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2015年7月11日土曜日

田辺元の『歴史的現実』は1940年に岩波書店から出版され、大ベストセラーになった。
特攻隊の青年たち、学徒動員の人達が、この『歴史的現実』をポケットの中に入れて突っ込んでいった。
読むと分かるが、個々人の生命は有限であるが、悠久の大義、国家のために命を捧げるならば、それは永遠になるという論理を『歴史的現実』から導き出したのである。
その後、田辺は1941年から何も書いておらず、大学の講義以外の公開講演をしていない。
1944年になって、「懺悔道」について講演をし、その時点で戦争にどうして負けたのかを真剣に考えるのである。
そして戦後に、自分は間違えていたという『懺悔道としての哲学』を出版し、これがまた大ベストセラーになった。
岩波書店は『懺悔道としての哲学』など、田辺が戦後に出したものは復刻しているが、『歴史的現実』は大ベストセラーになったにもかかわらず、復刻していない。
戦時体制に協力した本を、岩波は復刻しない傾向が強く、例えば京都学派の高山岩男の『世界史の哲学』も、1942年に岩波書店から出ていたが、復刻していない。
ミュンヘン大学のオットー・ケルロイター教授の『ナチス・ドイツ憲法論』という本も出していたが、復刻していない。

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