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2016年3月10日木曜日

『氷川清話』の中で、勝海舟は、こんなエピソードを披露している。
実質的な艦長として咸臨丸でアメリカに渡り、帰国した勝海舟に、老中から「そちは一種の眼光をそなえた人物であるから、定めて異国へ渡りてから、何か眼をつけたことがあろう。詳しく言上せよ」と言われた。
勝は「人間のすることは古今東西同じもので、アメリカとて別に変ったことはありません」と答えたが、
「さようではあるまい、何か変わったことがあるだろう」と老中は引き下がらない。何度も尋ねられて、
「さよう、少し眼につきましたのは、アメリカでは、政府でも民間でも、およそ人の上に立つものは、皆その地位相応に利口でございます。この点ばかりは、全くわが国と、反対のように思いまする」と率直に言上したら、
老中は目を丸くして、「この無礼者、控えおろう」と叱られたそうである。

氷川清話 (講談社学術文庫)

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