ヒトラーの「政治とは、ある民族がこの現世での存続を求めて行う生存闘争を実行していくうえでの技術である」という定義で重要なのは以下の3つである。
第1は、政治を「民族の現世での存続」、すなわち徹底的に世俗的性質の事柄であると規定していることである。自由、平等、正義などの現実の世界では実現しないが、しかし人間として追及した方がよいと考えられる超越的価値を、ヒトラーは政治の世界から追放した。
第2は、政治を「生存闘争」と規定していることである。ここから、生き残るためには、何をしても良いという結論が導き出される。
第3は、政治を「技術」と規定していることである。当初の政治的目的が、ユダヤ人の絶滅のようなことに設定されると、後は技術的にその目的を達成することができるように絶滅収容所を建設し、ユダヤ人輸送の列車運行計画を立てるという連鎖となる。つまり政治の邪悪な目的が、価値中立的な技術に解消されてしまうのである。
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