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2015年8月4日火曜日

金融緩和と不動産価格の連動性はデータ上、明らかである。
日本銀行では四半期ごとに「全国企業短期経済観測調査(日銀短観)」を公表している。
これは様々な業種毎に収益を中心とした業況や金融機関の貸出態度などを企業にヒアリングし、数値化しているものである。
日銀短観のうち、不動産業(大企業)における「金融機関の貸出態度」指数には特徴があり、マンション価格インデックスとほぼ連動している。
過去20年のデータによると、首都圏で分譲された新築マンションの1年後の中古取引価格は、東京23区内で平均5%の下落、埼玉県や千葉県では平均15%下落している。
現状は新築マンションの価格上昇は急ピッチであり、中古マンションの価格も追いかけるように吊られて上昇しているが、新築と中古のギャップは徐々に広がっている。
23区内でも2014年以降に分譲された新築マンションは、分譲後1年経てば10%を超える値下がりが発生すると予測される。
新築マンションを建てる土地代は一段と上昇しており、今後、オリンピックに向けて新築マンションの価格はもう一段上昇する可能性が高い。
つまり、新築マンションを購入し、1年後に値下がりするリスクは益々高まっており、今はもう新築マンションに手を出してはいけないタイミングになっている。
新築マンションの値下がりリスクが大きくなるのを理解するには、新築マンションと中古マンションの価格の決まり方を知る必要がある。
新築マンションの分譲価格は、コスト(土地の購入代、建築費、販売経費など)と利益を積み重ねて決まる。
一般財団法人建設物価調査会が発表している「建築費指数」というデータがある。
この指数は建物の種類別に2005年を100として建築費の推移を調べたもので、2015年4月は集合住宅(RC)の工事原価(建築と設備の合計である純工事費に現場経費を加えたもの)が116.6となり、10年前に比べて2割弱上昇している。
これは労務費と建築資材の値上がりが主な要因である。
工事原価には建設会社の利益や本社経費に当たる一般管理費は含まれていない。
以前は建築工事の案件が少なく、各社利益を削ってマンション工事を受注していた事を考慮すると、現在は工事費全体として3~5割程度上昇しているのが実態である。
新築マンションを販売するディベロッパーにとって、価格設定において重視する競合は他の新築マンションとなる。
また新築マンションの購入者は、特定のエリアではなく「新築」ということ自体にこだわり、特定のブランドで選ぶ傾向が強いので、その範囲は同じ最寄り駅や同じ沿線に限らず、かなり広くなる。
中古マンションになると、同じエリアの他の中古マンションとの比較で価格が決定する。
中古マンションの購入者は、特定エリアで探す人が多く、駅からの距離、建物のグレード、眺望などについて、そのエリアにある中古マンション同士の相対評価となる。
つまり、新築マンションは地下や建築費が上がる時は、特定の物件だけでなく同じ時期に売り出される全ての物件が割高になりやすい。
一方、中古マンションは過去から分譲されてきた数多くの物件の相対評価で価格が決まるため、価格がならされるのである。