落すると、日本経済は大混乱になってしまう。
2016年度予算で、国債費(国債償還額と利払い費の合計)は、23.6兆円に達しており、財務省の試算によると金利が2017年度に4.4%上昇したら、国債費は37.5兆円になるという。
16兆円も利払い費が増加し、これは消費税6%強の引き上げに相当する。
一度、信用不安が起これば、金利が2~3%では収まらず、ギリシャのように7~10%となる可能性もある。
そうすると利払い費が10兆単位で増え、赤字国債で国債調達をして利払いに充てざるを得なず、金利が更に上がっていく。
金利が上がれば国債の価値が下がり、銀行は評価損を計上せねばならなくなり、資本を食っていき、信用不安となる。
1980年代後半のバブル崩壊では、土地投機に失敗して銀行再編となったが、政府が公的資金を投入できた。
今回のような国債の信用不信だと、手の付けようがない。
現在、日本政府が最もやってはならないことは、金利の上昇なのである。
リスクプレミアムで、金利が上昇してい行くことを避けねばならない。
株主の人は「俺たちはリスクを取っている。預金者はリスクを取っていないだろう」とよく言う。
しかし、現在の状況を冷静に考えると、預金者は1000兆円の国家債務と心中する事を選んでいる。
銀行預金はペイオフで1銀行当り1000万円、10銀行に分ければ1億円が守られると言うが、その半分くらいは国債と結びついていいるので、国債が破綻すれば10銀行ともダメになる。
そうなると、日本政府はペイオフ制度によって預金を保護する能力はないので、現在の日本では預金者の方が株主よりもリスクを負っていると考えられる。
株主は瞬時にグローバルにリスクヘッジができる。
現在のリスクとリターンを考えると、預金者の方がより一層、国家と心中する覚悟で預金しているのである。
企業の収益と賃金の変化を折線グラフで見ていくと、2000年あたりで関係が逆転する。
現在は賃金を下げることで企業が儲かるという時代なのである。
景気が回復して賃金が下がるというのは3回連続で続いている。
これは偶然ではなく、意図的にそういう構造になっているという事である。
「アベノミクスで雇用が100万人増えた」と言うが、国税庁の数字を見ると、年収200万円以下で働く人が、ちょうど100万人増えている。
次に「200万円以下といえども二人で働ける機会を作った」「生活が楽になりたいから、旦那が300万円で働いて、奥さんがパートで200万円以下で働く機会を与えれて、合わせて世帯年収が500万円になった」という。
生活が楽になったかどうかは、貯蓄残高の中央値で見る必要があり、100世帯中、50番目の世帯の金融資産額が増えているか減っているかが重要なのである。
夫婦二人で働いて生活に少しでも余裕ができたかどうかは、中央値としての貯蓄残高が増えているかどうかにかかっている。
2002年から2014年にかけて、貯蓄残高の中央値は817万円から、740万円に減っている。
夫婦で共働きで二人で4000時間働いても、貯蓄残高は減っているのである。
一方で、グロスとしての個人金融資産は増えている。
つまり、下位50人の人が減らして、上位50人の人が増やしているのである。
現在、日本の全法人企業には354兆円の内部留保がある。
最終利益から配当など社外流出した額を除いた残りが、内部留保として積み上っている。
しかし、この内部留保は将来の特損の引当金であり、利益準備金と呼んではならない。
事実上の損失準備金なのである。
例えば、パナソニックが2年間で1兆5000億円の最終赤字を出したが、倒産しなかったのは巨額のの利益準備金を積み上げでいて、その一部を取り崩せたからである。
東芝も7100億円の赤字を出し、利益準備金を全部取り崩した。
今後、各企業において、中国からの撤退、エネルギー資源損失が出てくる事を考慮すると、内部留保に対して課税する事はできない。
日本において、2014年に年収200万円以下の人達が1139万人と、割合にして24%となっている。
非正規社員が4割にまで増えてきており、金融資産を保有していない世帯が3割を超えている。
既に日本国民は大きな代償を払っている。
引き続き量的緩和によって資産バブルが生じれば、次に資産価値が暴落し、その後のリストラも覚悟しておかねばならない。
資本主義というのは、資本を自己増殖させるシステムのことであり、増えた資本をどのようにするかには全く関心はない。
当局自らがマイナス金利にするというのは、「一年間じっとしていれば資産が減りますよ」という事である。
つまり事実上、資本の自己増殖はもうできないということであり、マイナス金利政策は資本主義の終焉宣言に他ならない。
マイナス金利とは、預金者という資本家に対して、「もう資本は増えませんよ。もう資本主義は終わりました」という事でなのである。
預金はマイナス金利にはならないが、民間銀行が日銀に預ける時はマイナスだから、いずれは預金者に手数料という形で跳ね返ってきて、預金は目減りすることになる。
既にマイナス金利を導入している欧州中央銀行に於いても、思ったほどの効果は上がっていない。
黒田東彦氏が、2013年3月に日銀総裁に就任してから3年半が経過しようとしている。
就任直後、「2・2・2」と書いたパネルを使って、2年以内に、消費者物価指数を2パーセント上昇、マネタリーベースを2倍、逐次投入はしないと説明した。
そして、2014年10月に消費税値上げの議論がされた時に、日銀は「二弾バズーカー」を撃った。
第二弾バズーカーを放った段階で、量的緩和はあと5年しか続けられない事が明確だった。
毎年、日銀は80兆円の国債を買うと発表したが、新発債は30兆円しかないので、50兆円は既発債から買い上げることになる。
日銀が市場から国債を買う相手は、全て民間銀行との間であり、個人ではない。民間銀行は国債を250兆円持っていたので既発債は5年で無くなってしまうのである。
2016年1月の第三弾では、国債の買い増して100兆円にした場合、5年が3年に短くなってしまい、足下をみられるので、マイナス金利しか手が無かったのである。
もう手詰まりの状態になってしまっている。
戦後史を見ると、吉田茂以来、歴代の自民党政権にとって、憲法9条は、アメリカの覇権主義に対して、「これ以上は付き合えません」という最良の武器となっていた。
それをわざわざ自ら捨てるというのは、リアリズムと正反対の態度である。
「できない口実」としての憲法は、政治的にとても意味があるし、これに基づいて国際社会で貢献するという国家像を描き、ポジティブなメッセージをどう発信するかが問われている。
安保法制は、11本の法律を改正または新設したものをまとめた呼び方である。法律を作るという事は、法律を作らないとできないことをしようとするからで、法律事項は大きく4つにまとめられる。
第1に、自衛隊の派遣の拡大である。
従来、日本周辺に限っていた米軍の軍事行動への後方支援を世界規模で拡大する部分と、自衛隊法を改正して平時からの米艦防護や集団的自衛権による防衛出動がきるようにする共同作戦の部分がある。
平時からの米艦防護は、従来は集団的自衛権の問題として認識されていのにもかかわらず、警察的な武器使用権限という形で、何食わぬ顔で入れられている。
第一次安倍政権でも、今回の安倍政権でも安保法制懇の報告書では、これらは集団的自衛権の一部とされていたのにである。
自衛隊自身が武器で防護するのは、警察的な行動ではあるが、公海上でアメリカの軍艦を防護するとなると戦争に巻き込まれる可能性が高い状況下となるが、それを現場の判断でやれるようにしたのである。
後方支援にしても、弾薬切れとなった他国の前線部隊に弾薬を補給することまで、条文上はできるようになった。
第2に、自衛隊の武器使用権限の拡大である。
従来は、自衛隊の武器使用は自身の身を守るためにやむを得ない時に限定されていたが、治安維持や駆け付け警護をやる上で任務遂行型の武器使用が可能となった。
隊員のリスクについて、法案審議の時の政府答弁は、リスクがあっても訓練で極限するとの事だった。
つまり市街戦での戦場のリアルをイメージできない人達が法律を作っているのである。
さらに、これは国家の意志による戦闘ではなく、あくまでも自衛官個人の意思による武器使用となるのである。
海外で国家の意志で武器を使えば、憲法9条が禁止する武力行使になってしまうので、個人に武力行使の権限を与える建前にならざるを得ない。国の命令で戦場に派遣されて、国が作った法律に従って武器を使うが、その結果は個人の刑事責任として追及されるのである。
現在の憲法が想定していない、憲法上やってはいけないことをやろうとするから、こうなってしまうのである。
第3に、米国への後方支援内容の拡大である。
自衛隊が所有する物品や役務を外国に無償で提供する事は、会計法の原則に反する行為とるので、法律によって無償提供を認めねばならない。
従来よりも拡大したのは、武器・弾薬を提供できるようにし、さらに発進準備中の戦闘機に対する給油ができるようになった事である。
これらは従来、米軍のニーズがないと言われてきた部分であるにもかかわらず、急にニーズが出て来たというのも立法事実として有り得ない。
従来までは、このような事をすれば、米軍の武力行使と一体化してしまう恐れがあるというのが内閣法制局の見解だったので、これまでニーズが無かったと説明したのである。
第4に、殆ど国会で議論されなかったが、自衛隊員に対する罰則の拡大である。
防衛出動命令を受けた自衛隊員が正当な理由なしに職務を離脱した場合には7年以下の懲役という罰則が今でもあるが、安保法制ではその罰則を海外でも適用すると書かれている。
つまり、これは海外で防衛出動するということであり、海外派兵を想定しているということなのである。
何故このように条文が必要になるのか、明らかに憲法違反なのである。