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2016年9月18日日曜日

終戦後の1949年に、ソ連のハバロフスクで731部隊を追及する裁判が行われた。
この公判の記録が『細菌戦用兵器ノ準備及ビ使用ノ廉デ起訴サレタ元日本軍軍人ノ事件に関スル公判書類』という本である。
いわゆるハバロフスク裁判で、1945年8月9日のソ連の満州侵攻によって、逃げ遅れて捕虜となった日本の軍人のうち、関東軍司令官の山田乙三や731部隊で細菌製造部長だった川島清、同班長だった柄澤十三夫ら12人がソ連の秘密裁判にかけられ、有罪となっている。
この本は1950年にモスクワの外国語出版所から発行されている。
この出版社は現在、プログレス出版所という名前に代わっているが、ここから出ている本には、英語版や中国語版はあるのにロシア語版だけがない本が多くある。
つまり、対外的な宣伝用の本を出す出版社ということである。
この本にはロシア語版はあるが、おそらく少部数で、むしろ大量に刷ったのは日本語版だったと言われている。
つまり日本人に読ませるために、わざわざ作ったという事になる。
これを読んだ日本人は、戦争中に日本軍がいかに非人道的な行為をしていたかを知ることになる。
ソ連は、公判記録という資料集を日本語で出すことによって、日本でどういう波紋が引き起こされるかを予測していたと思われる。
しかし実際には、この本が出ても日本では関心を呼ばなかった。
のちに森村誠一の『悪魔の飽食』(初版1981年)が出るまで、日本人は731部隊のことをあまり知らなかった。

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