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2016年1月16日土曜日

源泉徴収制度と年末調整のおかげで、日本人の大多数は納税に伴う煩雑な手続きを免れていて、課税当局との接触を持たなくてよいメリットはある。
しかし、確定申告の手間が省けるメリットと引き替えに納税者としての権利意識を失っている。
1970年12月24日に、最高裁判所第一小法廷は、次の判決を下している。
1.源泉徴収義務者の源泉徴収義務は、法律によって定められた源泉徴収義務者の固有の義務である。
2.国と源泉徴収義務者との間には、権利義務という法律関係が生じるが、これは公法上の法律関係である。
3.源泉徴収義務者が間に入る場合、国と納税義務者(税を実際に負担する担税者)との間には、直接の法律関係は存在しない。
4.したがって、納税義務者(担税者)において、源泉徴収の課税法律関係で何らかの紛争が生じたとしても、国との間では法律上の関係はないのであるから、納税義務者(担税者)は国を相手に訴えを提起することはできない。
5.納税義務者(担税者)と源泉徴収義務者は相互に相手との間で訴訟を提起することができるだけであり、その場合の納税義務者(担税者)と源泉徴収義務者の間は、私法上の関係であって公法上の法律関係ではない。
要するに「税金に関して何か不服があるなら会社と雇い主に文句を言え。国に文句を言うな」ということである。
この最高裁の判例は、1992年2月18日の最高裁判決で一層強化され、現在も判例法理論として有効となっている。

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