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2017年2月18日土曜日

鳩山由紀夫・元総理の意思決定理論に関する論文は、けっこう面白い。
1000人と面接して理想のパートナーを見つける場合、どうやって選んだら良いのかという研究である。
1回断ったら、その人を選ぶことは二度とできないという制約条件がある。
彼は、マルコム連鎖をもとに計算して、368番目までは全員断って、それ以後で368番目までと比べて少しでも良い人が来たら、その人に決める。
そうした場合に確率的に最も良いパートナーを選ぶことができるという結論を導き出している。
では、なぜ決断の専門家である鳩山氏が沖縄問題やその他の問題で失敗したのか、彼自身が2005年に講演で言っているが、日本の政治には腹芸だとか根回しが多すぎる。
そうした非合理的なプロセスや要素を排して、新しい合理的な政治を作るために自分は政治家になったという。
つまり、政権の最終目標を「目的関数」として定め、その上で何が可能で何が不可能なのかといった「制約条件」をハッキリさせれば、取るべき道は決まる、という合理的な政治ができる、鳩山氏は自分の得意分野を政治に応用しようとしたのである。
しかし、鳩山氏が考える「制約条件」は今生きている人間が作るものであり、日々刻々と変わる。人間自体が複雑系である。
鳩山氏の考える複雑系はあくまでも関数体の中にある複雑系であり、その外側に見えない世界があるという感覚を持っていなかったのであろう。
「見えない世界」とは先験的、超越的な感覚ということで、論理の祖とにそうした感覚の世界があることを、理解しておくことはリーダーにとっては大事なことである。
鳩山由紀夫・元総理は修士号を2つ取って、博士論文もスタンフォード大学で取得している。
マルコフ連鎖というものをベースにした蹴って理論、つまり「決断」の専門家で、学者としては一流の人である。
マルコフ連鎖とは、19世紀終わりから20世紀初頭にかけてロシアで非常に影響力を持っていた数学者のアンドレイ・マルコフの理論である。
彼はプーシキンの『エフゲニー・オネーギン』という韻文小説から、韻文の子音と母音の並びにヒントを得て、ある事象が起こるとき、それよりもずっと前に起きたことは関係なくて、むしろ直近に起きたことのみが影響を与える。
極端に言うと、直近に起きたことだけで判断して決断すると一番いい結果が出る、という理論を確立した。
マルコフ連鎖は、佐々間な分野に応用されている。
直近の出来事が影響を及ぼすということで、天気予報や交通渋滞解消に活かされているし、中でも一番注目を浴びたのはイギリスが第二次世界大戦で、この理論を活用し勝利したことである。
イギリスしナチス・ドイツとの戦いにおいて、物量面でも技術面でも勝てる見込みは全く無かった。
そこでイギリスは数学者を集めて、半分は暗号解読班に、半分はマルコフ連鎖理論を使ってシステムリフォームを考える班に分けた。
ちなみにこの時に暗号解読班にいたのが、のちにコンピューターの原理を作ったアラン・チューリングである。
システムリフォーム班はマルコフ連鎖を使って樹形図を作り、強いところを伸ばすシステムを考えた結果、具体的に出て来たのがイギリス空軍のモスキートという爆撃機だった。
これはドイツの海上封鎖によって鉄鉱石もアルミニウムも輸入できなくなることを予想して、機体を木材で作ったという異色の爆撃機だった。
木製だからレーダーに引っかかりにくい利点が分かり、この爆撃機でドイツ上空に飛んで行って適当に爆弾を落とし、ドイツ人に恐怖心を植え付けることで戦況を変えることに成功し、イギリスの勝利に大きく貢献した。
大学における教養、いわゆるリベラルアーツは、そもそも中世の大学で自由人として生きるために必要だとして教えられていた自由7科(文法、修辞学、弁証論、算術、天文学、幾何学、音楽)にルートを持つが、その中で非常に大きいウエイトを占めているのは歴史的に言うと音楽学になる。
アメリカのCIAや国務省で働く人でギリシャ語を読める人は殆どいないが、ヨーロッパの外交官や知識人でギリシャ語が読めない人はまずいない。
一級の国際的な教養を身に着けようと思う場合には、やはりヨーロッパであり、ギリシャの流れを汲む学問に触れる必要がある。