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2014年11月15日土曜日

俺は今、どこの党かと秘書に聞き
by 永田町川柳
『特殊法人総覧』を見ていると特殊法人の理事の経歴に「退職(役員出向)」と記載されている場合がある。
これは国家公務員の「退職管理基本方針」によって行われた「現役出向」のことで、別名「ウラ下り」と呼ばれている。
菅政権下で閣議決定された制度で、官僚が退職して再就職する時、役所の斡旋がつくと「天下り」となって規制の対象になるが、「退職せずに現役で出向」ならば、規制から外れるという抜け穴である。
本当に退職して退職金をもらう時には「出向」している期間も通算されるので、形式的な退職には意味がない。
霞が関の中で、法律面で頂点に立つのが内閣法制局である。
「官庁の官庁」を自認する財務省でも、予算案は完全にコントロールできるが、閣法を提出する場合は、内閣法制局審査を受ければならない。
内閣法制局が憲法解釈する「法の番人」ということに祭り上げられれば、各省官僚が日常行っている「有権解釈」(権威のある機関が法解釈をすること)も権威がでてくる。
ちなみに、内閣法制局には、プロパーの幹部職員は存在せず、参事官クラスは各省庁からの出向者で、部長などの幹部になるのは、原則として法務、財務、総務、農水の5省出身者に限られ、そのうち長官になるのは農水省を除く4省庁という不文律がある。
第二次安倍政権で任命された故・小松一郎長官は、外務省の出身であり、極めて異例の人事だった。
内閣法制局は、「内閣法制局設置法」第3条で4つの所掌事務が規定されている。
1.閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、および所要の修正を加えて、内閣に上申すること
2.法律案及び政令案を立案し、内閣に上申すること
3.法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対して意見を述べること
4.内外及び国際法制並びにその運用に関する調査研究を行うこと
マスコミの報道で前提になっている「憲法解釈の権限」については、内閣法制局の所掌事務の中にはどこにもない。
そもそも、そうした憲法解釈をする最終的な権限が行政府にあるはずはなく、行政府の一部である内閣法制局にも当然ないのである。
違憲立法審査権は憲法81条により、最高裁にある。
政府の一部門であって、総理に意見具申する役割に過ぎない内閣法制局が権威を持つのは、霞が関の官僚が法学部社会だからである。
官僚の醍醐味は、法案を起案して、国会を通し、その法律を解釈して権限を得ることにある。
官僚は立法府である国会が国権の最高機関であることは否定できないが、法律案の内閣提案を行い、立法府の代行(重要法案の殆どに当たる8割の法律が閣法)する事で、事実上、立法府は形骸化している。
また、本来は法律の解釈について、最終的に権限を持っているのは司法であり、行政府には権限はないはずなのに、官僚が法解釈を行い、あたかも行政府が司法を超えるような振る舞いをしている。
政府内の一機関である「内閣法制局」は、法律上の建てつけとしては、総理に助言する機能しか持たない。
つまり、内閣法制局長官は、企業に例えると法務部長か法律顧問でしかないにもかかわらず、世間一般では「憲法を解釈する方の番人」と認識され、あたかも最高裁と並ぶように思われている。
役人の「格」は給料に反映しており、「特別職の職員の給与に関する法律」にある「別表」を見れば分かる。
内閣法制局長官は、総理、大臣に次いで、官房副長官、副大臣、宮内庁長官らと並ぶ3番目の高ランクになっている。
ちなみに2014年7月時点の月給は143万4000円である。
しかし、内閣法制局長官は、内閣が任命するだけの役人であり、官房副長官らのような認証官(任免にあたって天皇による認証が必要)ではない。
ただ、常時閣議への陪席が認められており、官僚の感覚からすると、官房副長官の次くらいに偉い。
これを象徴するのが、小泉総理が「旧首相公邸より官僚の公邸の方が立派」と言って話題になった池田山(品川区)にある旧内閣法制局長官公邸である。
国家公務員のキャリア組になれば、一生、食うに困らない。
それを天下りというシステムが支えている。
基本的に天下りは、2回できることになっていて、1回が5~6年だから、役所を辞めた後10年~12年は収入が保証されている。
日本の成長戦略で最大の欠陥は、「産業政策」である。
個別産業をターゲットにする残業請託は、成功した例がない。
竹内弘高教授(一橋大学)の研究によれば、日本の20の成功産業について、政府の果たした役割は皆無だった。
また、三輪芳朗教授(元・東京大学)の一建の研究では、高度成長期でさえ、産業政策は有効ではなかったとされている。
2001年以降の歴代政権の政策方針
小泉内閣 「骨太の方針」(2002年6月)
安倍内閣 「成長力加速プログラム」(2007年4月)
福田内閣 「経済成長戦略」(2008年6月)
麻生内閣 「未来開拓戦略」(2009年4月)
鳩山内閣 「新成長戦略~輝きのある日本へ~」(2009年12月)
菅政権   「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオ~」(2010年6月)
野田政権 「日本再生戦略」(2012年7月)
第二次安倍政権 「日本再興戦略」(2013年6月)
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、サラリーマンの公的年金である厚生年金の運用事業を行う独立行政法人として2006年4月に設立された。
その前進は年金福祉事業団(年福事業団、ねんぷくじぎょうだん)という特殊法人で、運用は「官の財テク」として1986年度から2000年度まで、財政投融資の中で行われてきた。
巨額の年金資金を継ぎ込み、各地でリゾート施設を建設して不良債権化させた「グリーンピア事業」も、年福事業団がやっていた。
2000年度までの財テク事業の最終的な収支は、累積損失2兆円だったが、グリーンピア事業と同様に、誰も失敗の責任をとっていない。
アメリカには1937年に発足した「OASDI(老齢・遺族・障害保険)」という制度があり、公的年金の資産は全額、非市場性国際(物価連動債)の購入に充てられており、GPIFのような組織は存在しない。
東京都の平成24年度一般会計の貸借対照表を見ると、資産が29兆8809億円、負債が7兆8389億円。
国が債務超過であるのに対して、東京都は22兆円の資産超過となっており、超優良財政である。
「産業政策」という言葉は、日本だけしか通用しない特殊な政策である。
「産業政策」は英語では説明不可能な概念で、「industrial policy」と訳しても先進国では通じないので、頭に「Japanese」を付けねばならない。
先進国の人からは、「日本の『産業政策』というのは、政治家と役人への利益誘導ではないか」と言われる。
それに比べると、「民営化」(privatization)、「規制緩和」(deregulation)は世界中で共有できる概念である。
しかし、これらの言葉についても、本来は「プライバタイゼーション」は「民有民営」を意味しているが、日本では国有でも会社形態にすると「民営化」と呼ばれ、国際的な意味と異なっている。
また「デレビュレーション」は、本来は「規制撤廃」を意味するが、日本語訳では「緩和」と訳され、骨抜きになっている。