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2015年8月6日木曜日

法務省の統計によると、家庭裁判所に持ちかまれる遺産分割を巡る争いは年々増える傾向にあり、平成元年には5万件程度だったが平成21年には17万件を超えている。
相続対策は、相続税を納めねばならない資産家だけの問題と思われがちだが、相続を巡って親族が争うのは、相続税がかからないケースの方が多いのである。
実際に、家庭裁判所で争われている金額の3割は1000万円以下であり、これは分割を巡って争っている金額なので、ほぼ遺産額と同じと考えて良い。
1000万円の遺産とは、基礎控除よりずっと少なく、相続税はかからない。
争われている金額が5000万円以下の4割強についても、相続人の数にもよるが、相続税はかからない場合が多い。
つまり多額の相続税がかかることが、あらかじめ想定されている場合は、事前に専門家に相談しながら対策を取っているが、相続税がかからないケースだと全く事前準備がされておらず、その分、僅かな遺産をどう分けるかで親族が揉めるのである。
一般社団法人信託協会が2012年に実施した「相続に関する意識調査」によると、今後、相続財産を受ける可能性のある人は全体の5割に達し、男女とも50代では6割を超えている。
しかし相続対策をしてもらっている割合は2割もない。
相続財産を残す立場の親の意識にも表れており、「自己財産の内訳と価格を全て把握している」人は全体の2割しかいない。
自分の財産を「誰にどのくらい残すか」を決めている人も全体の2割となっている。
実に8割もの人が、自分が残す相続財産について「対策をしていない」と回答してるのである。
日本では財産を残す方も受け取る方も、相続対策について殆ど手つかずの状態なのである。
地震が起こるとそのエリアの不動産が全て暴落すると考える人が多い。
しかし、実際はそうではなく、仙台市の賃料推計を見ると、2011年1~3月まで横這いで推移しているが、2011年4月以降、右肩上がりで上昇し、2014年初には震災前に比べて2割ほど上った状態となっている。
これは需給バランスが原因であり、津波や倒壊の被害で住める物件が減少すると共に、賃貸住宅の供給も激減したことによる。
住宅の供給が減ったにもかかわらず、復興支援のために仙台で仕事をする人、今まで住んでいた建物に住めなくなった人が、賃貸住宅の需要を大幅に増加させたのである。
結果、需要が供給を上回り、賃料が上昇したのである。
広告を出さなくても入居者が決まるため、大手物件検索サイトの掲載物件は震災後に8割現象しており、物件オーナーや管理会社に直接連絡を取らないと空室情報に辿り着けず、空室待ちの行列ができている。
賃料が2割上れば物件価値も2割上るということになる。
つまり、震災倒壊を免れた物件は資産価値が高まったのである。
宮城県石巻市では沿岸部の住宅地は軒並み値下がりしたが、ほんの数キロ離れた高台の「しらさぎ台地」の住宅地は、12%~60%と大きく値上がりした。
首都圏直下型の大地震が起こった場合にも、同様の現象は起こると予想される。
大震災後も住むことができ、資産価値が上る可能性の高い物件を見分ける必要がある。
不動産市場の状態が自宅の購入に適している時期かどうかは、比較的客観的に判断できる。
不動産の取引価格は変動するが、価格が数千万円するため、動きは比較的緩やかで、売買タイミングを判断しやすい。
不動産の取引価格は、基本的に①資金供給、②需給バランス、③建築費、④周辺環境(社会インフラ)の4つに左右される。
①資金供給
不動産の取引価格は不動産市場に流れる資金量によって上下する。資金の供給元は金融機関であり、金融機関の資金供給は日本銀行の金融政策に左右される。金融緩和で市場に流れ込んだお金が不動産に向かっている時は不動産価格は上昇し、資金供給が絞られたり金利が上がれば不動産価格は下がる。
これは日銀が公表している不動産業(大企業)における「金融機関の貸出態度」指数と不動産価格が連動していることで説明がつき、日銀短観で把握できる。
②需給バランス
一定のエリアで供給が少なく需要が多いと不動産価格は上がり、需要が少ないのに供給が増えれば不動産価格は下がる。
都心の高級マンションが高騰しているのは、相応しい立地が限られ、物件数が少ない上に、相続税対策の富裕層や海外の資産家、資金運用目的の事業会社などの買い手が殺到しているからである。
逆に、郊外の中古一戸建てや新築マンションでも大量供給が予想されているエリアでは値下がりの可能性が高くなる。
新築マンションの供給数については、ディベロッパー各社の分譲計画で把握できる。
③建築費
最近の建築費高騰は新築マンションの価格を押し上げている。
新築マンションの分譲価格は積算方式で、土地代、建築費、利益を足し算していくため、土地価格や建築費が上がるとダイレクトに価格に反映されることになる。
建築費の動向については、建築費指数や公共工事設計労務単価、資材価格などの公表データが参考になる。
④周辺環境
最も分かりやすいのは再開発計画で、社会インフラが整備され、最寄り駅周辺に様々な施設ができ、生活利便性が高まる事が不動産価格に反映される。
しかし、再開発による価格上昇には、期待が先行しすぎた場合、長続きしないケースもあるので注意が必要である。
首都圏の湾岸エリアにその可能性があり、東京オリンピック関連で計画されているのは、鉄道ではなく中半端な場所までしか行かないバス専用路線の設置であり、商業施設ではなくスポーツ施設である。
立地の環境がどう変わるかは、自治体のWebサイトで簡単に都市計画を確認できる。
住宅ローンの返済期間は、完済時が80歳までとなっている。
借入れ時に60歳の人は20年、65歳の人は15年が最長借入期間となる。
返済期間が短いと、同じ金額を借りても毎月の返済額が大きくなり、年齢が高くなってからの住宅ローンはメリットは小さくなる。
また、住宅ローンの借入れのタイミングでは、定期的な収入が必要となっおり、収入が公的年金のみの場合は、これに当たらないとされている。
これらの事情からタイムリミットを考慮して、自宅の購入タイミングを判断する必要がある。
「フラット35」の最大の魅力は、最長35年まで固定金利で借りられることである。
金利は金融機関によって多少異なるが、2015年8月現在で最も低い所で1.710%となっている。
今後、インフレになれば長期固定ということで、実質的な返済負担は次第に下がっていくことになる。
低利の資金を長期で借り、実物資産を購入することは、インフレ経済における投資の鉄則である。
さらに「フラッと35」は、最近使い勝手が良くなっている。
そもそも自宅を購入する人のためのローンという事で、借り入れ後、自宅を人に貸すことになった場合は、必ず金融機関に連絡して事情を説明する必要があった。
しかし、現在はとりあえず一度住んだという実績があれば、以後は賃貸に回したとしても、金融機関には住所変更届さえ提出すれば、いちいち事情を説明する必要がなくなった。
金融機関から見れば、賃貸収入でローンを返済することができれば、問題にならないからであろう。
ちなみに自宅を貸しての賃料利回りは4%以上が目安となる。
30年ローンを組んでいる場合、金利が年1%なら全額借りても年間返済額は、購入価格に対して3.9%であり、2割頭金を入れれば3.1%となるので、差引プラスとなる。
インフレになれば実物資産が有利になる。
実物資産の代表である不動産には、自宅、アパート、賃貸マンション、ワンルームマンションなどがあるが、資産形成という視点から見ると自宅が最強となる。
自宅は不動産投資としても極めて有利なのである。
不動産投資の成否を左右する重要な条件は、ローンと税金である。
ローンについては、自宅は個人が借りられるローンの中で一番、優遇されている。
住宅ローンの融資額は数千万円から最大1億円程度、返済期間は最長35年、金利も現在は1%台である。
アパートの建築やワンルームマンションの購入では、自宅ほど長期間、低金利で借りられる事はまずない。
自宅のローンについては、「住宅ローン控除」という優遇策もあり、購入から10年間は年末ローン残高の一定割合の所得税が税額控除になるので、実質的な金利負担は更に低くなる。
売却した時の税負担も自宅は優遇されており、自宅を売った場合には短期譲渡所得、長期譲渡所得いずれであっても、3000万円までは控除される特例がある。
また自宅の所有期間が10年を超えている場合は、3000万円を超える部分の譲渡所得について税率が軽減される特例や、一定の条件のもとで買換えれば課税が繰延られる特例もある。
自宅を売って損失が出た場合も、他の所得との損益通算や複数年に渡っての繰越控除ができる。損失を出して買い換えた場合も同様である。
このように自宅については、政府の持家推進政策によって、ローンと税金が非常に優遇されており、キャッシュフローを確保しやすく、資産形成において有利な仕組みになっているのである。
アパートゆ賃貸マンション、ましてやワンルームマンションを買うくらいなら、まず先に自宅を購入すべきである。
但し、人生最大の実物資産投資という視点から、値下がりしにくい物件を選ばねばならない。
殆どの人にとって、マイホームが人生で最大の買い物になる。
東日本大震災の直後に、震災リスクを気にして、自宅を買わないという心境になった人の割合が増えたという。
しかし、「自宅を買わない選択」が本当の意味で震災リスクへのヘッジになっているのか、冷静に考える必要がある。
阪神淡路大震災での直接死因は、窒息・圧死が最も多く72.6%を占めた。
東日本大震災では津波が発生したため、被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県の死因の9割は溺死だったが、その次に多かったのは圧死・損壊死の4.4%だった。
この2つの貴重な経験から我々が学べる事は、「津波が来ない場所」で「地震で倒壊しない建物」に住むという事である。
つまり強固な地盤と優れた耐震性を満たす住宅を選んで住む必要がある。
建物が倒壊するリスクは、地盤の強さによるところが大きい。
建物の強度の面では、賃貸マンションやアパートは「一時的な住まい」であり、大宅自身が住む事を想定しておらず、賃料収入を得る目的で建築されている。
エリア毎に賃料相場は決まっているので、利回りを度外視したハイグレードな仕様は提案されないし、メンテナンスも必要最低限しかコストを掛けることは無い。
分譲マンションの方が、賃貸マンションやアパートより耐震性に優れた構造になっている。
「地震が怖いから分譲マンションを買わない」という人は、この分譲と賃貸の構造の違いを理解できていない人が多い。
どうしても賃貸にこだわるならば、せめて新耐震基準(1981年6月以降の基準)で建設された分譲マンションで賃貸に出ている物件を借りるべきである。
最近、生命保険会社では、個人年金の商品が全く売れなくなっているという。
デフレ時には、お金の価値は時間が経つにつれて上がっていくので、年金型の積立が有利だった。
しかし、インフレ時代には長い期間をかけて積み立てるほど、お金は目減りしていく。
年金型商品の人気が無くなってきたのは、「インフレになる」と考える人が増えている証拠である。
インフレ経済になれば、お金を借りて実物資産を持っておく方が有利なのは歴史が語っている。
持家と賃貸のトータル収支を比較すると、たとえ購入後に大きく値下がりし、賃貸に出そうと思っても住宅ローンの返済額が賃料を上回るようなダメ物件であったとしても、同じ物件を借り続けるよりは、自宅を購入した方が生涯では1000万円以上、得することになる。
まして、購入後も値下がりせず、貸せば賃料収入が住宅ローンの返済額を上回る極上物件ならば、買うのと借り続けるとのでは、生涯で5000万円以上の差が付くことになる。
結論としては、立地が良くグレードの高い値下がりしにくい物件を自宅として購入し、状況によってはもう一度、買換えた方が、借り住まいを続けるよりトータル収支では遥かにとくを得をすることになる。
この結論は、長生きすればするほど更に明確になり、長生きリスクには持家の方が対応しやすい。
人が不動産を買うかどうか、借りるかどうかを決めるのは、その不動産を見てから2秒以内と言われており、第一印象が重要となる。
これまで不動産業界では、中古住宅の販売の際には、壁のクロスや床のフローリングの汚れなどはそのままというのが常識で、買い手が購入後にリフォームすれば良いと考えらけていた。
しかし、アベノミクスの風が吹き荒れる今、中古住宅も値上がりする時代となっており、見た目の良い物件ほど購入希望者が集まり、高く売れる可能性が高くなっている。
そこで、売却を先行させ、いったん退去して空き家にした室内を綺麗に清掃し、家具を入れてモデルルーム風に演出し、購入希望者が内覧に来た時の印象を良くする「ホームステイジング」という方法がある。
中古マンションの成約価格は、市場価格からプラスマイナス10%程度の幅がある。
マンションの場合、コストは売り出し価格の1%程度が目安で、何もしない場合に比べて1%以上高く売ることができれば、元は取れる。
過去のデータによると新築マンションの平均価格が上がると、新規の供給数が減るという逆相関関係がある。
マンションの平均価格と供給戸数ほ掛け合わせたら新築マンションの市場規模となる。
首都圏の新築マンション市場について言えば、2015年は5000万円×4.5万戸=2.25兆円が市場規模となる。
近畿圏はこの1/3の7000億円である。
リーマンショック前には、首都圏の新築マンション市場は3兆円規模で安定していたが、マイホーム購入層の給与水準が大幅に下がったため、市場規模も縮小した。
今後も市場規模が変わらないとすれば、建築費の高騰で平均価格が1割値上がりすれば、供給戸数は1割減る。
つまり、結果的に価格は高止まりする構図となっている。
建築費の高騰は深刻な水準になっており、以前の5割高も珍しくない。
こうなると建築費の割合が低い場合はディベロッパーの採算が取れるが、逆の場合は事業の継続が困難と判断される。
都心部で分譲価格に対する建築費の割合が2割だと、建築費が5割高になっても分譲価格は20%×50%アップ=10%アップで収まるが、郊外で分譲価格に対する建築費の割合が5割だと、分譲価格は50%×50%アップ=25%アップとなってしまう。
新築マンションの購入層の資金力は郊外の方が低く、25%アップでは買えなくなってしまう。
従ってディベロッパーが新築マンションを手掛けるのは、郊外から都心部へシフトしていくことになり、新築マンションの各は高止まりすることになる。