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2017年9月6日水曜日

出版流通の仕組みを簡単に説明すると、次のようになる。
本体価格1000円の本を1万部出版したとすると、再販制度で本の価格は固定させているので、小売価格の変動を考慮する必要はなく、1000万円の売上を計上できる。
この1000万円を出版社70%、書店25%、取次5%で分け合うことになっていたとする。
本は出版された部数全てが売れる訳ではなく、一部は書店から返品されてくる。
返品率が20%なら800万円となる。
ところが、「大手」「老舗」といわれる一部の出版社は、返品率を考慮せず、本を納品した翌月に仮売上1000万円に対する取り分を一括して受け取とる。
売れなくても出版社の取り分が70%ならば、出版社の銀行口座に700万円が振り込まれてくるのである。
その後、6ヶ月ほどすると書店から本が返品されてき、返品率が20%ならば取次は出版社に仮払い700万円の20%となる140万円を余分に支払っていることになるので、本来ならば返済が必要となる。
この構図を金融取引として考えると、出版社は取次から前払いを受けた上に、140万円を無利子で借りて資金繰りに充てていることになり、銀行融資に比べて法外に有利な取引である。
こうした有利な慣行が続いているのは、取次が非上場企業で、株式の大半を大手出版社が保有しているからである。
この慣行が理不尽なものであっても、取次は株主の意向に逆らって慣行を変更することが許されない。
しかし、こうした取次に不利な取引条件を、全ての出版社に認めていては取次は経営破綻してしまうので、新たに契約を結ぶ出版社は、仮払率が引き下げられ、支払期日も先伸ばされていく。
更に「歩戻し」といって、予想される返品分を仮払いから差し引くという事も始まっている。
このように、出版流通では、老舗出版社と新興出版社で取次の取引条件に大きな格差がある。
これは出版社の業績によって決まるのではなく、当初の契約が既得権となっている。
出版業界は、再販制度によって国家の保護下に競争が制限されている。

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