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2016年9月13日火曜日

移民政策を議論する前に、そもそも近代欧州の民主主義がどの程度、不偏性を持つ制度なのかを理解する必要がある。
これには、家族制度、相続と関係してくると、エマニエル・トッドは『移民の運命』で指摘している。
兄弟が平等に相続する社会では、「兄弟は平等だから人類は平等だ」という考え方が出来る。
それに対して、長男が相続する、遺言によって親が相続財産の比率を兄弟間で変更できる社会では、「兄弟が不平等だから、人類も不平等である」という考え方になる。
人類学的に分析すると、兄弟で平等に相続をする地域は希少であり、バリ盆地と地中海沿岸のフランス領域に限られると、トッドは指摘している。
たまたま1789年にフランス革命が、バリ盆地で起こり、バリ盆地特有の倫理観である「平等」が、近代民主主義思想の中心に位置づけられた。
他方、長子・長男相続のドイツや、遺言相続のイギリスでは、民主主義社会における「平等」の概念が異なるのである。
フランス社会では、文化と宗教が分離していて、フランス語のできない第一世代の移民は差別されるが、フランスで生まれた第二世代は、フランスに同化して社会のフルメンバーとして認められる。
それに対して「多文化共存モデル」と綺麗ごとを言うイギリス型は、移民して来るのみよく、伝統・習慣を残してもよいが、ただし、どんなに長くイギリスに住んでも社会への同化は認められないから、差別は継続する。
特に酷いのは、ジャマイカ出身者で、彼らはイギリス国教会に属し、家族制度も極めてイギリスに近いが、イギリスのフルメンバーには成れない。
イギリスでは、親の出自や階級によって、子供の将来がほとんと゛決まってしまい、優秀でも自ら進学を諦めてしまうので、階級も固定されたままとなる。

移民の運命 〔同化か隔離か〕

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