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2014年10月15日水曜日

「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の応募条件は厳しい。
リストラを過去5年間で1度でもやった会社は応募できない。
下請けをいじめた会社も、障がい者の法定雇用率2.0%以下の会社も応募できない。
赤字を出している会社や労働災害を出した会社も認めない。
他にも応募基準のほかに、審査基準もあり、残業は月10時間以下と定められている。
坂本教授が、そもそも大賞制度で目指しているのは、「業績を求める経営を破壊すること」。
「よい会社を紹介することで、いい加減な会社の排除を目指している。人をとことん大切にする会社を増やせば、この国は世界の人々から再び尊敬される。」と言っている。

『ちっちゃいけど、世界一誇りにしたい会社』で紹介された北海道の「丸吉日新堂印刷」は、従業員わずか7名の会社である。
同社が制作する名刺の紙はバナナの茎が原料で、点字が入っている。
アフリカのザンビアの女性達の就業支援として、乾燥させたバナナの茎から繊維質を取り出す技術指導をしている。
それを日本で古紙と混ぜ合わせてバナナペーパーという名刺の原料にしている。
この名刺に、視力障がいの若者達が、一枚一枚丁寧に点字を入れている。
1枚50円するにもかかわらず、売れている。

「自爆営業」という言葉は、郵政事業株式会社で生まれた造語と言われている。
年賀状やかもめ~る、ふるさと小包等を日本郵便の社員が自腹で買い取ったり、金券ショップで売りさばいた時の差額を自己負担する行為を意味する言葉である。
この行為を「売上や、会社が負担すべき経費を社員の懐からむしり取る行為」と定義すると、その対象は多くの企業に及ぶこととなる。
日本郵政グループには2013年4月1日時点で、42万人の社員がいる。
最大労組は「日本郵政グループ労働組合(JP労組)」で、23万人の組合員が加盟している。
他にも「郵政産業労働者ユニオン」には2000人が加盟している。
民営化後の郵便事業会社、日本郵便の郵便事業部門の営業利益は以下の通りである。
2008年3月期 1038億円の黒字
2009年3月期 449億円の黒字
2010年3月期 428億円の黒字
2011年3月期 1035億円の赤字
2012年3月期 224億円の赤字
2013年3月期 374億円の黒字
2007年民営化後の2008年から経営が悪化し、2011年の巨額赤字を受けて、会社はボーナスを4.3ヶ月から3ヶ月に削減することで580億円を捻出した。
さらに2011年9月末時点だけでも1万1000人の非正規社員を大量解雇し、500億円もの人件費の削減に踏み切っている。
毎年11月1日は年賀状の販売開始日である。
この日は、全国の日本郵便社員の多くが「自爆営業」を開始する日でもある。
例年8月末に、翌年の年賀状の販売枚数が決定する。
2013年は約36億枚に決定され、これが全国13ヶ所の日本郵便の支社を通じて、1089ヶ所の視点に割り振られる。
日本郵便の年間収入2兆円のうち、年賀状の売上は1500~1600億円と8%を占める。
販売ノルマの数は支店毎に異なるが、通常は正社員は1万枚、非正規社員には2500~7000枚が課せられている。
11月1日が金券ショップでの高値で、1枚43円で買ってもらえるが、金券ショップが少ない地方都市では、足元を見られて1枚35円でしか買ってもらえない。
日本郵便の社員数は、2011年4月時点で正社員が10万2300人、非正規社員が15万2300人の計25万4600人で、非正規社員の割合は59.8%。
非正規社員のうち、月給社員は4300人、時給社員は14万7500人と実に9割以上を占める。
ちなみに、総務省が2014年2月28日に発表した労働力調査によると、1月時点で役員を除く雇用者全体に占める非正規雇用の割合は37.6%である。
日本郵便の非正規社員は、正社員とほぼ同じ労働時間、同じ業務内容で働いているが、賞与も昇給も殆どなく、年収は正社員の3分の1であり、その6割以上が年収200万円以下となっている。
一方で日本郵便には、非正規社員が正社員になれる制度も用意されており、仕事の成熟度を6段階で上司が「スキル評価」し、ランク毎の項目を全てクリアすれば、1つ上のランクに行ける。
6段階をクリアするのに最短で3年かかり、その後は時給社員から月給社員として採用され、2年間勤めた後、試験を合格すると正社員になることができる。
つまり、非正規社員が正社員になるには最短で5年かかるのである。