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2015年4月15日水曜日

政治家自身の知識の水準、知的構想力が高くなくても、権力さえ握っていれば、後知恵で理屈をつけてくれる有識者が現れてくる。
オットー・ケルロイターという、ワイマール憲法を改正せずに、実質的なナチス憲法を成立させるという悪知恵を出した、ナチス体制の立役者がいる。
ヒトラーに立法権を付与する全権委任法は、ワイマール憲法の緊急事態規定を悪用したものだった。
公民法に至っては、国民を「国籍保持者」と「帝国市民」に区別し、帝国市民にはドイツ人もしくはドイツ人と同一の血統を持つ国籍保持者のみがなれ、帝国市民のみが選挙権、官吏になる資格を持てた。帝国市民でないユダヤ系ドイツ人などの国籍保持者からは政治的権利を奪った。
さらに「血の保護法」でドイツ人とユダヤ人の結婚を禁止し、4人の祖父母のうち3人がユダヤ教共同体に属していると、本人の信仰に関わりなく完全ユダヤ人とした。
1936年7月31日以降に、ドイツ人とユダヤ人の間に生まれた非嫡出子は完全ユダヤ人とする規定が、普通法として定められた。
このような規定は、当然、ワイマール憲法に反する。
しかし、ワイマール憲法は形式的には、ナチス・ドイツ第三帝国の時代にも存続したのである。
ワイマール憲法のような模範的な人権が規定された憲法を、ナチスの暴力だけで無効にすることはできない。
暴力的な政治には、それを正当化する有識者が必ず存在するのである。
いつの時代もケルロイターのような知恵者が現れて、法解釈の名の下で民主主義を内側から破壊していく危険性があることを忘れてはならない。

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